「生きるも死ぬも運任せだった」 老齢男性がふいに語り出した、関東大震災の壮絶な記憶【連載】東京タクシー雑記録(2)

タクシーの車内で乗客がつぶやく問わず語りは、まさに喜怒哀楽の人間模様。フリーライター、タクシー運転手の顔を持つ橋本英男さんが、乗客から聞いた奇妙きてれつな話の数々を紹介します。


「俺いくつに見える?」「ハズレ、86歳」

 フリーライターをやりながら東京でタクシーのハンドルを握り、はや幾年。小さな空間で語られる乗客たちの問わず語りは、時に聞き手の想像を絶します。自慢話に嘆き節、ぼやき節、過去の告白、ささやかな幸せまで、まさに喜怒哀楽の人間模様。

さまざまな客を乗せて走る東京のタクシーのイメージ(画像:写真AC)

 今日はどんな舞台が待っているのか。運転席に乗り込み、さあ、発車オーライ。

※ ※ ※

十数年ほど前の晩秋、渋谷駅スクランブル交差点(渋谷区渋谷)から老齢の男性を乗せました。男性はつんのめるようにして座席に腰を降ろしました。

「千駄ヶ谷の北参道の近くまで」

「はい、じゃあ明治通りを走ります」

「渋谷駅は老人の歩く所じゃないよ、人が多くって。あ、俺いくつに見えますか?」

「80歳前後かな?」

「ハズレ、86歳。大正8年生まれで戦争にも行っている」

 大正生まれのお客さんを乗せるのは当時としても珍しいこと。私は関心を引かれました。男性も、何か話を続けたそうな様子。

「お客さん、腰が少し曲がってるけど若く見えますよ」

「そうかい、ありがとう。俺は関東大震災も4歳のときに体験している。すっかり歳をとっちゃった」

「え? あの大地震?」

「ひと晩に、本当にたくさん亡くなったんだ」


【意識調査】タクシー運転手と「会話する」80%以上 あなたは?

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