不況なのになぜ? コロナ禍が都内「中学受験戦争」をさらに加速させるワケ

コロナ不況のなかでも過熱する都内の中学受験戦争。その背景には一体何があるのでしょうか。教育ジャーナリストの中山まち子さんが解説します。


コロナ不況でも盛り上がる中学受験

 中学受験シーズンが近づいています。東京都内の中学受験の解禁日は2022年2月1日(火)と、すでに2か月を切りました。

中学受験のイメージ(画像:写真AC)



 中学受験といえば、小学校3~4年から本格的な通塾を始めるのが一般的で、費用もかなりの金額に上ります。軽い気持ちで臨めないことはもちろん、経済的にも余裕がなければ足を踏み入れることすらためらわれます。

 日本経済は2020年からのコロナ禍の影響で痛手を受けていますが、中学受験はそうした流れとはまた別のところにあります。

 首都圏模試センターが公表している小学6年の合判模試のデータによると、11月3日(水・祝)に行われた第5回模試の受験者数は次の通りです。

・2教科:1万4249人(男6958人、女7291人)
・3教科:1万1532人(男5894人、女5638人)
・4教科:1万1521人(男5884人、女5637人)

 受験者数は直近5年間のなかで最も多く、中学受験が世の中の経済状況に関係なく人気を集めていることが分かります。

 前述のように、中学受験は家計に負担がかかるため

「受験するor受験しない」

の判断は景気に左右されますが、経済活動が復活したとは言い難い現在でも、都内の中学受験熱は高まっています。

リーマンショック後の「底」は5年後

 2008年(平成20)年の秋に発生したリーマンショックで、2008年度と2009年度の国内総生産(GDP)は2年連続でマイナス成長に。都内の私立中の進学者数も景気悪化の影響から減少していきました。

 2009年度に公立小を卒業した児童の都内私立中への進学者数は、前年度より583人少ない1万5614人となり、2013年度の私立中への進学者数は1万4999人と、2009年度に比べて3.9%減少しています。一方、この期間の卒業児童数自体は増加しています。

 2013年度が底となり、私立中への進学者数は翌年から上昇していきますが、リーマンショック直後ではなく、5年後が底となったのはなぜでしょうか。それは、中学受験の「スタートライン」が影響しているからです。

中学受験のイメージ(画像:写真AC)



 中学受験の入試日は1~2月と、年明けの2か月間に集中しています。そのため、進学塾は新学年の始まりを2月に設定しているところが多く、特に中学受験を考える児童の入塾目安は

・小学3年の2月 = 小学4年のクラスの開始月

となっています。

 私立中への進学者数が最も少なかった2013年度の卒業児童が小学校に入学したのは、2008年度です。小学1年でリーマンショック発生、そして入塾タイミングでもある小学3年の年度末に東日本大震災(2011年)が発生するなど、小学1~4年の間は経済の先行きが不透明な時期と重なっていました。

 前述のとおり、小学3年の2月入塾が定番化し、受験児童は小学4年の春前後に通塾を始めることが一般的です。ただ、児童が高学年になるにつれてそれまで払った教育費の関係上、受験を途中で止めることは容易ではありません。リーマンショックを原因とする都内私立中への進学者減少が時間差で底となったのは、こうした中学受験特有の事情も絡んでいるのです。

 現在の中学受験へのスタンスがリーマンショック後と異なるのは、コロナ禍で休校となった際の期待感が高まっているためです。緊急時にオンライン授業への切り替えができるなど、教育方針がしっかりしている私立学校に魅力を感じる家庭が増えているのです。

コロナ禍で分かった緊急時の学校対応

 文部科学省が2020年6月時点の状況を調査した「新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえた公立学校における学習指導等に関する状況について」の「学校が課した家庭における学習の内容」に関する内容を見ると、公立のなかでも差があります。

 同時双方向型のオンライン指導を行った公立小は全体の8%、中学は10%、高校は47%でしたが、公立中学高一貫校である中等教育学校では70%とずばぬけています。

 一般的な公立学校は校数が多く、自治体や教育委員会と足並みをそろえることが前提です。そのため、自由度の高い公立中学高一貫校に比べて、初期対応が遅くなったと考えられます。

中学受験のイメージ(画像:写真AC)



 一方、私立学校は自分たちで方針を決定して実行に移せるため、対応がスピーディーです。臨時休校中だった2020年4月には、メディアでも私立中、高校のオンライン授業の取り組みが報道され「私立は迅速な対応をしている」という印象が広まりました。

 コロナ禍を契機に、受験の際に

「子どもの学びが安心して継続される学校かどうか」

が選択理由として浮上し、結果、コロナ不況でも受験を選択する層が増えていると考えられます。

授業料無償化と教育人口の増加

 コロナ禍では、

・生活スタイル
・勤務態勢
・学校教育の在り方

に注目が集まりました。

 東京都では、2020年度から年収910万円未満の世帯で私立高校の授業料が実質無償になっており、東京都教育委員会の「令和3年度教育人口等推計」によると、令和5年度まで教育人口が増加すると予想されています。

 中学受験熱は、これからも冷めない状況が続きそうです。


【図表】ひと目でわかる! 都内「私立中学」進学率

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