事故で電車が止まった朝、なぜか古い記憶がよみがえった【連載】散歩下手の東京散歩(2)
2020年4月14日
ライフ「散歩」とは、目的を持たずに歩くことも、寄り道しながら目的地を目指すことも、迷子になってしまうことも、迷子になりたくなくて右往左往することも、すべて包み込む懐深い言葉。出版レーベル「代わりに読む人」代表で編集者の友田とんさんが、学芸大学駅で朝の人身事故に遭遇した日の自分を回顧します。
バス停には、人の列が長く延びていた
2019年の春先のこと、朝いつもより少しゆっくりと家を出て会社へ向かおうと学芸大学駅(目黒区鷹番)まで来てみると、人身事故が起きた直後のようで、電車はしばらく動きませんと繰り返し駅員がアナウンスしていました。
そう言われてみれば、駅へと向かう商店街で今日は人とよくすれ違うな、時間が少し遅いからかななどと考えていました。けれど、そうだとしてもまさかそれが電車が止まっているからだとは考えなかったのです。

もし知っていたら駅へは向かわずに、目黒通りを渡るときに、そこからひょいっとバスに乗ってしまったに違いありません。
駅に来てしまったけれど、駅に電車は来ません。では、目黒通りまで引き返してバスに乗るべきでしょうか。それはまたずいぶんと歩きます。
ふと顔を上げると、駅まで来た人が向こうの方に大勢歩いていくではありませんか。すぐ先には駒沢通りがあるのでした。けれど、考えることはみな同じで、通りに出てバス停を探すまでもなく、バス停とおぼしき場所にはすでに長蛇の列ができていました。おまけに、駒沢通りを走るバスは本数が少ないのです。これではしばらくバスにありつけそうもありません。
そこで私は思い立ちました。中目黒駅まで歩いて行こう。中目黒まで歩いてしまえば東横線が止まっていても大丈夫。地下鉄に乗れるのです。しかし、いったい目黒通りまで引き返すのもためらっていた私はどこへ行ってしまったのでしょうか。
駒沢通りを中目黒の方まで歩いたのは初めてでした。歩いたことのない道を都心に向かって歩いていく。もちろん幹線道路ですから、迷うことはありません。通りの向かい側には、反対方向のバスを待つ人がぽつぽつといます。
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