有料レジ袋の「たった5円」が惜しくてたまらない人に教えたい イギリス流の「第3の選択肢」とは

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有料レジ袋の「たった5円」が惜しくてたまらない人に教えたい イギリス流の「第3の選択肢」とは

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鳴海汐

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2020年7月1日(水)に始まった、レジ袋の有料化。1枚当たり3~5円という値段が一般的ですが、わずかな代金を払うのも何だか惜しい……そう思う心理はなぜなのでしょう? このストレスを和らげる方法は? イギリス滞在歴の長いライターの鳴海汐さんが、イギリスの例を挙げながら解説します。

対応が分かれる都内在住者

 2020年7月1日(水)に始まった、プラスチック製買い物袋(レジ袋)の有料化。この新制度に関し、さまざまなメディアが国民の賛否両論の声を紹介しています。

 筆者も首都圏に暮らす知人たちに、どのようにこの有料化に対応しているのか聞いてみました。大きくふたつの傾向があり、家庭ごみを捨てるためにレジ袋を二次利用するかどうかが分かれ目となっているようです。

マイバッグを持って行かなかったために、レジ袋を購入することになった経験、ありませんか?(画像:写真AC)



 まず「できる限りマイバッグで対応する」というのは、家庭ごみを市町村指定の有料ごみ袋に入れて捨てている、東京23区以外の在住者たちです。

 彼らは、ごみ出しのためにレジ袋を手に入れる必要がありません。たまたま今もリモートワークで自宅にいる人が多かったせいか、買い物に行く機会も限られていて、レジ袋有料化の影響をあまり感じていないようでした。

 一方、東京23区内に暮らす人々は、家庭ごみの袋に指定がないため、これまでレジ袋をごみ出し用にフル活用していた人が多くなっています。普段の買い物にはマイバッグを使いつつ、レジ袋も必要なので、ときどき購入するという意見が一般的。

 オフィス勤務では、コンビニで買ってきたランチの空き容器を捨てるのにもレジ袋を使います。コンビニに行くときには手持ちのレジ袋を持参し、オフィスで食べ終え、ごみを捨てるときには、別途まとめ買いしておいた小さめサイズの袋(こちらの方がコンビニでレジ袋を購入するより単価が安い)を活用するという、ハイブリッドな人もいて、感心した次第です。

たった5円がなぜ惜しいのか

 マイバッグや使いまわしのレジ袋については、衛生面の問題も指摘されています。そのせいもあってか、都心のオフィス街では、コンビニで買い物した人々が、袋を使わずに手で持ち帰る姿が目立つようになったとも言います。

 マイバッグ持参は忘れがちだが、新しいレジ袋を買うのも何となくいや――。1袋あたりたった3~5円なのに、なぜその代金を支払うことに抵抗を覚えるのでしょう。同一商品がスーパーに比べて割高でもコンビニで買っていたような人も、これに関しては割り切れないようです。

 理由は、

・今まで無料だったものにお金を払うのがいや
・商品にお金を出すのはいいけれど、袋にお金を出すのはいや

といったところでしょうか。

 個人的には、「事前に十分防げた損失」だから悔しいのではないかと思います。スーパーでマイバッグを持参するとポイントがもらえた時代も、マイバッグを忘れると結構ショックで罪悪感さえ感じていたものです。

イギリスで始まった代替策

 レジ袋有料のシステムは、海外にもあります。そこに、レジ袋代金支払いへの抵抗感を緩和するヒントがあるのではないでしょうか。

 イギリスでは、ウェールズ、北アイルランド、スコットランドに次いで、イングランドが2015年にレジ袋有料化を始めました。

イギリスで定着した、レジ袋でもエコバッグでもない“第3の袋”とは?(画像:写真AC)



 イギリスでもやはり、レジ袋5ペンス(約6.7円)の支払いに強い抵抗を感じる人が多かったようです。

 スーパーはセルフレジが多いせいか、レジ袋の万引が多発。そのため、袋にセキュリティータグをつけるお店も出てきました(『METRO』2017年8月7日付)。

 なかには、5ペンスを払いたくないあまりに、買い物かごを万引する人も増えたそうです(『ONLINEジャーニー』2017年8月10日付)。

 大手スーパーチェーンのTESCO(テスコ)は、レジ袋が有料になっても半減程度の効果しかなかったとし、2倍の値段の10ペンス(約13.4円)で販売される、大型で厚手のタイプのみを取り扱うことを決定しています(『METRO』同)。

レジ袋に13円も払えるのか

 これは「Bags for Life(バッグズ フォー ライフ)」と呼ばれるもので、「一生使えるエコバッグ」といった意味です。他の大手チェーンにも広がり、今はこのタイプが主流になりました。カラフルなプリントで大きく店のロゴが入っていますが、スーパーによってはデザイン性が高くおしゃれです。

 イギリスの大手スーパーは、都心に小型店舗を置いています。それらは日本のコンビニほど各種サービスに対応しているわけではないですが、近い位置づけです。

 そのため、筆者がロンドン滞在中は、「Bags for Life」を持っている人を街中で結構見かけました。

 スーパーの売り場ではより丈夫なエコバッグ商品を売っていますし、買い物にはマイバッグ持参の人も多いのですが、それでも「Bags for Life」を持つ人が多いのです。店内でも、新品の袋を買う人をよく見かけました。

 マイバッグを持ち歩くのが面倒なのか、うっかりしたのか分かりませんが、男性に多かったです。

レジ袋以上エコバッグ未満

 普通に考えれば、袋の価格を高くすれば消費者にとっては痛手です。しかし高い代金を払った分、次は忘れないようにしようと心に誓う気持ちが高まりますし、質がよいのである程度納得感があります。レジ袋を手に入れるよりも、うれしいのです。

 何度も使ってよれてきたら、家庭ごみを捨てる袋としても丈夫なのでかなり優秀です。

 日本ではスーパーに比べてコンビニで買う量が少ないということがありますが、この「Bags for Life」のような「レジ袋以上エコバッグ未満」の選択肢があると、ストレスレベルが変わってくると思います。

 ただ最近のイギリスでは、チェーンスーパーの「Bags for Life」の値上げ傾向が続いていて、15~30ペンス(約20.1~40.2円)で設定され、消費者の怒りを買っているので、価格設定は慎重にする必要があるでしょう(『Mail Online』2019年11月23日付)。

 また今の日本では、厚手の袋は有料の対象外なので、そのあたりのルール変更も必要になりますが。

持参した袋のロゴ違い問題

 さて日本のSNSでは、コンビニにレジ袋を持参した際、他社のロゴ入り袋を出してしまったときの気まずさが話題になっています。

コンビニに持参したレジ袋。他社製のものだったら気まずい?(画像:(C)Google)



 ロンドンでは、そこのお店の袋を使っていた人が多い印象でしたが、もちろんそうじゃない人もいました。これはセルフレジが多く、店員との接点を避けられるせいもあるでしょう。

 筆者はふたつの違うスーパーの袋を折りたたんで持ち歩き、どちらでも使えるようにと用意していました。結局買いものの量が増えて、両方の袋を使うことが多かったので途中からあまり気にならなくなりました。

 イギリスでは、イングランドがレジ袋有料化を始めた2015年の翌年、英国の海岸で見つかるレジ袋が4割減になったと言う報告がありました(『BBC NEWS JAPAN』2016年11月22日付)。また開始から4年で、配布数が9割削減になったそうです。

 これは、有料化になる前は買い物客ひとりあたり年間で約140袋だったところ、2019年には約10袋になった計算です(同サイト2019年8月5日付)。

 レジ袋有料化が本当にエコになるかどうかの議論もありますが、道端に袋をポイ捨てする人が減るだけでも、大きな意味があるのではないでしょうか。

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