コロナ時代こそ聞くべき? 疫病退散を願う江戸の庶民を描いた『風邪の神送り』【連載】東京すたこら落語マップ(10)
2020年6月8日
知る!TOKYO落語と聞くと、なんとなく敷居が高いイメージがありませんか? いやいや、そんなことありません。落語は笑えて、泣けて、感動できる庶民の文化。落語・伝統話芸ライターの櫻庭由紀子さんが江戸にまつわる噺を毎回やさしく解説します。
テーマは厄神を追い払う行事「神送り」
令和の疫病「新型コロナウイルス感染症」は、私たちの生活や社会に多くの変化をもたらしています。医療の発達した現代社会ですら大きな脅威なのですから、昔はいかばかりか図り知れません。
日本ではコレラやペスト、天然痘、インフルエンザなど、さまざまな疫病が人間を脅かしてきました。これらの疫病は悪い神様がはやらせるものとされ、各地で悪神を送り出す「神送り」の儀式が行われており、現在でもその歴史が残されています。

特に、天然痘(疱瘡)をはやらせる神様「疱瘡(ほうそう)神」は各地に存在し、地域ごとにさまざまな「神送り」(厄神を追い払う行事)や天然痘から身を守るまじないが行われました。今回は、その神送りを題材にした落語「風邪の神送り」の紹介です。
※ ※ ※
悪い風邪がはやり、町内軒並み風邪にかかるようになってしまった。
「こう陰気ではいけない。ひとつ陽気に風邪の神送りをして疫病神を追い払おうじゃないか」
「どうやるんだい」
「1軒からひとりは出てきて大勢集まったところで『おーくれ送れ、風邪の神を送れ、どんどん送れ』と言いながら隣町まで送り出してしまうんだ」
「それはよかろう」
神送りをすると聞きつけて、夜具にまるまった風邪っぴきの者まで出てきて参加することに。

New Article
新着記事
Weekly Ranking
ランキング
- 知る!
TOKYO - お出かけ
- ライフ
- オリジナル
漫画