猫は人間に寄生する? 映画『キャッツ』と『パラサイト』に寄せて【連載】月刊 猫を読む(2)

猫が好き、読書も好き――そんなあなたのために、猫にまつわるたくさんの本と4名の猫店員がいる書店「キャッツミャウブックス」(世田谷区若林)店主の安村正也さんが、毎回とっておきの本をセレクトしておススメします。


ラジー賞9部門ノミネート『キャッツ』の原作

 賛否両論ある方がワクワクしません?

 実は、現在公開中の映画『キャッツ』の評判が気になって仕方ないのです。アメリカでは、その年の「最低」の作品に与えられるゴールデンラズベリー賞(通称ラジー賞)の2020年版で、最多9部門にノミネートされるという快挙(?)を成し遂げた本作品、「ホラー」「グロテスク」「カオス」といった(筆者の個人的な好みとしては)絶賛の言葉を浴びています。これはむしろ見たい!

「ダンスや音楽が素晴らしい」と、日本では好意的なレビューも目にするこの映画、ご存じの通りノーベル賞詩人T.S.エリオットの著した猫詩集が原作です。いま本として一番手軽に読めるのは、ちくま文庫版の『キャッツ ポッサムおじさんの猫とつき合う法』ですが、さらに猫好き・猫本好きにおすすめしたいのが次の2冊。

猫本専門書店「キャッツミャウブックス」の猫たちと今回紹介した本(画像:安村正也)



 まず1冊目は、「猫の日制定委員会」を発足させるほど猫好きだった英文学者・柳瀬尚紀訳の『袋鼠(ポサム)親爺の手練猫名簿』(評論社)。

 タイトルをぱっと見ただけでは同じ原作とはわかりにくいですが、語呂合わせなどの言葉遊びを駆使して、オリジナルの詩のリズムや韻をできるだけ生かそうとした翻訳の妙は日本語版ならでは。『猫舌流英語練習帖』や『猫舌三昧』などの著作もある訳者の猫本ラインアップとしても押さえておきたい作品です。

 もう1冊は、これまた大の愛猫家として知られるエドワード・ゴーリーの挿絵による『キャッツ ポッサムおじさんの実用猫百科』(河出書房新社)。

 とぼけた感じの猫がさまざまな書体の1から50までの数字と一緒に登場する絵本『キャッテゴーリー』と合わせて、ぜひとも手にしていただきたい猫本です。そして(公開中の作品とは違った意味で)「不気味」「残酷」と称されるゴーリーの世界観で映画化されたならば、一体どんな映像になるのだろうかとウットリ想像してしまいます。

「猫はこうして地球を征服した」

 そんな『キャッツ』の一方で、大絶賛されているのが『パラサイト 半地下の家族』。非英語映画として初めてのアカデミー賞作品賞を受賞したこともあって、既に劇場へ足を運ばれた方も多いと思います。しかし、なぜ『キャッツ』の後に引き合いに出すのか。それは、この映画にも猫が出てくるからです!

 みなさん、高台にある豪邸で飼われている犬のことは印象に残っていると思いますが、裕福ではない主人公家族が暮らす地区のシーンで、猫の鳴き声がしたことを覚えていますか? 高級住宅街と半地下の建物があるようなエリアとでは、犬と猫が対照的に扱われているのです。

 この「パラサイト」、言葉としては「寄生生物」という意味ですが、猫の体内にも、人間の行動に多大な影響を与えているかもしれない寄生生物がいることをご存じでしょうか。

猫本専門書店「キャッツミャウブックス」の猫たちと今回紹介した本(画像:安村正也)



『心を操る寄生生物 感情から文化・社会まで』(インターシフト)で紹介されているのは、猫から人間へと感染し、脳に住みつくトキソプラズマ原虫。感染すると気分や性格が変わって、統合失調症が発症する可能性も高まるのだそうです。

 ネズミが感染した場合は、猫に引きつけられるように嗅覚が変化し、捕食されやすくなってしまうらしいのですが、なんと人間でも(特に男性は)猫のおしっこの臭いを好ましく感じるようになるのだとか! ひょっとして、猫は寄生生物を使って人間や他の生物を支配しようとしているのでは……?

 そんな疑念を深掘りした本のタイトルが、そのままズバリ『猫はこうして地球を征服した 人の脳からインターネット、生態系まで』(インターシフト)。

 猫はいかにして人間の生活や心の中に入り込み、われわれだけでなく、生態系も征服していったのか。星新一の名作ショートショート「ネコ」(『きまぐれロボット』所収)のように、エイリアン的な存在であった猫が、この星の実質的な支配者となっていく様が多面的に考察されています。

 読み終えた後、けなげに猫の世話をしている人間の姿(筆者も含む)を思い起こすと、猫が人間に寄生しているのではなく、人間が猫さまに「寄生させていただいている」気がしてきます。

身も心も猫に乗っ取られる?

 ここで無理やり映画に話を戻すと、まさに人間に寄生する生物が描かれた『エイリアン』(ノベライズ版は角川文庫)では、ラストシーン近くでシガニー・ウィーバーが命の危険をかえりみず、見失った猫を助けるために宇宙船へと戻っていきます。あれも、猫に飼いならされてされてしまった人間の姿を表しているのではないでしょうか。

 考えてみれば、本来は猫そのものとして描かれている『キャッツ』の登場猫を、人間ができるだけ猫になりきろうとして演じているのは、猫に身も心も完全に乗っ取られていく過程なのかも知れません。

 最後に、二子玉川(世田谷区玉川)で2020年1月31日(金)と2月1日(土)に開催された「本屋博」で、猫に支配されている筆者もキャッツメークを施してレジに立ってしまったことを告白します。さて、『キャッツ』を見に行きますか。


【画像】「キャッツミャウブックス」の猫たちと今回紹介した本

画像ギャラリー

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