もはや一時的なブームではない
人気女性グループ「KARA」や「少女時代」がNHK紅白歌合戦に初出場を果たしたのは2011年の大みそか。以来、音楽シーンだけでなくファッションやメイク方法などにも飛び火した韓国ブームは、2020年の今なお若者の間で健在です。
商業施設やバラエティーショップ、ドラッグストアには「韓国コスメ」を取りそろえる店が増え、この数年間でとても身近なものとなりました。
「プチプラ」なのも人気の理由
Z世代(1996~2012年に生まれた若者たち)の流行や価値観を調査・分析する私たち「Z総研」が、東京などに住む10~20代の女性たち81人に行った聞き取り調査では、韓国コスメを持っている女性は81人中71人。
実に約9割%の女性が何らかのアイテムを持っていることが分かりました。
日本で定番の韓国コスメといえば、原宿・竹下通りや新宿、SHIBUYA109など日本でも店舗を展開している「ETUDE HOUSE(エチュードハウス)」や「innisfree(イニスフリー)」、クッションファンデーションが人気の「MISSHA(ミシャ)」、アイシャドウが人気のCLIO(クリオ)など。
また最近では「rom&nd(ロムアンド)」や「espoir(エスポワール)」といった、日本語版の公式サイトがないコスメブランドでもわざわざ手に入れている女性たちが増えているというから驚きです。
韓国コスメは500~3000円程度と比較的プチプラ(安価)なものが多く、若い世代が手を出しやすいというのも人気の理由のひとつと考えられます。
あこがれの芸能人と同じものを
韓国コスメ人気の先駆けといえば、ティントリップと言われています。
日本にはなかなか無かったパキッとした鮮やかな発色に加え、落ちにくく、グラデーションを作れるリップは今でも大人気。
以前、指原莉乃さんが自身のツイッターでETUDE HOUSEのティントリップを紹介したときには同じ色のリップが品薄になる店舗も出るほどでした。
SNSが発達したことで芸能人やインフルエンサーらが実際にどんな化粧品を使っているのか知る機会が増え、また指原さんのように、本人たちが進んで発信してくれる情報に触れる場面も多々あります。
国境を超える「カワイイ」探し
当然それは日本国内に限りません。本場・韓国の魅力的な有名人の情報を知ることも可能となり、あこがれのK-POPアイドルが使っている化粧品を自分も実際に買ってみた、という女性も多いのです。
少し前なら「若い女性たちの間で韓流(はんりゅう)がブーム!」とニュースにされることもありましたが、今や特別に韓国の何かが好き、というわけでなくとも皆何かしら韓国コスメアイテムを持っていて、韓国メイクをするのがひとつの選択肢として当たり前になっているほど、非常になじみ深いものとなりました。
そんな韓国コスメをめぐっては、メーキャップ用アイテムだけでなくスキンケア商品も定着の兆しを見せています。
スキンケア商品の高いハードル
少し以前であれば、韓国製の――というよりも、あまりなじみのない海外製スキンケア商品を使うことに対してためらう人も多くいました。
なぜなら、国が違えば化粧品を製造・販売するうえでの許可や配合成分の基準が違うだろうし、もしかしたら日本人の肌には合わないかもしれないという、漠然とした不安感があったからです。
日中、一時的に付けておくメーキャップコスメと違って、スキンケア商品は角質層まで浸透させて肌を健康な状態に整えるためのもの。肌に直接たっぷりと塗るものなので、より警戒心が働くというのもうなずけるでしょう。
そんな漠然とした不安感を取り除くために、若い女性たちが活用するのがSNSです。そこでは、商品を実際に使った人のレビュー投稿や使用方法を紹介する動画など、リアルな意見をたくさん見つけられるから。Z世代はそれらを駆使し、実際に購入する商品を自分なりに厳選しているのです。
存在感を増すインフルエンサー
SNS上に見られる投稿の内容やスタイルは実にさまざま。
数ある商品を片っ端から試して自分が一番気に入ったものを紹介する人もいれば、話題の商品1点に絞って本当に良いものなのかを実際に使いレビューしてくれる人。ファンからのリクエストに応えてレビューする商品を選んでくれる人までいます。
いくらプチプラとはいっても、新しいコスメにすぐ手を出すのはなかなか勇気の要ることです。お財布のひもはそう簡単には緩められず、むしろためらう人の方が多いでしょう。
インフルエンサーは、そんな女性たちに代わって率先して試してくれる貴重な存在。また、誰よりも流行に敏感な存在たちでもあります。
そして、そんなインフルエンサーたちが今こぞって紹介しているのが「チャイボーグメイク」、中国コスメです。
次に来る「チャイボーグ」とは
冒頭で紹介したZ世代への聞き取り調査でも、今話題のメイクとしてチャイボーグメイクと答えたメンバーが多くいました。
チャイボーグメイクには、アイシャドウに中国らしい鮮やかな赤を取り入れ、凛々(りり)しい眉に赤いリップという特長があります。
また、中国らしい鮮やかで芸術的なパッケージにはっきりとした発色。これもまた日本のコスメにはない良さで、インフルエンサーや女性たちを引き付けているようです。
日本ではまだ韓国コスメほどメジャーではありませんが、民間のインターネット調査による若い女性向けの2020年トレンド予測で3位に入るなど、注目を集めているのは間違いありません。
今後、中国コスメもまた現在の韓国コスメのように日本で定番のものとなり、Z世代の誰もが持っているコスメにまで成長するかもしれません。
それにしても、「カワイイ」や「楽しい」を共通言語に国境をも軽やかに超えていく彼女たちの柔軟さには目を見張るものがあります。そうした動向を今後も注視していきたいと考えています。