本年度スタートの小学校「英語教科化」、実はゆとり教育のたまものだった?

ついに小学5年生から科目化された英語教育。その未来と問題点について、教育ジャーナリストの中山まち子さんが解説します。


昭和60年代から議論されていた開始時期

 2020年度から、小学校5年生以上で英語が新たに教科へ加わりました。国語や算数と同じように通知表に成績が載り、日本の公教育における外国語の大きな転換期になっています。

 英語教育を小学校に導入する機運は「平成中期以降」という印象が一般的ですが、実は1987(昭和62)年にその開始時期の検討などについて、臨時教育審議会で提言されていたのです。

 表立った動きは、その後しばらくありませんでした。事態が大きく変わったのは、「ゆとり教育」の象徴としてしばしば言及される「総合的な学習の時間」(以下、総合)の登場です。

2007年度時点で97%の小学校が実施

 1998(平成10)年に小中学校学習指導要領が告示され、2002年度に導入されてから各学校は総合の授業で外国語活動を取り入れるようになりました。

 そして、総合に何らかの形で外国語活動を行っている小学校は2007年度に97%に到達し、「小学校でも英語を含む外国語に触れさせる」という下地を作っていくことになりました。

英語を勉強する小学生のイメージ(画像:写真AC)



 総合は外国語教育のために設けられたものではありませんが、その登場は小学校での英語導入に間接的な影響を与えました。

 これまで何かと批判されることの多かったゆとり教育ですが、結果として英語教科化への道筋を作ったと言えます。

小中高で英語力の底上げに注力

 いよいよ始まった小学校からの英語教育ですが、文部科学省は長期的な視野に立って抜本的改革を断行する計画です。

 具体的には「聞く」「読む」「書く」「話す」の力を、年齢ごとに身につけていくことを目指しているのです。

英語を勉強する中学生のイメージ(画像:写真AC)



 小学校3~4年生にはさまざまな活動を通じて、英語を聞かせたり話させたりして親近感を持たせることで、英語学習の敷居を低くしています。

 教科化となる小学5~6年では読むことや書くことを重視し、中学に向けた土台作りを実施。中学校では英検3級から準2級まで、高校では準2級から2級までの英語力を定着させる目標を掲げています。

 全国の公教育で英語を学ぶ期間が延びるに伴い、文部科学省ではそれに見合った強化策を提示しています。しかし、さらに突っ込んだカリキュラムを実施しているのが、東京都の自治体です。

公立でも独自カリキュラムを行う東京都

 小学校の英語の授業は、全国一律ではありません。国際都市・東京の中には英語学習により力を入れている自治体もあります。

 港区の区立小学校は、1年生から6年生までが受講する国際科を設けています。また一部の小学校では、朝学習の時間にフォニックス(文字と発音の規則性を学び正しく発音できる学習法)を行っています。

 小金井市立緑中学校(小金井市緑町)では、学区内にあるふたつの小学校と連携した英語教育を行い、学力向上を目指しています。

英語を勉強する小学生のイメージ(画像:写真AC)

 ふたつの小学校では、2015年12月から保護者ボランティアによるフォニックス指導をスタートするなど、地域の力を借りた取り組みを行っているのです。

 英語を親しむために始めたこの活動は、中学校進学後に学校生活や勉強内容に慣れることができず不登校につながってしまう「中1ギャップ」解消の一環として始まりました。

 今では全国の公立小学校で英語を学ぶようになりましたが、東京都は国際都市としての顔を持つため、全国の先を行く独自カリキュラムで子どもたちの英語力を高めていこうとしています。

小学校で600から700語の英単語を学ぶ

 文部科学省は小学校の英語教育において、これまでの一斉型授業スタイルではなく、英語専門の先生が会話を中心として生徒と双方向で授業を行うとしています。

 また、小学校では中学校のような英語のテストは行わないものの、小学校で600から700語を学ぶことになっています。そのため中学入学後には「700語学んできた状態」になっているのです。

英語を勉強する中学生のイメージ(画像:写真AC)



 当然、英語の得意・不得意は生じます。小学校2年間で習った単語を不確かに覚えてしまう子どもは必ず出ることでしょう。また、幼少期から英会話教室に通っている児童との機会格差問題もあります。

 日本語同様、英語は会話したり、文章を読んだり、書いたりする量によって理解度は大きく異なります。それを踏まえないと格差を避けられません。

 こういった問題点に関して東京都教育委員会では、少人数体制や習熟度別授業のガイドラインを中学校の授業に策定しています。

 英語授業に力を入れる分、対策をすでに出しているのは他の自治体の見本になると言えます。

 2020年度からスタートした学習指導要領は、生徒本人のやる気があれば力がつくカリキュラムになっています。子どもの意欲を高めるためにも、単に英語を勉強させるのではなく、早い段階から英語を学ぶ重要性を話し合うことが求められています。


【英語教育の実態調査】99%の親が子どもに英語をしゃべれるようになってほしい――でも、なんで?

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