顔芸ウォッチはもう古い? 地質学者が薦めるマニアック過ぎる『半沢直樹』の楽しみ方とは
2020年9月20日
ライフあまりにも身近な存在ゆえ、なかなか注目することのない「石」。そんな石の魅力について、『東京「街角」地質学』著者で名古屋市科学館主任学芸員の西本昌司さんが解説します。
背景に映る石材が気になる
人気ドラマ「半沢直樹」(TBS系)を見ていて、「石材」が気になってしまうのは私(西本昌司。名古屋市科学館主任学芸員)だけでしょうか。

まさか石材によってドラマのロケ地が決められていたなんてことはないでしょうが、偶然とは思えない石材セレクションに驚いています。
「なんて、マニアックな!」と言われてしまいそうですが、石の研究をしている私としては、石材にスポットライトを当てることが「石への恩返し」。ドラマの脇役として盛り上げている石材を紹介しましょう。
三井本館の美しい「稲田石」
半沢が勤めている東京中央銀行の本社ビルの外観は、どこかで見たことがあるという人も多いのではないでしょうか。
ローマ風の石柱が並んだ重厚感ある低層部は日本橋にある三井本館(中央区日本橋室町)で、高層部はCGを合成しているのだそうです。
三井本館は、関東大震災後の1929(昭和4)年に再建された近代建築で、重要文化財に指定されています。
外装に使われている石材は「稲田石(いなだいし)」と呼ばれる茨城県笠間市産の御影石で、岩石名でいえば「花崗岩(かこうがん)」。実際にそばに行ってみると、その存在感に圧倒されます。
稲田石は東京証券取引所(中央区日本橋兜町)、旧連合国軍総司令部(GHQ)の第一生命館(現DNタワー21。千代田区有楽町)や、最高裁判所(同区隼町)といった有名建築物のほか、駅の階段や銀座中央通りの歩道など、東京では古くから使われてきた石材です。

大和田が半沢に「お・し・ま・い・DEATH!」というシーン(第2話)や、金融庁検査で訪れた黒崎を役員が並んで迎えるシーン(第6話)など、何度も登場する同銀行内の階段は、1938(昭和13)年に開館した東京国立博物館本館の大階段です。
この階段に使われている石材は「茶竜紋(ちゃりゅうもん)」と呼ばれる徳島県阿南市産の大理石(※)で、岩石名で言えば「石灰岩」。遠目にはグレーですが、よく見ると茶色や白色の筋がたくさん入っていることがわかります。
※本稿でいう「大理石」は、石材業界でいう「大理石」のことで、地質学における「結晶質石灰岩」「石灰岩」「トラバーチン」などを含みます。

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