子どもを3人産んだ私は「桜田発言」に怒りつつも、「家族」という特殊さを改めて感じた
「子ども最低3人産んで」発言を受けて「お子さん、お孫さんには子どもを最低3人くらい産むようにお願いしてもらいたい」 自民党の桜田義孝前オリンピック・パラリンピック担当大臣が5月29日(水)、千葉市内で開かれた党所属議員のパーティーで発言した内容が、批判を集めています。 「3人産んで」発言の問題点は何か(画像:写真AC) SNS上などでは「時代錯誤」「女性軽視」「まず安心して子ども3人産める環境を作って!」といった声が上がる一方、「(少子化対策としては)正論だと思う」「国を維持するには人口増やさないと」といった反応も見られます。 実際に、小学生から未就園児まで、3人の子を育てる筆者。ひとり目の産後、子どもは3人欲しいと思いました。今では3人がキャッキャと遊ぶ様子を、ほほえましく眺める毎日。一方で今まで、友人に「子どもは3人産みなよ」と言ったことはありません。 桜田氏の「3人産んで」発言と、それを問題視する報道を受けて、自身の3人子育てを振り返りました。 「仕事と看病」問題 3人子育てを考える上で最も大きいのが、「仕事と看病」問題です。新卒で入社した会社を、転勤族の夫との結婚で退職した筆者。ひとり目の産後から、フリーランスで仕事をしています。 先日の10連休のGW中、子どもひとりが胃腸炎で入院しました。その翌週、もうひとりに胃腸炎がうつり、翌々週もう1人に感染。3人目が治りかけ、「やっと看病が終わる」と思った矢先、今度は別の子が40度の発熱。数日経ってほかのふたりにも感染し、結局5月は丸々1か月間看病でした。 フリーランスなので多少はスケジュールに融通がききます。それでもGWは仕事有り。取材はキャンセルせざるを得ず、締め切りを延ばしてもらいました。諸々の変更は響き、痛いもの。これが会社員だったら、有給もすべて使い切ったでしょう。 子どもひとりでももちろん、子が増えるほど「看病と仕事」問題は避けて通れません。とはいえ3人分の教育費を考えれば、働かないという選択肢もわが家にはないのです。 物理的問題や、残る価値観もネックに物理的問題や、残る価値観もネックに 物理的な手の足りなさもあります。代表的なのが、外出時。特に0歳児を抱っこしながら、言ってもまだ理解できない2歳児と、交通ルールを覚えたての6歳を連れて歩くときは大変でした。イヤイヤ期の2歳児が、スーパーで大の字に寝ころび、ギャン泣きするのを見て途方に暮れたことも。 小児科へ連れて行くにも、高熱のため「歩けない」と上の子たちが言うことはよくあります。まだハイハイの末っ子をおんぶし、上の子をひとりずつ抱きかかえながら、車と病院を2往復したこともありました。 核家族や共働きが当たり前とはいえ、まだまだ「家事育児は女性の仕事」という価値観や、親世代と同レベルの家事が求められることも大きなネックになります。負担が多過ぎ、疲弊する女性は多いのです。 「子どもは社会の宝」といいますが、まずは社会環境と価値観が整ってこそ、子どもも育てやすくなるのです。 家族はほかの社会集団と違う 友人に「子どもは3人産みなよ」と言わないのと同時に、「結婚しなよ」「子どもを産みなよ」と言うのも違うと思っています。 小説家・吉本ばななさんの父親で、評論家の吉本隆明さん(2012年没)は、家族や親族について、政治団体などの社会集団と比較しながら、「本来一人の男性と一人の女性の性的なつながりから発展した集団で、これは他のどんな社会集団ともまるで違う」(吉本ばなな著、『イヤシノウタ』新潮文庫より)と指摘します。 結婚して9年になりますが、「家族や親族は、会社や学校とはまるで違う」と強く実感しています。学校や会社などの社会的な集団では通用することが、家族や親族間では通用しないことも珍しくありません。独特な風習や価値観、ルールを持っている家庭も多いですよね。 価値観も、事情も、働き方も、性格も、それぞれが「千差万別」な家庭。本来他人がほかの家庭に口を出せることは、少ないのです。親族間であっても難しいのが現実で、個人的には桜田前大臣の「お子さんやお孫さんに~お願いしてもらいたい」という言い方にも疑問を感じます。 時代は「令和」。多様性が高まるこれからの時代、それぞれの生き方を尊重する一方で、自分らしく生きることに時間と労力を使うようにしたいもの。同時に子どもが育てやすくなる社会になるよう、期待しています。
- ライフ