恋人なし、友達少なめ、職場なし……孤独にむせび泣いた私は、東京で「居場所」が欲しかった【連載】東京・居場所さがし(1)
2020年1月5日
ライフ約1400万人もの人が住んでいるのに、ほとんどの人と交わることのない街・東京は、孤独を感じやすい街といえるでしょう。たったひとりで暮らすこの大都市で、自分の居場所をいかにして見つけるか。漫画家でイラストレーターのいしいまきさんも、在宅業務という仕事柄「ひとりぼっち」を感じやすいひとりなのだと言います。
気づいたら、1か月も人としゃべっていない!
「ああ……もう1か月以上人としゃべってない……」
上京して4か月、2018年の暮れのことでした。
厳密に言えば宅配の人やコンビニの店員とはしゃべっているのです。ただ、温かみのある「人間同士の会話」をしていないことに気づきました。
私(いしいまき。漫画家、イラストレーター)が鹿児島から上京してきたのは2018年8月、35歳のとき。普段は主に自宅でひとり、エッセー漫画や実用書の漫画を描く仕事をしています。
上京前からちょくちょく東京に行ってはイベントに出たり同業者の飲み会に参加したりしていたので、友達はそれなりにいました。「上京したらたまにしか会えなかった友達にたくさん会える」と期待していたのですが……、蓋(ふた)を開けてみると、想像してた状況とはだいぶ違っていたのです。
その理由は、結婚と出産。30代半ばともなれば、数年前まで独身だった友人たちも家庭を持ち日々忙しく過ごしています。
上京した当初はそんな友達たちと会っていたりもしていたのですが、一方の私は独身・ひとり暮らし。夫、義理の両親、子ども、ママ友……彼女たちの口から出てくる単語すべてが、未知の世界の話です。
普段は「独身よりも既婚の方がエライという価値観」に疑問を持っているものの、実際には「毎日の仕事に加えて、家事や子育てに奮闘している友人の話を優先しなければ人でなしである」という考えに憑りつかれてしまい、気づけば延々と笑顔で友達の愚痴を聞いてしまうのでした。

毎回そんな感じではやはり疲れてしまいます。私はだんだん友達に会わなくなっていきました。折しも仕事が忙しくなってきたころだったため、会員制交流サイト(SNS)で「仕事が忙しい」とつぶやき「決して会いたくないからではない」という雰囲気をかもし出しつつ、人間世界のしがらみから距離を置いたのでした。
この「独身と既婚(特に子どもあり)の友情問題」はなかなか難しいテーマだと思いますが、経済状況も忙しさも変わっていくなかで疎遠になってしまうのは自然なこと。無理して一緒の時間を過ごさなくても、友達なら状況が変わればまた自然と会う頻度が増えていくだろうと想像していました。

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