素顔を見せる機会がなくて……コロナ禍の「マスク美人」問題を上手に回避する方法とは?
コロナ禍の2020年、マスクはすっかり常用品のひとつとして日本に定着しました。この間に知り合った人には、まだマスク姿しか見せたことがない、なんていうケースも。マスクを取ったら「あれ? 何か違う?」と思われてしまう、「マスク美人」問題。どうすれば回避できるのか、ライターの鳴海汐さんが国内外の事例を基にリポートします。
マスク姿がデフォルトの関係
年初には想像ができなかったほど長引くコロナ禍。異常事態にあっても私たちの生活は続いています。
コロナの影響で勤務先の業績が悪化した、ウェブ面接が普及し採用試験を受けやすくなったことなどを背景に、この間に転職を検討する人が増えたとの調査結果もありました。数多くの企業が立地する東京ではなおさらでしょう。
2020年8月の有効求人倍率は、近隣3県が1倍を割り込む中で、東京は全国平均(1.04)より高い1.22を維持しています。

転職し、新しいオフィスで同僚たちに見せるのは初めからマスク姿です。なかなか顔の全体像を見せる機会がなく日々が過ぎていきます。
マスクをした顔しか見たことがない同僚たちから勝手に“美人扱い”され、長引くほどにマスクを外す怖さが増しているという話をネット上でちょこちょこ見かけるようになりました。
さらにデリケートなのが恋愛のシーンでしょう。お互い好意を抱くようになった同僚にはまだマスク姿しか見せていない。仕事関係でなくても出会ったときはお互いマスクをしいていた。
そんな相手と食事デートになって初めて顔を晒すのは遅すぎないかと、幻滅されるのではないかと悩んでいる人もいます。
本来マスクは周りの人や自身の健康を守るためのもの。そこに美醜をからめるのは「くだらない」「ばかばかしい」「不謹慎」というコメントも同時に見かけます。
外見に気を取られる人はレベルが低く、子どもの頃から教え込まれてきた「人間、中身が大事」という考えの方が格上と考えているからでしょうか。単純で本能的で説得力のある「見た目」の力の強さを本当は感じているからこそ、あえて否定しているようにも思えてきます。
「マスクフィッシング(Maskfishing)」とは?
実は欧米ではそういった日本での葛藤の先を行っています。「マスクフィッシング(Maskfishing)」という言葉が、スラングを多く掲載するアメリカのオンライン辞書「Urban Dictionary(アーバン・ディクショナリー)」に載っているほどです。
フィッシングとは詐欺のこと、つまりマスクをすることでより魅力的に見える現象を指します。そしてこの言葉が「マスクフィッシャー(Maskfisher、マスクをすることでより魅力的に見える人)」と共に、有名な新聞や雑誌のWEBニュースで取り上げられているのです。
アジア諸国と違い、これまでは普段からマスクをする習慣がなかっただけにこの世の中の流れは劇的でしょうし、もしかしたらアジア系以外の方が、目が大きく掘りの深い人が多い分、マスクによる影響が大きいのかもしれません。
個人的な感覚ではありますが、初対面がマスク姿だった白人、黒人、ヒスパニック系20人程度のマスクあり・なしの顔を見てきたところ、マスクをしている方が魅力的だと感じた人が6割ほどでした。アジア人と比べて多いでしょうか、少ないでしょうか。
彼ら自身も、「マスクを外すと別人って人いるよね」「誰だかわからなくなるくらい差がある人がときどきいる」と言っています。
マスクありの方が魅力的な人が多いと思うかについて、ちょっとばかばかしいかもしれないけれどと前置きして質問したところ、「実際、マスクをしている方が魅力的に見える人は多い。このギャップは皆が感じていることなのだから、くだらないことではないと思う」と返してきた人もいました。
やはりそのように感じている人が多いからでしょう。海外のデーティングサイト(婚活・恋活サイト)では、掲載するプロフィール画像のマスク姿は禁止としているところが出てきています(2020年10月28日付、『Forbes』)。
もはや無視できない現象になってきているということなのだと感じます。
マスクをすると魅力が増す人が多いのはなぜか
いったいなぜこのようなことが起きているのでしょうか。
マスクと魅力についての研究は、さまざまな国で行われているようです。
その中で一番分かりやすかったのが、ベルギー・アントワープ大学の哲学心理教授であるベンス・ナナイ博士の記事です。この現象は、「アモーダル補完」という見えない部分を脳内で補うことで認識する視覚機能で説明できるそうです。

目の前にいる相手のマスクをしていない顔をすでに知っている場合、私たちはマスクで隠れた部分を記憶で補って全体像を構成しています。一方、初対面がマスク姿であって、鼻と口を見たことがない場合、これまで見てきた人々の鼻と口の様子を平均化したものを当てはめているそうです。
しかも脳が心地よいと感じる美しいものほど記憶されやすいので、それが影響して平均化といっても美化されたものになりがちとのことです(2020年6月20日付、『Phychology Today』)。
マスクで魅力が減る人もいる
しかし、マスクをすることで魅力度が変わらない人や、マスクを取った方がはるかに魅力的な人がいるのも事実です。周りにも、かなりの美人がマスクをすることで普通になってしまっているなあと思う人がいるのではないでしょうか。
知人のスペイン人も「マスクを取ったら別人のように美しい人がいて驚いた」と言っていました。実際、元の魅力が高いほど、マスクをすると魅力が下がるという研究結果を北海道大学で認知行動科学を研究する河原純一郎教授が発表しています。
マスクが良い部分を隠してしまい、さらに「マスク = 病気」という不健康な印象がプラスされるという理論です(2016年11月号、『産学官の道しるべ』)。
たとえ、鼻や口といったパーツが本人にとって自信がないものであっても、美はトータルのバランスで量られるものなので、マスクなしのがよいという結果になることもあるのを筆者は見てきています。
どうしたらよいのか
これまで特に誰からも指摘されたことがない場合、率直な意見をくれる友人や身内に聞いて自分はどうなのか確認してみてはいかがでしょうか。
場合によっては、その後マスクを取ってがっかりされるという心配が一切なくなるからです。ただそういった人々は、自身の魅力がさっぴいて見られてしまうコロナ禍がいつまで続くのかを心配することになりますが。
マスクをしている方がすてきだと言われた場合はどうでしょうか。マスク効果を最大限に利用して楽しめればいいですが、期待されたくないのであれば余計な期待をさせないよう、できるだけ早めにマスクを外して顔を晒しておくとお互い楽でしょう。
もしマスクを取ったときとのギャップを減らしたいのであれば、マスク着用時に“底上げ”されるのを止めるのがいいかと思います。女性でいえば、メイクを薄くしてすっぴんとのギャップを減らすような感覚です。

前述の研究では、ピンクのマスクは血色をよく見せるので魅力度をアップさせるとあります。実際、ピンクのマスクをしている女性を見ると、女性らしい甘さもプラスされているなと感じます。
化粧品メーカーであるコーセーのWEBサイト「Maison KOSE(メゾン・コーセー)」では、マスクの色別のメリット・デメリットが掲載されています。たとえば青は肌に透明感を出すものの、シミやくすみが目立つといった具合です。
ピンクのマスク、小顔に見せるマスクといった補正効果があるアイテムをあえて避けるといったことも一案です。
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