旧国立競技場なき今こそ、調布にある「もうひとつの五輪聖地」に行こう

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旧国立競技場なき今こそ、調布にある「もうひとつの五輪聖地」に行こう

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立花加久(フリーライター)

東京オリンピックが開催される2020年。フリーライターの立花加久さんが新旧の関連スポットを散策しました。

「スポーツの秋」という言葉があるのになぜ

 驚きのニュースが東京に飛び込んで来たのは、2019年秋のことでした。

 2020年に開催される東京オリンピックのマラソン・競歩会場が、東京から札幌に変更になったというではありませんか。しかもその理由は、単に「暑いから」というあっけないものです。

 1964(昭和39)年の東京オリンピックにならって、最初から10月10日にしておけば良かったのに――と思う人も少なくなかったはず。いや、「近い日に当然なるだろう」と思っていた人が大半だったでしょう。だって、日本は昔から「スポーツの秋」「食欲の秋」なのですから。

 アメリカでの放送事情に合わせて真夏に変更したとか、きっとそこには「絶大なるオトナの裏事情」があるのだろうと思わず邪推してしまいそうです。気象データを検討してもなお予定通りに東京での開催を決めていることを考えると、札幌開催について、いまだすっきりしない気持ちを持て余している人は私だけではないはずです。

 ちなみに前回の東京オリンピックの開催日が10月10日に決まったのは、1年で1番晴天になる頻度が高い日だったからだといいます。開催日もまた先人の知恵が詰まったレガシーと言えるでしょう。

 新しく建て替えた国立競技場も、マラソン選手たちがゴールする晴れの場となって初めて「オリンピックマラソンの聖地」と認知され、次の世代へ受け継がれるはず。これではまるで、仏作って魂入れずです。

道路脇にたたずむ、前・東京オリンピックのマラソンの折り返し地点碑(画像:立花加久)



 かつての国立競技場が無くなった現在、このままでは東京からマラソンの聖地が無くなってしまうのかと思っていると、残されたある聖地を思い出しました。それは、マラソンの「折り返し地点」です。

思い出されるアベベ選手と円谷選手

 折り返し地点は、「武蔵野の森総合スポーツプラザ」(調布市西町)」の中の東京スタジアム(味の素スタジアム)近く、その脇を走る甲州街道沿いにあります。

 最寄り駅は、京王線「飛田給駅」。駅は大きなサッカーボールのオブジェが置かれていて、いかにもサッカーの駅といった趣です。名前だけ聞くと、飛田給ではなく「飛田球」とイメージしてしまいそうです。

 なお前出の武蔵野の森総合スポーツプラザは、2020年のオリンピックでもバドミントンや近代五種とラグビーが開催され、東京スタジアムはJリーグのサッカーチーム「FC東京」の本拠地でもあります。

 さてその折り返し点を訪ねてみると、そこには立派な記念碑が建っています。また脇を走る甲州街道の真上には、この地点が折り返し点であることを示す巨大な道路標識も掲げられています。

大きな道路標識でドライバーにもアピールする折り返し地点(画像:立花加久)



 記念碑の前に立つと、あのアベベ・ビキラ選手や円谷幸吉選手はここで折り返していったのか――と感慨深いものがあります。間違いなくここはオリンピックマラソンの聖地と言えるでしょう。

風雪に耐えてなお残る碑の銅板

 このように、前回の東京オリンピックをしのぶことができる場所を巡るのも、新しい発見があって楽しいものです。特に競技会場や選手村などが集中していた代々木公園や明治公園周辺もお勧めです。

 原宿駅から欄干に地球儀が飾られた五輪橋を渡って、明治神宮の鳥居を右に見ながら代々木公園の脇をしばらく進むと、NHKの建物が左に見えてきます。そこをさらに進むと、ひっそりとした植え込みに囲まれた箱状の記念碑を見つけることができます。

記念碑の中でも、特に大きな「選手村記念碑」(画像:立花加久)

 それはこの場所がかつて選手村だったことを示す記念碑です。貼られた銅板には風雪に耐えてきたわりにはしっかりクッキリと、文字や施設の配置図などの刻印が読み取れます。選手村や競技場の場所、シャワールーム、食堂などが描かれていて、当時の選手たちの生活をしのぶことができます。

2019年秋オープンのミュージアムに注目

 五輪橋に戻り、原宿駅を過ぎて、東郷神社(渋谷区神宮前)から明治通りを横断し、頑張って国立競技場のある外苑(がいえん)エリアまで足を伸ばします。

 2019年秋にオープンした「日本オリンピックミュージアム」(新宿区霞ヶ丘町)の前庭には、オリンピック気分に浸ることができる五輪のオブジェや、前回の東京オリンピックの聖火台レプリカ、近代オリンピックの提唱者であるクーベルタン像、日本における「オリンピックの父」である柔道の加納治五郎像が点在しています。本館の1階はカフェも併設されているため、ここで一息つくのもいいかもしれません。

2019年9月にオープンしたばかりの日本オリンピックミュージアム(画像:立花加久)



 ここではさまざまなオリンピックにまつわる展示物を見ることができます。ちなみに2階以上は500円と有料です。

「オリンピックは参加することに意義がある」とは、かつてのクーベルタンが伝えるオリンピック精神ですが、選手ではない私たちが新旧の五輪スポットを散策することも同様に意義があるのではないでしょうか。

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