80年代に爆発的ヒット「キン消し」 消しゴムと間違えて字を消そうとした淡い思い出もひっくるめて語ろう

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80年代に爆発的ヒット「キン消し」 消しゴムと間違えて字を消そうとした淡い思い出もひっくるめて語ろう

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大居候

フリーライター

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1980年代に子ども時代を過ごした人はたまらないのがキン肉マン消しゴム、すなわち「キン消し」です。そんなキン消しの思い出について、フリーライターの大居候さんが解説します。

8月に『週刊プレイボーイ』で連載復活

 先頃、SNS上での「ネタバレ」投稿を巡って『キン肉マン』が論争になりました。

『キン肉マン』といえば、1979(昭和54)年から1987年まで『週刊少年ジャンプ』で連載された作品です。当初はギャグ漫画でしたが、第28話から超人オリンピックが始まり、格闘漫画へ路線を変更。以降、敵味方の魅力的な超人が次々と登場し、人気を博しました。

 細かい設定や伏線などは考えず、それよりも読者を楽しませようという作品のスタンスは、作者のゆでたまごさんにちなんで「ゆで理論」と呼ばれるなど、漫画ファンの間では常識となっています。

キン肉マン消しゴム(画像:ゆでたまご、東映アニメーション、京楽産業)



 連載の終了後もその人気は衰えず、1991(平成3)年に『キン肉マン キン肉星王位争奪編』がテレビアニメとして放映。そして1998年には、『週刊プレイボーイ』で前作の主人公であるキン肉マン(キン肉スグル)の息子・キン肉万太郎を主役にして、『キン肉マンII世』の連載が始まりました。

 かつての人気作品の次世代について描く作品は、1990年代後半から一種のブームとなっていました。『リングにかけろ』の続編にあたる『リングにかけろ2』や『魁(さきがけ)!!男塾』の続編である『曉(あかつき)!!男塾 青年よ、大死を抱け』など例を挙げれば尽きません。

 一方、『キン肉マン』は新たな展開が始まっていました。2010(平成22)年にジャンプ・コミックスで新刊37巻が発売。そして、2020年8月からついに『週刊プレイボーイ』で連載が始まったのです。

 話数は317話から開始。つまりは『週刊少年ジャンプ』の続きです。子どもの頃に熱く読んだ作品をまた読めるなんて……と感動した大人たちも多かったことでしょう。

4年間で総数400種類以上の商品が誕生

 そんな『キン肉マン』で忘れてはならないのが、キン肉マン消しゴム、すなわち「キン消し」でしょう。

『キン肉マン』公式サイト(画像:集英社)



 キン消しは塩ビ人形で、1983年にバンダイ(台東区駒形)がカプセル自販機で販売を始めました。消しゴムということになっていますが、実際には塩ビ人形なのです。きっと、子どもの頃に消しゴムだと勘違いして、鉛筆の字を消してみようと思ったものの、ほぼ消えなかったという経験をした人も多いのではないでしょうか。

 まだ、キャラクターグッズが少なかった時代にあって、キン消しは子どもたちを熱狂させました。連載が終了する1987年まで、4年間にわたって発売されたキン消しの種類は総数400種類以上。商品はパート30まで及びました。

 1980年代ならではのアバウトさを感じるのは、商品を発売する際の流れです。

 現在、キャラクターグッズを発売する流れはシステム化されています。業界では「版権申請」と呼ばれるグッズ化の許可をおこなって、サンプルを製作。原作者らのチェックを経てから発売されるのが一般的です。なお、グッズひとつの使用料などもある程度フローが決まっています。

 ところが、当時はアバウトでした。ゆでたまごさんは執筆作業が忙しいという理由でチェックする時間がなく、商品が出ていることすら知らないうちにキン消しがブームとなっていたというのです(『日経キャラクターズ』2006年1月号)。

 さらに以前の時代では、テレビ局が人気漫画をドラマにする際に出版社に電話1本でお願いしていた時代もあります。こうしてみると1990年代以降の30年間で、著作権という意識や、それが収入になるという認識が生まれたことがわかります。

人気リバイバルで数万円のプレミア商品も

 そんなキン消しがプレミア価格を持つ商品として再び脚光を浴びるようになったのは、2000年代前半からでした。

 背景には、子どもの頃にキン消しで遊んだ世代が大人になり、お金を持つようになったことがあります。大人たちが昔を懐かしむだけではなく、子どもの頃になしえなかった「本気のコレクション」を楽しむようになったのです。

 大人になった彼らのコレクター魂に火をつけたのは、レアものの存在です。第30弾まで発売されたキン消しですが、後半になるとブームが次第に去っていたこともあり、生産数が少なくなっていました。そうした生産数の少ないものを集めることに魂が高ぶる人が増えたのです。

 現在ではインターネットの情報も豊かになっていますが、2000年代前半はまだ忘れ去られた情報も多々ありました。前述の『日経キャラクターズ』でも、

「最近、当時の『週刊少年ジャンプ』が読者投稿による新キャラクター募集で誌面に掲載したキャラクターもキン消し化されていたことが判明した」

と記されています。

 その中でも代表格のハニワマンは、8万円以上とされています。

オークションで高値を付けるハニワマンのキン消し(画像:ヤフー)



 今ではそこまで価格の高騰はないようですが、それでも数万円で取引されているキン消しは存在します。連載の再開は、またキン消しのプレミア価格を塗り替えるのでしょうか。筆者も東京のグッズショップを久しぶりに覗いてみようと思います。

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