王子駅と上中里駅の間にある謎の「三角形ゾーン」は一体どうなっているのか【連載】東京うしろ髪ひかれ地帯(1)

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王子駅と上中里駅の間にある謎の「三角形ゾーン」は一体どうなっているのか【連載】東京うしろ髪ひかれ地帯(1)

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業平橋渉

都内探検家

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京浜東北線の上中里駅と王子駅の間にある「三角形」ゾーンについて、都内探検家の業平橋渉さんが解説します。

地図を見ていると気になってしまう場所

 筆者(業平橋渉、都内探検家)は東京に関する記事を書くとき、地図を必ず見るようにしています。記憶を頼りに書くと、東西南北を間違うことがしばしばあるからです。そんなとき、どうしても気になる場所があります。

 それは、川を挟んだ一部分だけが対岸の「領土」になっている場所や、境界線が妙な感じに入り組んでいる場所です。

 くしくも新型コロナウイルス感染拡大の影響で東京のロックダウン(都市封鎖)が取りざたされると、東京都と埼玉県が1本のホームに入り組んだ駅などが話題になりました。

 まぁそんなわけで、地図を見ていると見に行きたくなる場所がとにかく多いのです。

上中里駅近くにある謎の「三角形」ゾーン

 そんななか、筆者が特に気になっている場所が北区上中里にあります。

 地図を見てください。京浜東北線の上中里駅から王子駅へと線路を目で追っていくと、途中で尾久方面からの高崎線や東北本線、それに新幹線などの線路も入り組んで「三角形」に合流しているポイントがあるではありませんか。

上中里駅近くにある「三角形」ゾーン(画像:(C)Google)



 いったい、ここはどうなっているのでしょうか……もしかして三角形の家が建っているのか。はたまた、街の面白いおじさんが既にパラダイスのようなものを築いているのか……。

鉄道によって分断された街

 さてそんな気になるポイントの最寄り駅、京浜東北線の上中里駅はいつ行っても寂しい雰囲気が漂っています。都心からわずか20分あまりの東京のど真ん中。その先の王子駅や赤羽駅がにぎわっているのに、上中里駅だけはまったくにぎわっていません。

 駅前の団地にスーパーが1軒、滝野川へ登っていく「蝉(せみ)坂」にへばりつくようにして数軒の飲食店があるだけです。もっともその中の「町中華」が名店らしく、いつもにぎわってますが……。

 本来の目的である「三角形」の先のみならず、地図を見ると上中里は、1丁目から3丁目まですべてが鉄道によって分断されており、とても興味深い場所です。

北区上中里1~3丁目の様子(画像:(C)Google)



 詳しく解説すると、上中里駅があるのが1丁目、駅の横にある陸橋で京浜東北線と新幹線を越えて渡ったところが2丁目、その先の高崎線・宇都宮線の線路を渡ったところが3丁目です。

 とりわけ気になるのが「三角形」のある2丁目で、なんともカッコいい土地です。いくつもの線路によって閉じ込められたような形状で、まるで難攻不落な城のようです。

 実際に、上中里とつながっているのは1丁目方向に陸橋が2本、3丁目方向に踏切がひとつあるだけ。鉄道で分断され、出入りが限られたこのゾーンーー住んでいる人は不便かもしれませんが、それゆえに訪れる人も限られているはず。

 都会のど真ん中だというのに残された「最後の秘境」といった雰囲気で、カッコいい感じがするではありませんか。

ひそやかな生命力がある街並み

 そのようなゾーンですから繁栄していないと思いきや、なかなかどうしてにぎわっています。

 どういうわけかこの周辺地域の商店街は、王子銀座、梶原仲銀座、梶原銀座、上中銀座という名前ばかりで、まるで「銀座」を名乗るのを好んでいるようです。さらに西ケ原銀座、染井銀座、霜降銀座と、銀座はずっと続いています。

上中銀座の入り口付近の様子(画像:(C)Google)



 実際、既に商店は少なくなっていますが上中里2丁目には現役の銭湯があり、今なおいくつかの個人商店がシャッターを開けています。街にひそやかな生命力がある、それが上中里の魅力なのです。

結局、何があったのか

 そんな街の名所ともいえる「三角形」にあったのは、なんの変哲もない踏切と陸橋でした。

「三角形」付近の様子(画像:(C)Google)

 地図ではものすごく鋭角になっているように見えるのですが、実際はそこまでとがっていません。なにか名所のようなことを示すものもなく、単に日常の風景が広がっているだけでした。

 筆者はこれまでも地図上で気になるポイントを訪問してきましたが、大抵はほぼ何もありませんでした。とりわけ、川の流れで飛び地になっているような場所は、どこが境界なのかわからない河原があるだけなのですが、それでも確認せずにはいられません。

 また境界線が複雑に入り組んだ場所、なぜか市街地に突如現れる公園など「アヤシゲな地帯」は、日本はもちろん世界のあちこちにあります。

 田畑で明確にわかれていたところに街が作られ境界線がわからなくなった、あるいは河川や水路の流路が変更され、雑草しか生えていない向こう岸の一部だけが取り残されたなどなどなど。土地には必ず歴史があるのです。

 冒頭で書いた、東京都と埼玉県が1本のホームに入り組んだ駅とは西武池袋線の秋津駅で、一本のホームが東京都清瀬市、埼玉県所沢市、そして東京都東村山市に別れています。

「なんでこんな土地になったのか」

 ちなみに、これが国レベルになるともっと複雑です。

 吉田一郎さんの著書『世界飛び地大全』(角川学芸出版)では、飛び地を中心に世界の「アヤシゲな地帯」が収録されています。

吉田一郎さんの『世界飛び地大全』(画像:角川学芸出版)



 今回の「三角形」のように、「なんで、こんな土地になってしまったのだろう」という場所は誰だって興味を持つと思うのです。

 ちなみに今もっとも気になっているのは、モルドバ共和国の海まであと900mくらいなのに、海岸線だけウクライナ領になっているところです。

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