もはやカラオケボックスは「歌」より「仕事」場所? コロナ禍で加速する働き方・遊び方の大変革

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もはやカラオケボックスは「歌」より「仕事」場所? コロナ禍で加速する働き方・遊び方の大変革

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中村圭

文殊リサーチワークス・リサーチャー&プランナー

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新型コロナウイルスの感染拡大は、私たちの社会に大きな変革をもたらしました。働き方やレジャーのあり方もそのひとつ。今後ニーズが高まるのはどのような分野なのでしょうか。文殊リサーチワークス・リサーチャー&プランナーの中村圭さんが分析します。

東京 67%の企業がテレワークを導入

 ウィズコロナの新しい生活様式で定着してきているもののひとつにリモートワーク(テレワーク)があります。

 東京都はテレワーク導入のための事業継続緊急対策助成金も出ました(申請受付は2020年7月31日に終了)・

 東京商工会議所(千代田区丸の内)の調査によれば、2020年5~6月の時点で会員企業のうち67.3%の企業がテレワークを導入。3月に調査した26.0%と比較すると、大幅に増加したことがわかります。

 以前から「働き方改革」によって働き方の多様化が推奨されていましたが、コロナによって望む望まざるにかかわらずそれが急速に普及したと言えるでしょう。

「都心オフィス」という定番の終焉

 リモートワークを前提に、本社機能の縮小を検討している企業も見られます。さらには、地方への本社機能の分散を検討する企業もあり、2020年9月1日(火)に人材派遣会社大手のパソナグループが本部機能業務を東京から兵庫県の淡路島の拠点に分散すると発表して注目されました。

 パソナの場合は以前から準備をしていたもので、本社機能の地方分散はどの企業にでもできることではないでしょうが、招致を推進したい地方自治体で環境整備が活発化することが予想されます。

 このようにコロナ収束後もある程度はリモートワークが持続されると考えられ、それによってさらにもたらされる社会構造の変化があります。ここでは余暇・レジャー・観光産業の視点でそれを見ていきたいと思います。

人々の郊外回帰で生まれる需要とは

 リモートワーク社会になることは、それまで平日の日中は都心のオフィスに集中していた人口の一部が、郊外や地方、もしくは都心のオフィス以外の場所に分散することを意味します。

 そこには新たなマーケットが生まれると言えるでしょう。

 リモートワークは主に在宅勤務であり、さらにリモートワークを前提に都心から郊外へ住み替える人も出てきていることから、住宅地が多い郊外エリアで平日のマーケットが今よりも増えることが期待されます。

 物販店舗に関してはオンラインショッピングが浸透してきているため効果は限定的かもしれませんが、平日の余暇を過ごす業態ではニーズが高まると言えるでしょう。

リフレッシュ施設のニーズも高まり

 フィットネスやマッサージなどのリラクセーションの利用者が増えるほか、家で過ごすことが多くなることから、趣味やクッキングのスクール、ちょっとぜいたくな食事ができるレストラン、趣味や嗜好(しこう)の合う仲間と集えるゲームカフェやスポーツバーなど、日常生活を豊かにする施設のニーズが高まると考えられます。

 また、運動不足を解消するフィットネスと同じ感覚で日常的なリフレッシュのニーズも高まります。

 リモートワークでは、仕事とプライベートの区別がつかなくなる、気が散って仕事に集中できない、コミュニケーション不足になる、ひとり暮らしの場合は強い孤独を感じる、といったストレスや不安感に襲われる人が増えており、精神的なリフレッシュやモチベーションのコントロールが必要になっています。

 そのため、メディテーション(瞑想〈めいそう〉)やヨガ、サウナといった精神的な安定が得られる施設のニーズが高まると考えられます。

カラオケやホテルが働ける場を整備

 新しい分野のメディテーションは、すでに欧米ではメディテーションスタジオが展開し、アーティストやアスリート、著名人の利用が見られます。

 近年は国内でもメディテーションスタジオの開発が見られ、2018年6月22日(金)にはヨガスタジオを展開するヨギー(目黒区中目黒)が日本初の瞑想専用スタジオ「muon(ムオン)」(新宿区西新宿)をオープン。

 さらに2019年6月1日(土)にはアートやせん茶文化を融合させた没入体験型メディテーションスタジオ「Medicha(メディーチャ)」(港区青山)がオープンして話題となりました。

 今後はフィットネスやヨガ、サウナなどのプログラムの一環としても導入されることが期待されます。

 また、コロナ禍で顕著に進展しているのがレジャー・宿泊施設へのテレワーク対応ワーキングスペースの導入です。

 コロナ以前から働き方改革の推進もあってコワーキングスペースの開発が活発でしたが、現在はコロナによって通常営業できなくなったカラオケや飲食施設、ホテルなどに急速に導入が拡大しました。

室外に音が漏れにくいカラオケは、テレワーク中のウェブ会議の場などでも重宝されている(画像:写真AC)



 ホテルでは割安な連泊プランやデイユースプランなどテレワーク応援プランが増え、ランチのテイクアウトやトレーニンググッズ、館内ショップの利用券などのサービスも見られます。

 東京都はテレワークができる宿泊施設を紹介するウェブサイト「HOTEL WORK TOKYO」を立ち上げ、利用の促進を図っています。

 リモートワークで利用することはその場所に長い時間滞在することになり、サービス次第ではさまざまな需要を生み出すことができます。コロナ収束後も集客の選択肢のひとつになっていくのではないでしょうか。

旅行先で仕事、休暇取得の後押しに

 一方、観光地やリゾート地では「ワーケーション」が言われています。

 ワーケーションとは「ワーク」と「バケーション」が合わさった造語で、観光地やリゾート地においてリモートワークで仕事をしながら休暇をとる働き方をいいます。

 欧米発祥のワークスタイルですが、コロナ禍でのリモートワークの普及や観光産業の低迷によってあらためて注目されるようになりました。

 現在は地域内のシェアオフィスやテレワーク対応の宿泊施設を紹介してワーケーションを推進する地方自治体も見られます。

旅行先で仕事するワーケーション。意外なメリットも(画像:写真AC)



「リゾートに行ってまでも働きたくない」という声も聞こえてきそうですが、休憩時間に近くの自然を散策したり、アフター5に温泉や地元グルメでリフレッシュ、休日はそのまま観光やレジャーを楽しんだり、リゾート気分を満喫すると考えれば、なかなかまとまった休暇を取れない人にとっては効率的な働き方かもしれません。

 家族を連れて行けば、日中働いている間も他の家族は遊ぶことができます。

 様相はやや異なりますが、これに近い発想として2000年代に「ブリージャー」というスタイルが話題となりました。

 ブリージャーは「ビジネス」と「レジャー」が合わさった造語で、出張先で仕事を終わらせた後、現地でレジャーを楽しむことです。

「ワーケーション」や「ブリージャー」など造語が多いのですが、新しいワークスタイルを認識してもらいたい表れかもしれません。

進む「新しい働き方」の変革と今後

 実際に、

「帰りの新幹線まで時間があるから地元グルメのお店に行きたい」
「宿泊するので翌日は周辺で観光したい」

という問い合わせが多く、当時は地域のビジネス拠点と観光産業が連携した市場開拓の促進が言われていました。

 ブリージャーの頃は社会通念として後ろめたく、会社には内緒でということもありましたが、現在は企業も社員のリフレッシュを考える時代になってきており、福利厚生の一環として考えるべきかもしれません。

 リモートワーク中の人はさまざまな新しいサービスを利用してみてはいかがでしょうか。

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