今までの魚介グルメとは微妙に違う 2020年注目の「釣りめし」とは

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今までの魚介グルメとは微妙に違う 2020年注目の「釣りめし」とは

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立花加久

フリーライター

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一般の釣り人が釣れる魚を使った「釣りめし」が現在、注目を浴びています。これまでのグルメブームとはどう異なるのでしょうか。フリーライターの立花加久さんが解説します。

「釣りめし」とは何か

 パシフィコ横浜(横浜市)で2020年1月17日(金)から1月19日(日)まで開催される「釣りフェスティバル」。その中で漁港の朝市だけで食べられる漁師飯や、地元の食堂や民宿でしか味わえない釣り魚などを使った「釣りめし」を一堂に集結させた「釣りめしスタジアム」が行われます。

「釣りめし」と聞くと、釣った魚を船の上でさばいて生じょうゆとワサビで食べる――といったイメージを持つ人が多いと思います。しかし実際は、これまでの魚介系グルメを釣りめしに絞り込んだ、釣りをしない人たちにもPRできる新ジャンルなのです。

 食材となる魚介類はプロの漁師が専門漁法を使って捕った魚ではなく、一般の釣り人が釣れるものに限定。その味は、日常の食卓では体体験できない「キャンプめし」や「男の料理」にも通じるものがあるかもしれません。

銀さばの串焼きにごっつり

 今回の「釣りめしスタジアム」に出品される「釣りめし」の中から、都内のお店で味わえるメニューをご紹介します。

 まずは足立区の北千住にある青森の郷土料理が頂ける「炭火焼 ごっつり」(足立区千住)という居酒屋です。

炭焼きするとわかる「銀鯖の串焼」の脂の乗り(画像:立花加久)



 北千住といえば都内でも有数の居酒屋激戦区ですが、そんななかでも同店は大きな青森ねぶた祭をイメージした看板を目印にして、ひときわ目立っています。

 ごっつりとは青森地方で「ご満悦風」といった気分を力強く言い表した方言ですが、今回のイベントに出品した八戸前沖さばを使った「銀鯖(さば)の串焼」も口に含めば頬を落として、ごっつりとなる一品なのです。

脂がよくのった八戸前沖さばを使った串焼き

 さばといえば大分県と愛媛県に挟まれた豊後水道の「関さば」に代表されるように、数多くのブランドがある、日本人にとってなじみ深い魚です。特にこの八戸前沖さばは、日本一脂がのっておいしいさばとして昔から有名です。

 八戸前沖さばは春に伊豆沖から太平洋沿岸まで脂肪を蓄えながら北上し、北海道沖でUターンすると、今度は産卵のために南下。一番脂が乗った秋に八戸沖を通過するため、おいしいのです。

 そんな八戸前沖さばの身を豪快にざく切りにし、焼き鳥のように串に刺して食べるのです。さばを焼き魚定食でしか見かけない人には、この串焼きは新鮮に映ります。

店舗では一串473円(税込み)で販売(画像:立花加久)



 炭火の遠赤外線効果で、表面はパリパリで中はジューシー。かんだ瞬間から口の中にうま味を含んだ脂がにじみ出てきます。これはもはや「串焼き界の小籠包」です。

マグロ卸が開いたマグロ丼の店

 そんなブランドさばに舌鼓を打った北千住から、今度は中央区の勝どきへ移動します。下町の雰囲気から打って変わって、こちらは潮風が海の気配を運ぶ湾岸スポットです。

 目指すお店のある場所は地図で見ると東京湾に突き出した半島のようにも見える、埋め立て地の豊海町の運河沿いの一角。その運河を挟んだ東側にあたる晴海方面には、建設中のオリンピック選手村も見えます。2020年の夏に巨大な街が誕生し、世界中から選手が集うと思うと感慨深いものがあります。

写真上から、他では食べられない「中トロだけ丼」(1600円)と、マグロ卸店ならではの「マグロ卸のマグロ丼」。600円(画像:立花加久)

 さてお店の名前は「マグロ卸のマグロ丼の店」(中央区豊海町)と言います。そのストレートな店名からもわかるように、もともとは創業30年のマグロ卸専門店だったのですが、一般の人にも手軽にマグロを味わってもらえる店にしたいということから、この湾岸で開業しました。

あん肝 + 白子 + かき = 痛風汁

 今度は同じ回遊魚の釣り魚でもマグロです。そしてお勧めはもちろん「釣りめしスタジアム」に出品する「マグロ卸のマグロ丼」や「中トロだけ丼」といったマグロに特化した丼ものですが、気になる冬場限定メニューもあります。

 それは尿酸値が気になる人には禁断の、その名も「痛風汁」です。あん肝や白子、かきと、一品だけでも鍋の主役になれる素材をぜいたくに投入した、まさに「みそ汁界の顔見せ興行」ともいえる赤みそ仕立てのぜいたく汁です。

店舗では500円(税込み)で販売するぜいたくな一椀(画像:立花加久)



 湯気とともに立ち上がる潮の香りに食欲をそそられながらひと口すすると、口内に甘くそして複雑なうま味が広がります。これはお酒を飲んだ〆に最高です。そんないつもと違う視点で東京の街を巡るのも、また一興です。

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