ジブリ映画『耳をすませば』の舞台・多摩ニュータウン再編から学ぶ 団地住民の「おすそ分け精神」の行方
2020年12月7日
知る!TOKYOジブリ映画『耳をすませば』の舞台として知られる多摩ニュータウン。同地では現在、再生計画により団地が消えつつあります。その歴史と実情、優位性についてフリーライターの鹿間羊市さんが解説します。
かつてはジブリ作品の舞台に
都市郊外にベッドタウンとして開発されたニュータウンの人工的な街並みは、人口密度の高いこの国の住宅事情を象徴する風景です。全国の住居系用途地域のうち、ニュータウンの占める面積は15%にも上るため、もはやニュータウンは日本人にとってひとつの「原風景」とさえ呼べるのかもしれません。
そのなかでも、東京都心部への人口集中を改善すべく開発された「多摩ニュータウン」(八王子市・町田市・多摩市・稲城市)は、その規模と歴史の長さにおいて一、二を争うエリアです。
高度経済成長に伴う都市部への人口集中のあおりを受けて、「新しい街」へと移り住むことになった「多摩っこ」たちは、多摩丘陵の激しいアップダウンに打ちのめされながら、いつしかその自然豊かな街を「故郷(ふるさと)」として認識するようになります。

23区内の都民からは「ここが東京?」と言われることもありますが、そんな言葉に「多摩っこ」たちのアイデンティティーは揺らぎません。なぜなら多摩っこにはスタジオジブリ制作の名作アニメ映画で、多摩ニュータウンを舞台とした
・耳をすませば(1995年)
・平成狸合戦ぽんぽこ(1994年)
という心の故郷があるのですから。
とりわけ「耳をすませば」には、京王線の聖蹟(せいせき)桜ヶ丘駅からヒロインの「月島雫(しずく)」が住む愛宕地区の団地まで、現実の店舗や施設が描かれているシーンも多く、「耳すま」ファンから「聖地」とされているスポットも複数存在しています。
開発計画から半世紀以上が経過
映画やその他メディアへの露出を通じ、「クラシックなニュータウン」として認知される多摩ニュータウンですが、今や開発計画から半世紀以上が経過しています。
現在では少子高齢化や団地の老朽化への対策を迫られ、エリア各地で再生計画に伴う改築や建て替えが頻繁に見られるようになりました。それは雫の故郷である愛宕地区の団地も例外ではなく、多摩ニュータウン最初期に建てられた一帯の団地は数年内の建て替えが予定されています。

団地をはじめとする時代象徴的な風景が失われつつある現在の多摩ニュータウン。その変化から私たちは、何を読み取ることができるでしょう。

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