ひとたび聞けば、たちまち江戸日本橋のにぎわいがよみがえる『三井の大黒』【連載】東京すたこら落語マップ(5)
2020年2月1日
知る!TOKYO落語と聞くと、なんとなく敷居が高いイメージがありませんか? いやいや、そんなことないんです。落語は笑えて、泣けて、感動できる庶民の文化。落語・伝統話芸ライターの櫻庭由紀子さんが江戸にまつわる話を毎回やさしく解説します。
落語でおなじみの左甚五郎が登場
節分を控え、いよいよ新旧暦ともども春がやってきます。今回は、2020年の干支(えと)であるねずみがお仕えする大黒さまにちなんだ、おめでたい噺(はなし)の「三井の大黒」で、お江戸日本橋へ出掛けてみましょう。

この演目に登場するのは、講談・浪曲・落語でおなじみの名人・左甚五郎(ひだり じんごろう)。飛騨高山から修行するべく、京都伏見、大阪、東海道の名所や宿場を転々とし、江戸に到着したところからお話は始まります。
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飛騨の名工・左甚五郎。その作品には魂がこもり、命ないものに命を与え、鷹は飛び立ち鯉は泳ぎ始めるという。
さて、その甚五郎。江戸の大工はいかなるものかと、神田今川橋を渡った銀町(しろかねちょう)の普請場(建築現場)を通りかかった。威勢が良いものの、技術はどうも雑にみえる。思わず口に出してしまい、甚五郎は大工たちに袋だたきに遭ってしまった。
そこにやってきた、棟梁(とうりょう)・政五郎。大工たちをたしなめつつ甚五郎に素性を聞いてみると、「飛騨からやってきた番匠(大工)」という。大工ならちょうど人手が足りないから居候でやってみないかと誘いつつ、飛騨といえば名人甚五郎を知っているかと聞いてみると、「つまらん」という答え。甚五郎としてみると、名乗る前に名人と言われてしまったものだから具合が悪い。「ぽん州」と名付けられ、橘町(たちばなちょう)の政五郎の家へ厄介になることになった。

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