本気でハマり始めた人たちに薦めたい「東京ラグビー 生観戦ガイド」

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本気でハマり始めた人たちに薦めたい「東京ラグビー 生観戦ガイド」

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冨田格

ライター、編集者

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先日のW杯でラグビーの「にわかファン」になった人たちに向け、ライターで編集者の冨田格さんがラグビーのさらなる魅力について解説します。

観戦のハードルが高いのはルールにあった

 2019年9月20日(金)に開幕。それから7週間、すっかり日本中を熱狂の渦に包み込んだラグビーワールドカップ2019日本大会(以下、W杯)も南アフリカの優勝で幕を閉じました。その盛り上がりぶりは数字からも明らかです。

 日本代表の試合中継の平均視聴率は、

・9月20日(金):ロシア戦 18.3%
・9月28日(土):アイルランド戦 22.5%
・10月5日(土):サモア戦 32.8%
・10月13日(日):スコットランド戦 39.2%
・10月20日(日):南アフリカ戦 41.6%

 まさに「爆上がり」という言葉がぴったりくるほど、関心の高まり方がわかります。

W杯が行われた東京スタジアムにて(画像:冨田格)



 試合チケットは順調に売れていたとはいえ、W杯開幕直前になってもラグビー熱はあまり感じられませんでした。その不安を覆すほどの盛り上がりを見せたのは、日本代表の活躍ぶりを見て初めてラグビーに興味を持った「にわかファン」が激増したことに尽きるでしょう。

 この「にわかファン」という言葉は、同じくラグビー関連の「ONE TEAM」「ジャッカル」「4年に一度じゃない、一生に一度だ」「笑わない男」とともに流行語大賞の候補になるほど浸透しました。

 W杯でラグビーを初めて見るようになったという人と、この盛り上がりについて話したときに言われたことがとても印象に残っています。

「毎週末に日本代表戦をテレビで見ていたら、わかりにくいと思っていたラグビーのルールがわかるようになってきたんだよね。そうなるとテレビ観戦がすごく楽しくなってさあ」

 ラグビー観戦のハードルが高い理由は、ルールがわかりづらいことでした。しかし短期間に続けてテレビ観戦すれば、自然とルールもわかってくるものです。W杯の地上波実況放送も、ビギナーに理解できるようわかり易い解説を心がけていたのも功を奏したのでしょう。

 ルールがわかって面白くなってきた「にわかファン」は、やっぱりラグビーの試合を見たいものですよね。

「対抗戦」と「リーグ戦」からなる関東大学ラグビー

 実はラグビーは秋から冬、春にかけてがシーズン本番。「ラグビーロス」なんて感じている暇もないほど、東京は生観戦できる機会がたくさんあります。W杯効果は絶大で、すでに完売となっている試合もありますが、今からでも十分楽しめる、東京ラグビー生観戦ガイドをお届けします。

 これから東京でラグビー生観戦できるものは大きく分けて、大学・社会人・スーパーラグビーの3種類があります。それぞれの魅力をご紹介していきましょう。

 日本ラグビーの構造は少々複雑で、にわかファンにはわかりづらいのが難点です。大学・社会人・スーパーラグビーをざっくりと解説します。

1.関東大学ラグビーにはふたつのグループがある
 関東の大学ラグビーは伝統校16校で構成される「対抗戦」グループと、新興校47校で構成される「リーグ戦」グループにわかれています。

 対抗戦グループはAグループ8校・Bグループ8校が属しており、毎年Aグループの下位2校とBグループの上位2校の間で12月に入替戦が行われます。今シーズンの対抗戦Aグループ8校は次のとおりです(表記は2018年のシーズンの勝敗順)。

・帝京大
・早稲田大
・慶応義塾大
・明治大
・筑波大
・青山学院大
・日本体育大
・成蹊大

 新興校47校で構成されるリーグ戦グループは、1~5部に47校が属しており、各部の上位2校と下位2校の間で入替戦が行われます。2018年のシーズンのリーグ戦1部8校は次のとおりです(表記は2018年のシーズンの勝敗順)

・東海大
・大東文化
・流通経済大
・法政大
・日大
・拓殖大
・専修大
・中央大

 対抗戦・リーグ戦ともに毎年8月末から試合が行われています。東京ではAグループ・1部の試合はともに、秩父宮ラグビー場(港区北青山)と江戸川区陸上競技場(江戸川区清新町)で開催されます。

 ラグビー人気の盛り上がりを反映してか、チケットは例年と比較にならないほど売れています。1980年代に国立競技場を満員にしていた伝統の早明戦(12月1日)、早慶戦(11月23日)はすでに完売です。

今期のチケット争奪戦に出遅れても大丈夫

 確かに「大学ラグビーといえば早明戦」というイメージがあるのはわかります。しかし大学ラグビーの楽しみは、次の日本代表候補になりそうな新鋭を見つけることでもあります。

 その観点から注目すべきは帝京大学です。W杯の日本代表メンバーで帝京大学出身は堀江翔太、坂手淳史、姫野和樹、流大、松田力也、中村亮士の6人と群を抜いて多いのです。11月30日(土)に秩父宮ラグビー場で開催される、帝京大vs慶応義塾大のチケットはまだ購入できます。

板橋区の帝京大学のキャンパス外観(画像:(C)Google)



 対抗戦・リーグ戦が終了した後は、大学日本一を決定する「全国大学ラグビーフットボール選手権大会」です。対抗戦Aグループの上位4校、リーグ戦1部の上位3校に、関西大学Aリーグ上位4校、九州学生リーグ1部1位校、東海・北陸・中部・四国代表1校、東北・北海道代表1校が参加します。

 東京では12月21日(土)の準々決勝2試合、2020年1月2日(木)の準決勝2試合が秩父宮ラグビー場で開催、決勝はラグビー人気の盛り上がりを反映して新国立競技場(新宿区霞ヶ丘町)で開催されると発表されました。準々決勝はまだチケットが購入できますし、準決勝と決勝のチケットはこれからの発売なので、購入できるチャンスは大いにあります。

 どの大学が準々決勝まで勝ち上がってくるのかはわかりません。しかしにわかファンの皆さんはW杯で、決勝トーナメントに「推し」の国が出ていなくても楽しめることを実感していますよね。全国の大学トップを争う選手権大会も、上位校同士の試合はどのチームの戦いになろうとも白熱すること確実です。

 もし今期のチケット争奪戦に出遅れ、お目当ての大学の試合チケットが手に入らなかったなら春まで待ちましょう。対抗戦とリーグ戦の上位校18チームが参加する関東大学春季大会が4~6月にかけて開催されます。各グループの上位校同士の試合ですから、この大会もまた白熱間違いなしです。

トップリーグは2020年1月12日開幕

2.日本代表選手や海外の有名選手が揃った社会人トップリーグ
 すっかりお馴染みになった日本代表選手や、W杯に出場した海外選手が所属しているのが日本の社会人リーグです。日本の社会人リーグは、ジャパンラグビートップリーグを頂点として、ジャパンラグビートップチャレンジリーグ(2部)、トップイーストリーグ(3部・4部)、社会人リーグ(5部~)となっています。

 ほとんどの日本代表選手はトップリーグに所属していますが、トンプソン・ルーク選手(近鉄ライナーズ)、ウィリアム・トゥポウ選手(コカコーラレッドスパークス)はチャレンジリーグに所属しています。

日本代表選手の所属社会人チーム一覧。チーム名が白文字のコカコーラレッドスパークスと近鉄ライナーズは今季はトップチャレンジリーグに属しています。(画像:冨田格)



 トップリーグは2020年1月12日(火)開幕、5月9日(土)まで全15節に分けて開催されます。東京では秩父宮ラグビー場を中心に、夢の島競技場(江東区夢の島)、町田市立陸上競技場(町田市野津田町)が使用されます。現在は3月29日(日)開催の10節までのチケットが発売中です。

 秩父宮ラグビー場に関しては、

・第1節:1月12日(日)
日野レッドドルフィンズvsNTTコミュニケーションズ シャイニングアークス、東芝ブレイブルーパスvsサントリーサンゴリアス

・第2節:1月18日(日)
三菱重工相模原ダイナボアーズvsキヤノンイーグルス
サントリーサンゴリアスvsNTTコミュニケーションズ シャイニングアークス

・第10節:3月28日(日)
パナソニック ワイルドナイツvsホンダヒート
サントリーサンゴリアスvsクボタスピアーズ

 この3試合は完売していますが、第3~第9節の7試合はまだ発売中です。4月以降の第11~第15節のチケットはまだ発売されていません。人気チームの試合チケットは発売直後に完売する可能性があるので、早めに購入されることをお勧めします。

3.海外の強豪と戦うスーパーラグビー「サンウルブズ」
 日本のチームが海外の強豪チームと戦う、W杯に最も近い雰囲気を味わえるのが「サンウルブズ」です。2015年のW杯で日本代表が南アフリカに勝利するという奇跡を起こしたのち、2019年のW杯に向けて日本代表強化を目的にして設立された、日本唯一のプロラグビーチームです。

2020年、サンウルブズは有終の美を飾れるか

 サンウルブズは、南半球のオーストラリア、ニュージーランド、南アフリカ共和国、アルゼンチンのプロチームからなるラグビーユニオンの競技会「スーパーラグビー」に2016年から参加しています。サンウルブズの日本でのホームスタジアムは秩父宮ラグビー場。2020年はオーストラリア、ニュージーランド、南アフリカのプロチームが来日して秩父宮ラグビー場で5試合の開催が決定しています。

サンウルブズの公式サイト(画像:サンウルブズ)



 サンウルブズの選手の大半はトップリーグとの掛け持ちでプレーしています。日本代表はサンウルブズで経験を積んだ選手が多く選ばれており、W杯での日本の大躍進にも大きな役割を果たしてきました。

 残念なことにサンウルブズは2020年を最後にスーパーラグビーから除外されることが決まっています。つまり、2020年がスーパーラグビーが南半球の強豪チームとサンウルブズが戦う姿を見られる最後の機会になってしまうということです。

 とはいえ、海外のプロチームとの国際試合を楽しめる機会があるわけですから、これを楽しまない手はありません。現時点で2020年のスコッド(ラグビーの選手団)は発表になっていませんが、2023年の次回W杯に向けて期待の選手が参加する可能性が高いのではないかと予測しています。

 2020年のサンウルブズは、2月15日(土)~5月16日(土)にかけて秩父宮ラグビー場で5試合行います。期間的にトップリーグとも重なっているので、国内チーム同士の試合と国際試合を同時期に観戦できるまたとないチャンスです。サンウルブズの試合チケット発売は、12月中旬以降です。

多様性に満ちた懐の深いラグビーの魅力

 大学、社会人、サンウルブズと、東京ではこれからラグビー生観戦のチャンスがたくさんあることをご理解いただけたでしょうか。さらに2020年夏のTOKYO2020では7人制ラグビーや車いすラグビーで、日本代表の活躍が期待されています。

 また2021年には女子ラグビーのW杯がニュージーランドで開催されます。女子ラグビーの日本代表も頑張っています。同年には日本ラグビーのプロリーグ化も計画されています。W杯が終わっても、ラグビーのトピックが途絶えることはありません。

 W杯で初めてラグビーの魅力を知ったにわかファンの人たちは、これまでずっとラグビーを応援してきたオールドファンに邪険にされず、気持ち良く受け入れてもらえる懐の深さを実感したと思います。

 各国代表を見ても、生まれも人種も国籍もさまざまな選手が「ONE TEAM」としてナショナルアンセムを歌い、力を合わせて戦っています。ゲイを公表しているレフェリーのナイジェル・オーウェンズ氏がセクシュアリティを理由に蔑まれることはなく、W杯の決勝トーナメントの審判に選ばれリスペクトされているのも、ラグビーの一面です。

 純粋にゲームとして面白いことに加え、ダイバーシティ&インクルージョン(多様性と社会的包摂)をことさら意識することなく自然に実践している、懐の広い魅力を携えているスポーツ、ラグビー。

 その魅力に気づいたらにわかファンで終わだけでなく、さらに一歩踏み出して「ラグビー沼」にハマってみませんか? 「ラグビー沼」にハマればハマるほど、日本代表の選手たちがすべてを犠牲にし、ラグビーに集中し続けた気持ちを理解できるはずです。

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