東京人との相性ばっちり? もっとも敷居の低いアウトドア「チェアリング」とは何か

  • ライフ
東京人との相性ばっちり? もっとも敷居の低いアウトドア「チェアリング」とは何か

\ この記事を書いた人 /

パリッコのプロフィール画像

パリッコ

酒場ライター

ライターページへ

酒場ライターのパリッコさんが近年ハマっているという「チェアリング」。いったいどのようなことを行うのでしょうか。パリッコさんが解説します。

チェアリングとは何か

 僕の趣味のひとつに「チェアリング」があります。

「チェアリング」とは、アウトドア用の折りたたみチェアひとつだけを持って街へ出て、水辺や公園の景色の良い場所を見つけ、ひとときそこに座って過ごすだけという、もっとも敷居の低いアウトドアアクティビティのこと。

お台場の街並みを眺めながらチェアリング(画像:パリッコ)



 と、いきなりもともとあるもののように説明を始めてしまいましたが、実はこのチェアリング、僕と友人のライター・スズキナオさんのふたりで考えた言葉です。

 ナオさんも僕もお酒が好きで、「こんな飲みかたをしてみたら楽しいんじゃないか?」という実験、というか、遊びをよくやっているのですが、そのひとつとしてナオさんに誘われ、いざやってみるとものすごく楽しい。

 そこで「チェアリング」と名前をつけ、面白半分に雑誌やウェブ記事の企画として何度か紹介しました。するとなんと、本当に真似をしてくれる人が増え、2019年3月にはナオさんと共著で『チェアリング入門』なる本まで出版させてもらうことになってしまいまして、その状況には自分たちがいちばん驚いているほどです。

 チェアリング中にどう過ごすのも自由なのですが、僕らはたいていお酒を飲むので、もちろんマナー問題には細心の注意を払います。騒がない、汚さないはもちろん、街にはお酒を飲んでいる人間を見るだけでも嫌な人もいる。そういう人の目に触れず、周囲に威圧感を与えるようなことのない場所選びをすることは、もっとも注意しなければいけないことでしょう。

 また、キャンプやバーベキューとは違い、どこまでも身軽であることも魅力のひとつ。ここだと思う場所でしばらく過ごしたら、またちょっと移動して座る、なんてこともできるのです。なので、装備は極力身軽に。お酒やおつまみも、現地のコンビニなどで調達するくらいの気持ちがいいし、トイレが近くにあるのを確認しておくことも大切です。

チェアリングの効果

 ここまで読んでもらえたとしても、「何それ?街なかにあるベンチでよくない?」という方が大半なことはわかっています。ですが、もしほんの少しだけでも興味を持たれた方は、例えば家のベランダでもいいので、ちょっとやってみてほしい。

 普段から知っている場所が、ほんの数十センチ視線が落ちて視界が変わるだけで、そしてゆったりと体を預けられる椅子にのんびり腰掛けてみるだけで、驚くほど新鮮に感じられるはずです。やがて、ほほをなでる風の心地よさ、鳥の声、空を流れる雲や、落ちてゆく夕日、そういう事象だけが心の中を支配するようになり、日常の些細な悩みごとがどうでもよくなってきます。頭の中がクリアになり、まるで心が刻一刻と浄化されてゆくよう。

 大げさだと思われるでしょうが、体験者は語ります(やってみたけどつまんなかったという人がいたらすみません。それはもう、体質的に合わないのでしょう)。公園の中を椅子を持って場所を探しながらウロウロしているときなど、若干の「何やってるんだ感」はあるし、人の目だって気になる。しかし、いざ座った瞬間に、一瞬にしてよけいな情報がシャットアウトされる。この感覚は、ハマるとクセになりますよ。

東京で忙しく過ごす人たちにこそ

 東京に住んでいて、普段あまり自然に触れる機会がない。落ち着いたらキャンプにでも出かけてリフレッシュしたい! という人は多いのではないでしょうか? そんなときこそチェアリングですよ。

 先ほども言ったように、それこそ家のベランダでもいい。近所にちょっと大きめの公園があればなおけっこう。え? 広い河川敷のある川がある? それ、チェアリストとして最高に恵まれた環境ですよ!

ベンチタイプの折りたたみチェアも進化している(画像:パリッコ)



 具体的にいうと、例えば東京都北区から東京湾に注ぐ隅田川。この両岸約47㎞のうち、約28㎞の区間(2019年現在)で整備された親水施設「隅田川テラス」は、都内で気軽に水辺チェアリングができるスポット。

 滔々(とうとう)と流れる川のゆらめく水面をじっと眺め、行き交う遊覧船や、川の向こうにそびえ立つスカイツリーなんかを借景に、のんびりとビールでも飲んでいると、この世にこれ以上の贅沢はあるだろうか?という気分になってきます。

 日々の仕事や生活にちょっと疲れ気味だという社会人にこそ、週に1時間、無理やりにでもチェアリングする時間を作ることは、精神衛生上有益なことだと、個人的に信じています。

 会社が許してくれるなら職場に椅子を置いておいて、昼休みにチェアリングするのもいい。予定のぽっかりと空いた休日、「今日はだらだらしてて終わっちゃった~」と後悔することもあるでしょうが、ほんのちょっとでも屋外で椅子に座ったなら、それはもう「チェアリングをした日」になってしまう。

 あと僕、会社の会議をたまにチェアリングでやってみるのはどうか? と、けっこう本気で思っているんです。広い公園でも、屋上でも、なんならいつもの会議室で、椅子を折りたたみチェアに変えるだけでもいい。普段とは違う環境によって脳が刺激され、斬新なアイデアが飛び出すこと間違いなしなんじゃないでしょうか。

 もちろんどこでやっても楽しいチェアリング。ですが、以上のような理由から、東京で日々を忙しく過ごす人々にこそ、おすすめのアクティビティなんじゃないかなーと思ったりしています。

関連記事