どうしても添い遂げたい男がいる――身分違いの純愛を描く『紺屋高尾』【連載】東京すたこら落語マップ(9)
2020年4月18日
知る!TOKYO落語と聞くと、なんとなく敷居が高いイメージがありませんか? いやいや、そんなことないんです。落語は笑えて、泣けて、感動できる庶民の文化。落語・伝統話芸ライターの櫻庭由紀子さんが江戸にまつわる噺を毎回やさしく解説します。
遊女と職人 3年越しの、1度きりの逢瀬
落語には実在の人物を題材にした演目がいくつかありますが、その中でも「高尾」ほど有名な吉原太夫はいないでしょう。
太夫(たゆう)とは、大名道具と言われる一般庶民には手の届かない最高位の遊女。その美しさと手練手管は、店の身代や果ては国をも傾けることから「傾城(けいせい)」ともいわれますが、物語の中の高尾太夫は人情味にあふれる聡明(そうめい)な人物として描かれています。
落語の演目「反魂香(はんごんこう)」「仙台高尾」などでは悲劇のヒロインとして知られている高尾太夫ですが、今回は一介の職人に嫁した高尾を描いた、ハッピーエンドの人情噺(ばなし)「紺屋高尾」を見てみましょう。

※ ※ ※
神田紺屋町、染物屋吉兵衛のところの職人・久蔵が患ってことを心配した親方・吉兵衛は、お玉ヶ池の医者・蘭石先生を呼ぶ。やってきた蘭石先生が久蔵に話を聞いてみると、吉原は三浦屋の太夫・高尾に恋煩いの様子。
吉原の太夫なんぞ大名道具。とても町人が会えるものではないと嘆く久蔵。しかし、蘭石先生は「太夫といえど売り物買い物。三年、一生懸命に仕事をして十両貯めたら会わせてやろう」と約束する。
それを聞いた久蔵、すっかり元気になり、こっそり蘭石先生から様子を聞いた親方も安心。久蔵はこれまで以上に一生懸命に働いた。
そうして三年。恋煩いのことなどすっかり忘れてしまった親方は、ためたお金でのれん分けをするからあと一年預けておけという。
しかし、今すぐ渡してほしいという久蔵。使い道を問い詰める親方だが、涙ながらに訴える久蔵の話を聞いてすっかり感心。「一晩でパーっと使ってこい」と結城の着物に草履まで貸して身なりを整えてやり、吉原へと送り出した。

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