コロナ禍で『地球の歩き方』がピンチ? 生き残りを賭けた“背表紙”に6.7万人「切ない」「ぜったい応援する」
1979(昭和54)年の創刊以来、海外旅行者にとってのバイブルであり続けたガイドブック『地球の歩き方』。その一大シリーズが、“生き残り”を賭けてさまざまな取り組みを模索しています。ツイッターにアップされた投稿を基に、新型コロナ禍におけるガイドブックや旅行の意義についてを探りました。 2020年9月「東京」版を発行し話題に『地球の歩き方』。 世界各地を丹念に歩き、取材し、海外旅行の際のお役立ち情報から各国・地域の特徴を細部にわたってまとめたガイドブック。旅行好きでなくても知っている、200タイトル以上を誇る一大シリーズです。 しかし2020年初頭からの新型コロナウイルス感染拡大により、旅行のみならず海外渡航はほぼ不可能な状態に。 同年9月、『地球の歩き方』はシリーズ初となる国内都市にフォーカスした「東京」版を発売。もともとオリンピック開催を見越して制作が進められていたものですが、これまでにない取り組みに大きな注目を集めました。 歩き方ファン「思わず買ってしまう」 そんな『地球の歩き方』シリーズが並ぶ、とある書店の一角。その背表紙を見た「歩き方ファン」のひとりがこんなつぶやきをツイッターに投稿し、2021年8月12日16時半時点で6.7万いいね もの大反響を呼んでいます。 書店に並ぶ『地球の歩き方』。これまでのシリーズとは趣が異なる(画像:永山久徳さんのツイート)「顧客の大部分を失った『地球の歩き方』が本気で生き残ろうとしている。思わず買ってしまう」―― 投稿したのは、旅館経営などを手掛ける永山久徳さん(@h_nagayama)。 アップした画像に並ぶ『地球の歩き方』は、 ・世界のグルメ図鑑 ・世界の魅力的な奇岩と巨岩139選 ・世界の指導者図鑑 ・世界のすごい島300 ・世界なんでもランキング ・世界246の首都と主要都市 と、これまでの国・地域への旅行を前提とした内容展開とは趣を異にする、読んで楽しむ図鑑的要素の強い一群。海外旅行がままならない中、シリーズのあり方を模索する姿を垣間見ることができます。 「命の恩人です」感謝と応援の声が次々と「命の恩人です」感謝と応援の声が次々と このツイートを見た「歩き方ファン」たちはすぐさま反応。 「これは応援したい」 「書店に行ってみます」 「内容も普通に面白そう。買いたい」 と、寄せられたリプライ(返信)の数は1000件超。 さらに、長年の愛読者たちからのシリーズに対する感謝やねぎらい、存続を望むコメントも続々と集まっていて、さながら編集部に充てた寄せ書きのような様相を呈しています。 「仕事で数十か国以上の訪問経験があるけど、『地球の歩き方』はその国のイメージの大枠をつかむのに最適な教科書でした」 「ある国への個人旅行のとき、スリの手口や出没ポイントが詳しく書いてあって、とても助かりました」 「海外で財布を盗まれたとき、地球の歩き方に助けられました。クレジットカードの止め方から何から何まで書いてあって、本当に命の恩人です」…… 2021年8月8日(日)に閉幕した東京オリンピックの直後ということもあって、「オリンピックを機に世界を感じた子どもたちに読ませてあげてもよさそう」という提案をするユーザーもいました。 スマホが普及しても「歩き方」は手放せない ツイートを投稿した永山さん自身、学生時代から海外旅行が好きで『地球の歩き方』は常に必携アイテムであり続けたと言います。その習慣はスマートフォンを持ち歩くようになっても決して変わらなかったとか。 永山さんいわく、 「私も旅館を経営していますが、(コロナによって)インバウンド(外国人観光客による需要)が消失し、国内旅行も自粛ムードとなり、宿泊業以外の関連業種も壊滅的な打撃を受けました。この本棚を見たとき、『地球の歩き方』も海外旅行者が減り、新刊の出版にあたり相当の苦労があったのだろうなと推察し、思わずツイッターに投稿しました」。 2020年9月に発売されて話題を呼んだ『地球の歩き方 東京』(画像:ダイヤモンド・ビッグ社)『地球の歩き方』は現在、2020年の「東京」版と同時期に発売した「世界244の国と地域」を皮切りとする「旅の図鑑シリーズ」を精力的に発行していて、永山さんがアップした画像にも写っていた「世界の指導者図鑑」「世界の魅力的な奇岩と巨岩139選」などを2021年3月に発売。 そのほかダイヤモンド・ビッグ時代からの国内各地の神社を集めてめぐる「御朱印シリーズ」や、大手旅行代理店をコラボしたオンライン海外旅行体験などの新事業を積極的に展開しています。 8月12日(木)には「旅の図鑑シリーズ」の新刊「世界のすごい巨像」「世界のすごい城と宮殿333」が発売されました。 書籍を通して得られる発見、出会い書籍を通して得られる発見、出会い『地球の歩き方』サイト内に添えられているキャッチコピーは「一歩先の、感動の旅へ」。 行かなければ分からない感動や出会い、体験がある一方で、たとえ行かれなくても書物を通して想像力を養い、それによって見つけられる発見も十分にあり得ます。 旅行関連事業の苦境を知る永山さんは、 「思い通りに旅行ができない今、書籍やインターネットでイメージを膨らませるのは良い気晴らしになると思います。今回の投稿が、旅行のありがたさを再認識できるきっかけになったとしたらうれしいです」 と話しています。
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