新型コロナ拡大で、若者が新たな感染者を生み出し続けてしまうワケ
2020年4月10日
ライフとどまるところを知らない新型コロナの感染拡大ですが、最近は20~30代の感染者が増加しています。その背景を教育ジャーナリストの中山まち子さんが解説します。
批判の対象は中高年から若年層へ
これまで新型コロナウイルスの感染者が確認されると、その年代や性別、感染場所などが伝えられてきました。しかし4月に入ると、日本全国でクラスタ-(患者集団)が発生し、以前のように事細かに報道される機会は少なくなりました。
当初のクラスターは中高年を中心に発生していたこともあり、定年退職した世代が非難の的となっていましたが、最近では大学生を始めとする若年層での発生が深刻化しています。
当初から強い感染力を指摘されていた新型コロナウイルスですが、中国で感染が拡大していたころは、「若年層は重症化しにくい」「8割は軽症者」と報道されていました。

都市封鎖など混乱を極める隣国を「対岸の火事」として見ていた日本人は、当時少なくありません。その後、国内の感染者数が増えても、クローズアップされるのは60~70代の高齢者たちでした。
世間では、元気な高齢者があちこち動き回って感染拡大を加速させていると考え、ネット上では厳しい声が上がり、若年層に対する注意喚起の機会は失われました。
しかし、感染が世界中に広がりを見せると状況は一変。
当時感染が拡大しつつあった欧米から、卒業旅行で帰国して感染が判明したり、自粛ムードが漂ってきた3月下旬以降に大人数で食事をしてクラスターが発生したりするなど、批判の対象は中高年から若年層へと明らかに変わってきたのです。
現に、ジャッグジャパン(渋谷区渋谷)が提供する「都道府県別新型コロナウイルス感染者数マップ」で、4月9日(木)時点の国内感染者を年代別で見ると、当初騒がれていた70代や60代よりも20代、30代の感染者の方が多くなっていることがわかります。
「自分たちは大丈夫」という誤り
なぜ、感染者は若者の間で増加してしまったのでしょうか。

多くの大学は2月に卒業式の中止を決定し、大勢の学生が集まらないよう配慮してきました。しかし、大学側が卒業旅行や送別会などを自粛するよう強く訴えても、実際の強制力はなく、学生個人の判断や良識に任される状態が続いていました。
「せっかくの卒業旅行を中止したくない」「感染しても自分は軽症で済む」といった甘い考えが結局、感染拡大の引き金になったのです。
また、国内のニュースで20~30代の重症患者が取り上げられることはほぼなく、そうした状況が若年層の自粛機運を高めなかったとも考えられます。
厄介なことに新型コロナウイルスは無症状や軽症も多く、自分自身が感染者を増やしているという意識が身に付かない面もあります。このような状況が続けば、感染は終息しません。
「コロナ疎開」は危険を伴う
こうした点を考慮し、都内のほとんどの大学は学校再開の時期を大幅に遅らせています。
早稲田大学(新宿区戸塚町)では4月21日(火)までキャンパスを立ち入り禁止にしたり、春学期の授業を原則オンラインで行ったりすることを発表しました。慶応義塾大学(港区三田)も同様に、キャンパスの立ち入りを5月6日(水)まで禁止し、大学構内のクラスター発生を阻止しようと取り組んでいます。

大学の授業がオンラインになれば地方の実家でも受講でき、営業自粛でアルバイトの出勤も激減していることも追い風となって、学生が都内に居続ける必要性は特段ありません。
しかし都内を離れて地方の実家に戻る、いわゆる「コロナ疎開」は大変危険を伴う行動です。都会よりも横のつながりが強い地方は、帰省者が万が一感染を広めた場合、どこで感染者が出たのかなど、個人情報があっという間に広がってしまいます。
地元で「あの家はコロナが出た」と後ろ指をさされ、家族全員が窮地に立たされるかもしれません。また、SNS上で身元が流される可能性もあります。
そしてなにより危惧されるのは、実家に住む両親や祖父母に感染させてしまう恐れがあることです。都内と異なり、地方は集中治療室(ICU)の数が限られています。大切な家族が重症化して、一生後悔する事態を招くかもしれないのです。
また、同じように実家に戻っている旧友と連絡を取り、「ちょっと遊ぼう」という話が出るかもしれません。
このようなことからも、感染拡大が続く中、あらゆる事態を想定して都道府県を安易にまたぐ移動を自重すべきです。
自らをいかに律するか
東京では、中国の武漢やイタリア、フランスのような都市封鎖が行われていません。外出を自粛するかどうかは、ひとりひとりの覚悟と良識にかかっています。自分が動かないことで少しでも終息に近づくと自覚しなければなりません。
前述のように、20代の若年層はかつて重症化しないと指摘されていました。しかし新型コロナウイルスが世界中に広がりを見せる現在、健康な若者も軽症では済まない事例が報告されています。

人間は災害時、「大したことにはならないに違いない」「自分は大丈夫だろう」という正常性バイアスを持ち、危険や脅威を軽視しがちになります。そのため、自分の身にも何か起きるかもしれない――と危機感を持って行動しなければなりません。
都内の感染者は現在、急速に拡大しています。そのような状況を一日も早く終息させるためにも、ひとりひとりの「自制心」がいま強く求められています。
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