実は東京最強の子育てタウン? 特売生鮮品も、巨大アスレチックも徒歩圏内 江東区・大島駅周辺【連載】東京商店街リサーチ(3)

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実は東京最強の子育てタウン? 特売生鮮品も、巨大アスレチックも徒歩圏内 江東区・大島駅周辺【連載】東京商店街リサーチ(3)

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荒井禎雄

フリーライター、放送ディレクター

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フリーライターの荒井禎雄さんによる連載「東京商店街リサーチ」。23区内の商店街とその周辺情報から、エリアの隠れた魅力を掘り起こします。3回目となる今回は江東区の大島駅周辺エリアの商店街です。

川に四方を囲まれた、「結界」の中の街

 世代によって抱くイメージがまったく異なる街、江東区大島。筆者のような昭和の人間ならば「マンモス団地がある街」というイメージが強いのですが、近ごろはインドを中心とした外国人の流入が増えて、「スパイス料理の聖地」的な見方をしている人も多いと聞きます。

 実際に訪れてみると、昔ながらの商店街がある一方でマンモス団地の中にも商業スペースが栄えていたりと独特な街並みを形成していて、なかなか単純ではなさそうです。この大島という街は、果たしてどのような特徴を持っているのでしょうか。

一度見たら忘れられない中央銀座のシンボル。思わず頭にチューリップ台なんて単語が浮かぶ(画像:荒井禎雄)



●立地
 大島地区は四方を川に囲まれています。北は堅川、東は荒川と旧中川、南には小名木川があり、西には横十間川と、まるで結界の中にあるかのよう。以前紹介した砂町銀座と立地が似ており、実際に北砂とは川を挟んで隣町の関係にあります。ただし大島の方が電車も道路も利便性が高く交通事情は良好です。

 いまいちマイナー感のある地名ではありますが、1600年代に村が作られたという記録が残っており、実は歴史のある街でもあります。

 ただ、今の形の大島となったのは1970年代に大規模な団地建設が行われてからでしょう。この団地の中でも特に大きな棟は、西大島駅直近の4丁目と、大島駅直近の6丁目にあり、この2か所だけでも約1万世帯が住んでいます(大島1~9丁目までの合計は約3万3000世帯、約6万3000人)。

●各商店街の特徴
 大島地区の商店街は、大きく分けてふたつのタイプがあります。ひとつは大島駅の東側にあるサンロード中の橋に代表される昔ながらの「一本道商店街」。もうひとつは団地の1階にさまざまな店が詰め込まれて商店街を形成している「団地内商店街」です。

生鮮品のお買い得さは、都内指折り

〇サンロード中の橋
 1918(大正7)年から続く歴史ある商店街。都営新宿駅線大島駅のA6出口を出て東に3分ほど歩くと入口が見えてきます。直線約300mの通りは新大橋通りから堅川・旧千葉街道まで続いており、さらに北上すると京葉道路・亀戸地区に出ます。

 業種は魚屋が3店あり、八百屋・青果店はその倍あるという充実ぶり。純然たる精肉店がなかったのが気になりましたが、お肉は商店街内にあるスーパーが一手に担っていると思われます。

 またお惣菜やパン屋も充実していて、予約待ちで何週間も待たないと買えない薄皮あんぱんで有名な「メイカセブン」は、この商店街の新大橋通り寄りにあります。

生活型商店街として、今でも現役バリバリなサンロード中の橋(画像:荒井禎雄)



 価格帯については、生鮮品が驚くほど安く、特に八百屋の叩き売りには目を見張るものが。レギュラーの仕入れ商品以外にも、日替わりで「わけあり商品」が格安で売られていることもあって、間違いなく都内でも特に物価の安い商店街だと言えるでしょう。充実度を維持しているだけに人通りもあり、住環境によっては亀戸方面からここまで買い物に来るという選択も決して悪くありません。

〇大島中央銀座
 大昔のパチンコ屋のネオン看板かのような入口がとても印象的な商店街。砂町銀座とまったく同じで、明治通り(西大島)と丸八通り(大島)を東西に繋ぐ道に「大島中央銀座通り」と名前が付けられています。

 しかし近隣住民の生活を支える「生活型商店街」としては役目を終えてしまっていて、生鮮を扱う店はごくわずかです。今は飲食店通りとなっており、南インド料理など気になるお店が点在しています。

「本気のパキスタン料理」ってどんな味?

〇団地内商店街
 代表的な物は西大島駅南側のダイエー裏手にある4丁目団地と、大島駅のすぐ西にある6丁目団地にあります。このふたつの団地にはさまざまな店が入っており、スーパーや飲食店以外にクリニックや保育園など、団地全体で生活に欠かせない重要な役割を担っています。

 4丁目団地には激安スーパーで有名な「Big-A」も店を構えていて、すぐ近くの新大橋通り沿いにあるダイエーと組み合わせれば買い物環境は良好。

 また、個人的には都内でも有数のハラルレストラン「ハビビ」の存在が気になります。ここは 「本気のパキスタン料理」をお値打ち価格で楽しめるお店で、スパイス好きには貴重な存在と言えるでしょう。

4丁目団地にある「ハビビ」は、ビリヤニやパキスタン系の店でしか食べられない、めずらしいカレーが人気(画像:荒井禎雄)

 6丁目団地には、買い物拠点として「ピーコック」や「ローソンストア100」があり、それ以外にも「サイゼリア」や地元民に大評判のパン屋さんなども。子ども達が集まる公園やカードショップもあり、ちびっ子たちの声が絶えない明るく開放的な雰囲気があります。

親子連れは必見、大島の巨大公園群

●見どころ/遊び
 大島地区はモンスター団地の街らしく、家族層が住む事を前提に街が作られています。そのため各エリアに大小さまざまな公園があるのですが、なかでも際立って存在感があるのが「大島八丁目公園」です。

 大島駅の南東、上で紹介した「サンロード中の橋」のちょうど南に位置しています。この公園のメイン遊具はタコをモチーフにした「ピンク色の謎の物体」。ほかでは見たことのない、オリジナリティが暴走したウルトラ怪獣か前衛芸術か、といったフォルムです。これが子どもには大人気で、アングラ臭の漂うタコ型遊具には常にちびっ子たちがしがみついています。

 さらに特筆すべきは東大島駅周辺の巨大公園群。旧中川および荒川に接した広大な敷地のほとんどが公園として整備されています。

 そのなかの「大島小松川公園」には都内でも一、二を争う巨大アスレチックがあり、平日・休日問わず子ども連れでにぎわいます。この一帯の公園はお花見やバーベキューにも適しているので、知っておくと生活が豊かになること間違いナシ。

東大島の小松川公園にある巨大アスレチック。長いローラーすべり台も付いており、大人も童心に帰る場所だ(画像:荒井禎雄)



 ちなみに、東大島とは逆方向の横十間川を渡った西側には恩賜猿江公園があり、こちらも子どもとの外遊びに1年中活躍してくれる巨大公園。子を持つ家族層にとって素晴らしい条件が整っていると言えるでしょう。

●交通機関
 大島地区の主な交通機関は都営地下鉄新宿線で、西から西大島駅・大島駅・東大島駅と3つの駅があります。

 東大島駅付近には東京都交通局の大島庁舎が、さらにその北側には都営新宿線の車両基地が置かれるなど、都営地下鉄の重要拠点となっています。このため大島駅を始発とする電車が出ていて、通勤通学時にゆっくり座れるというメリットも。

 また大道路に恵まれているだけにバスも使いやすく、亀戸・錦糸町などJR総武線の駅や、東陽町・門前仲町といった東西線、大江戸線の駅など各方面へのアクセスも良好です。これらを組み合わせて使えば都内全域をかなりスムーズに移動することができる好立地でもあります。

気になる家賃は……

●家賃相場
 大島地区を新宿線の駅ごとに3エリアに分けると、各エリアの賃貸物件の家賃の平均値は以下のようになります。

・西大島駅:8.7万円
・大島駅:8.4万円
・東大島駅:7.7万円

 大島地区はマンモス団地の街らしくUR物件が多く、家賃の平均価格はそこまで安くありません。しかし面積という点ではゆったりとしており、URだけに礼金や仲介手数料がないなど、総合的に見ると安上がりになる可能性も高くなっています。

 次に、物件の部屋数をもとに家賃相場を見てみましょう(筆者調べ)。

・西大島駅
1DK:9.4万円
2DK:11万円
3LDK:18.3万円

・大島駅
1DK:8.4万円
2DK:10.5万円
3LDK:18.5万円

・東大島駅
1DK:7.8万円
2DK:8.8万円
3DK:15.7万円

 先に述べたように家賃相場だけ見ると少々お高いという印象でしょうか。ただ、よくよく調べてみると、1DKでも40平方メートル以上あるような広めの間取りの物件が多く、こうした部屋には10万円以上の家賃が付けられているため全体の平均値を引き上げてしまっているようです。築浅の物件が少なくないことも相まって、少々お高めの平均値になってしまっているようです。

 そうしたケースを除いて集計すれば、30平方メートル前後でおおよそ7~8万円。23区内では我慢どころな家賃の部屋が見つかります。特徴的なのは2DK物件で、こちらは35~45平方メートルで9~10万円未満とお手頃な物件が目立っています。

大島地区では団地の1階部分を商店街化している場所が目立つ。こちらは4丁目団地(画像:荒井禎雄)



 せっかく大島地区に住むならUR物件を狙いたいところですが、URは保証人や手数料などが必要ないぶん本人への審査が厳しく、借りやすい人と借りにくい人とがハッキリ分かれます。あいかわらず人気も高いようで、空き物件に出合えるか否かは実際のところ運任せ。でも、もし運よく物件が見つかって審査を通ったら、子育て世帯にはさまざまな割引プランなどのメリットも付いてきます。

 UR物件に限った家賃相場をまとめてみました。

・大島4丁目(西大島駅):7.8万円(1DK/約37平方メートル)~11.6万円(2LDK/約54平方メートル)
・大島6丁目(大島駅):7.2万円(1K/約35平方メートル)~14.2万円(3DK/約65平方メートル)
・大島7丁目(東大島駅):6.2万円(1DK/約33平方メートル)~10万円(2DK/約50平方メートル)
・東大島駅前(東大島駅):10万円(2DK/約50平方メートル)~15万円(3DK/約70平方メートル)

 礼金ナシ・保証人ナシ・更新料ナシというURの特徴を踏まえると、長く住むには最適だといえそうです。

凶悪犯罪は、ほぼ起きない

●犯罪発生率
 長く住むなら気になるのは、やっぱり治安の良し悪しです。警視庁が公開している「犯罪情報マップ」というサイトを参考に、大島地区の2018年度の犯罪発生件数を見てみましょう。

・全刑法犯
大島1、3、9丁目:1~25件
大島2、4、5、6、7、8丁目:26~67件

・侵入窃盗
大島1、3、4丁目:1~2件
大島8丁目:6~12件

・車上ねらい
大島2、5丁目:4~6件
大島6、7、8丁目:2~3件

・自転車盗難
大島4、6丁目:24~49件
大島5、7、8、9丁目:10~23件

・粗暴犯
大島6丁目:5~13件

 都内のほかの地域と比べても犯罪発生件数は少なく、凶悪な犯罪もほとんど起きていません。平和な街であるといえそうです。

 全刑法犯で見た場合の数字は各エリアで年間数十件という規模になりますが、内訳ではほとんどが自転車盗難などで、駅のある4丁目や6丁目に集中しています。

サンロード中の橋にて。キズ物の梨がひと山300円の投げ売り。糖度が非常に高く、そもそもはブランド梨なのだそう(画像:荒井禎雄)

 ほかに目立つところというと、2018年の1年間に限っては8丁目で侵入窃盗が約10件ほど起きていますが、これは一戸建てが集中しているエリアだからだと考えられます。しかも2019年になってからは1~2件と極端に低下していることから、2018年はたまたま不届き者が8丁目地区を荒らし回っていたただけだと推察することもできます。普段は自転車盗難くらいしか犯罪が起きないのんびりした街だと評価できます。

子連れ家族にはメリットだらけ

●メリット・デメリット
 大島地区は向き不向きがハッキリしており、子を持つ家族層からすれば実に理想的な街です。買い物環境は商店街とスーパーとで売り場を選べ、生鮮品の安さから生活にかかるお金を安く抑えられ、賃貸物件は広めでゆったり。なおかつ近隣には子どもを一日中遊ばせられる大きな公園がいくつもあり、加えて治安も良好です。

 UR物件が空き部屋の奪い合いになってしまう点だけは仕方ありませんが、それを除けば住環境に特に大きな欠点は見つかりません。

西大島駅から程近く、新大橋通沿り沿いに実に趣きのある羅漢寺が(画像:荒井禎雄)



 ただし、これが単身者や遊びたい盛りの若者となると話が変わります。繁華街と呼べる街が亀戸まで出ないとないため、夜遅くになるとコンビニや一部のファストフード店くらいしか開いていません。そういった層にとっての遊び場も少なく、非常に地味で退屈な街だと感じてしまうでしょう。

 よって、大島地区は落ち着いた家族層が住むには抜群、それ以外にとっては微妙という極端な評価になります。引っ越しを考えている子育て中の夫婦ならば、この辺りで物件を探してみても損はないでしょう。

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