実は北欧より早かった? 東京都「週休3日制」の提唱者とは

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実は北欧より早かった? 東京都「週休3日制」の提唱者とは

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小川裕夫(フリーランスライター)

近年話題に上ることが増えた週休3日制。そんな週休3日制についていち早くその必要性をうったえてきた人物がいます。いったい誰でしょうか。フリーランスライターの小川裕夫さんが解説します。

週休2日の先鞭をつけた千葉県知事

 北欧フィンランドの首相が週休3日制の導入を検討する――。そんなニュースが先日、伝えられました。同ニュースを誤報と否定する論調もありますが、働き方改革が声高に叫ばれている今般の日本では、労働時間と私生活のバランス、そして過労死を防止することは政治課題です。

 現在、広く週休2日制は定着していますが、昭和まで土曜日は半休・日曜日が全休というライフスタイルが一般的でした。

 本格的に週休2日制を提唱したのは、千葉県の加納久朗(ひさあきら)知事とされています。加納知事は1962(昭和37)年に千葉県知事に当選。県民の期待を一身に背負いましたが、体調を急変させて在任わずか110日で死去します。

 在任日数が少ないので、加納知事が取り組んだ施策は多くありません。それでも、わずかな期間でいくつか成果を出した施策があります。週休2日制は、加納知事が取り組んだ施策のひとつです。

働き方改革のイメージ(画像:写真AC)



 加納知事が掲げる週休2日制に対して、現場の役所職員からは「土曜日を閉庁したら、仕事が回らなくなる」といった反対意見が多くありました。また県民からは、「民間が働いているにも関わらず、あなたたちだけ休んでいていいのか」といった不信感を募らせるような声もありました。

 当時、日本は高度経済成長をひたすら走っていました。労働こそが美徳とされていた時代です。それだけに土曜日を休みに充てる週休2日制の導入が、周囲から“怠惰”に映るのは自然なことだったのかもしれません。

「改革は役所が率先しないと浸透しない」

 そうした世間の空気に屈せず、加納知事は半ば強引に週休2日制を導入します。加納知事の言い分は「週休2日制のような改革は役所が率先して取り組まないと、いつまで経っても民間企業に浸透しない」というものでした。

 千葉県庁から始まった週休2日制は、いまや民間企業でも当たり前になっています。週休2日制の提唱から約半世紀が経過して、社会を取り巻く環境はさらに劇的に変わっています。

 現在、ビジネスシーンで当たり前に使用されているメールは、加納知事在任時にはありません。また、携帯電話もありません。取引先と連絡を取り、打ち合わせをするのも一苦労の時代でした。

 同じく新幹線や高速道路、空港もほとんどありません。いまや国内なら日帰り出張で済ませられる場所でも、2~3日かけることは珍しくありませんでした。

“働き方改革”を掲げた小池都知事の功績

 時代とともに通信・移動のインフラが整えられて、仕事における省時間・短時間化は進みました。作業時間が縮減された分だけ、労働者が休養をとる時間は生まれるはずです。しかし、実際は逆の方向に向かっています。

 そうした長時間労働を是正するべく、2016年に小池百合子都知事は“働き方改革”を掲げて、残業時間の削減に乗り出しました。

 東京都が先導した働き方改革は社会の支持を得て、いまや全国に波及しています。いまだ働き方改革が完全に実現できているとは言い難い状況ですが、世間に“働き方改革”という考え方を認識させたという意味では、小池都知事の功績は大きなものがありました。

ライフが優先という考え方から小池都知事は“ライフ・ワーク・バランス”を強調(画像:小川裕夫)



 今般、“ワーク・ライフ・バランス”とも称される働き方改革ですが、小池都知事はライフ(生活)が優先という意識から、東京都はあえて“ライフ・ワーク・バランス”とワークを先にしています。

週休3日制を提唱していた舛添要一前都知事

 しかし、東京都が“働き方改革”を打ち出すようになったのは、2016年の小池都政からではありません。

 前任者である舛添要一都知事は、就任直後から週4日制の導入を提唱していました。そして、東京都が非正規雇用から正社員雇用へと企業に奨励するシンポジウムなどでも、週4日制の推進を民間企業へ呼びかけていました。

 舛添都知事の週4日制という提案を言い換えれば、週休3日制ということになります。舛添都知事は自身の母親の介護経験もあり、介護離職を防ぐという観点からも週4日制を推進していました。

東京都の企業に正社員化を促すシンポジウムに登壇してスピーチする舛添要一都知事(当時)(画像:小川裕夫)



 舛添都知事は国際政治学者として活躍し、政界に転じてからは厚生労働大臣を経験しています。それだけに、国内・国外の労働環境には人一倍関心が高かったのです。これら舛添都知事の考え方は、フランスなどで取り組まれているワークシェアリングを意識したものでもあります。

 行政が制度を変革するよりも、人々の意識を変える方がはるかに困難で時間がかかります。報道されたフィンランドの週休3日制が今後どのような方向に進むのかは未知数ですが、東京都は自治体のトップランナーとして、“働き方改革”に腰を据えて取り組んできました。

 2020年、私たちのライフ・ワーク・バランスはどのように変化するのでしょうか?

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