陰鬱なコロナ禍を健全に生きたい人は今すぐ「贈り物」をしよう
2020年12月15日
ライフ日々の生活で贈り物をしたり、されたりすることは日常的です。そんな行為である「贈り物」とは一体どのような意味を持っているのでしょうか。フリーライターの鹿間羊市さんが解説します。
年末年始は「贈り物」のシーズン
クリスマスプレゼントにお年玉、お歳暮と、年末年始は「贈り物」のシーズンです。

1年の終わりと始まりに際して大切な人やお世話になった人に何かを贈るという慣習は、お互いの関係性を確かめあい、その後まで付き合いを継続するうえでの「しるし」として機能します。儀礼的・形式的なものであっても、何かを贈り、それに返礼を行う、というやり取りが「つながり」を維持してくれるのです。
しかし、2020年は新型コロナウイルスの影響により、イルミネーションやイベントの中止、帰省の見送りなど、年末年始のお祝いムードに陰りが見られるかもしれません。クリスマスパーティーでのプレゼント交換や、親族が集まるなかでのお年玉など、贈り物の形式にも変化があると考えられます。
例年よりも何かを贈りあう機会が減る――というのは何だか寂しい感じがしますが、そもそもなぜ私たちは「贈る」ことによって関係を確かめあおうとするのでしょうか。
人文・思想で注目される「贈与」の概念
「贈る」ことの意義なんて、あらためて考えてみる必要もなさそうですが、意外なことに人文・思想の分野では近年「贈与」という言葉がひとつのキーターム(最も重要な事柄)となっています。
「贈与」と言うと「贈与税」や「生前贈与」など、相続関連の話題を思い浮かべてしまいそうですが、意味としては単純に「贈ること」を指しており、難しく考える必要はありません。ざっくり言ってしまえば、「これからの世の中を生きていくには、贈り与えることが大切ですよ」という考え方が、ちょっとしたブームになっているわけです。
「そんなこと言われなくてもわかっているよ」という感じもするのですが、差し当たりなぜ「贈与」ということが注目されているのかを概説しておきたいと思います。

「贈与」がテーマとして取り上げられる時に、その根底には往々にして「資本主義を批判しよう」という意図があります。20世紀初頭、フランスの人類学者であるマルセル・モース(1872~1950年)という人が「何でもお金で買えちゃう社会ってゆがんでない? 売買じゃなくて贈与で成り立つ関係にも目を向けてみようよ」ということを言い始め、それから徐々に「フランス現代思想」と呼ばれる潮流のなかで「贈与」というテーマが取り上げられるようになりました。
日本においてもここ1、2年で「贈与論」を一般向けに解説する書籍がヒットしており、「何でもお金で買える社会」への危機感が広く浸透していることをうかがわせます。

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