特売品の叩き売りっぷりに仰天! そして飲兵衛も納得の名店も 江戸川区・小岩駅周辺【連載】東京商店街リサーチ(2)

フリーライターの荒井禎雄さんによる連載「東京商店街リサーチ」。23区内の商店街とその周辺情報から、エリアの隠れた魅力を掘り起こします。2回目となる今回は江戸川区の小岩駅南・駅北エリアの商店街です。


海路・陸路の要衝だった

 東京23区の中でも特に東に位置し、江戸川を挟んで千葉県市川市と隣接する江戸川区小岩。この街は住む地域によって、また利用者が何を求めるかによって、印象が大きく変わります。人によっては猥雑な歓楽街に見えるでしょうし、子育て向きの暮らしやすい街だという声も聞こえてきます。

小岩駅南口にあってフラワーロードと双璧の昭和通り商店街(画像:荒井禎雄)



 今回はこの「ひとによって語られ方が大きく変わる不思議な街・小岩」を、商店街を中心にご案内します。

●立地と歴史
 東京23区の東端にあって、西は中川・新中川、東は江戸川と、大きな川に囲まれています。その川の内側は、古い文献に名前が残る歴史ある土地が多く、鎌倉時代にはすでに河口の湊として栄えていたという記録があります。

 明治の鉄道時代に入ると、総武鉄道の駅として小岩駅が1899(明治32)年に開業し、以降ベッドタウンとして開発・発展が続いてきました。それは小岩駅の「乗車数」に表れており、小岩駅の乗車人数は1日に約6万6000人です。これは他路線や快速に乗り換えが出来ない中央総武線の駅としては第1位で、そのことからも大勢の人々が住んでいる街だとわかります。

 また道路の面からも、小岩駅を挟んで東西に走る蔵前橋通りと千葉街道(京葉道路から分岐)、駅の東側に南北に延びる柴又街道など、街と街を繋ぐ重要な道路も多く通っている地域です。千葉街道は昔に参勤交代で使われた道で、小岩一帯は歴史的に海路・陸路ともに要衝だったと言えます。

●小岩と商店街
 小岩は、古くから商店街の規模が大きい街としても知られて来ました。駅周辺は単純な造りではありません。駅の南側には直線1kmのフラワーロードをはじめ、昭和通りやサンロードなど主だった通りのほとんどが大きな商店街となっており、総武線の高架下もショピングセンター「シャポー」や飲食テナントとして活用されています。

小岩に大規模な商店街ができたワケ

 それらに加えて、北側にも碁盤の目のように飲食店街が広がっており、駅から離れてもお店がチラホラ点在し続け、柴又街道を通じて徒歩約20分の距離にある京成小岩駅まで「商店街っぽい」通りが繋がっています。

 その京成小岩駅の周辺には、葛飾区との境に千代田通り商店街という趣きのある商店街があり、小岩という街全体が「商店街の連合体」といった様相になっています。

京成小岩駅の北側、葛飾区との境界になっている千代田通り商店街(画像:荒井禎雄)



 先ほど、小岩はベッドタウンとして発展したと述べましたが、多くの人々が住む土地だからこそ、これほど大規模な商店街を四方八方に伸ばす必要があったのでしょう。

●各商店街の特徴
 小岩という街の面白いところは、各商店街にハッキリとした特色がある点です。それを解説するために、小岩駅周辺の商店街を以下の5エリアに分けました。実際は南側だけでも10以上の商店会に分かれていますが伝わりづらいため、ざっくりとしたエリアで分ています。

○小岩駅南エリア
1.フラワーロード
2.昭和通り
3.サンロード

○小岩駅北エリア
4.北口商店街
5.京成小岩駅周辺(柴又街道/千代田通り含む)

 それでは各エリアの特徴を見ていきましょう。

駅南側の商店街は南口バスロータリーが入口

1.フラワーロード
 始めに小岩駅南エリア全体の特徴から解説します。駅南側の商店街はすべて南口バスロータリーが入口になっており、千葉街道へ続いています。

小岩駅周辺の地図(画像:(C)Google)

 その千葉街道は小岩駅の南西から東にかけて1~2kmに位置し、総武線の線路とほぼ平行に通っています。そのため駅南側の商店街及びその通りは、殆どがバス通りを兼ねた1km以上の1本道になっています。

子どもを持つ家族でも安心して住める

 さてそんな南エリアを代表する商店街といえば、1km以上続く長大なアーケード商店街・フラワーロードです。

フラワーロードの再開発ビルにはスーパーやジムが入っており、街の利便性を高めている(画像:荒井禎雄)



 小岩駅周辺は再開発区域になっており、このフラワーロードの一部は他に先がけて開発が終わり、マンションと商業施設が一体化した29階建ての再開発ビルがそびえ立っています。そのため、この一角は小岩の他地域に比べると今風の街並みになりました。

 買い物場所として見てみると、都市銀行・衣類・カバン・靴・文房具といった生鮮品以外のお店が目立ち、飲食店も個人店からチェーン店まで色々と揃っています。

 肝心の生鮮3品については、駅寄りの再開発ビルの中にサミットが、商店街の中ほどにはオオゼキがあり、どちらかを使う事になります。またオオゼキの入るビルには、100円ショップのセリアもあり、利便性は中々高そうです。

 小岩名物の歓楽街とは真逆の方向に位置し、駅から少し離れれば喧騒から遠ざかれるため、子どもを持つ家族でも安心して住めそうなエリアです。

街ブラ好きにはたまらない

2.昭和通り
 知名度ではフラワーロードに劣るものの、距離の長さと昭和レトロを思わせる雰囲気の良さでは昭和通りも負けていません。生鮮品以外に佃煮、味噌の量り売り、昔ながらの金物屋に街の電気屋さん……と、業種の幅広さでは小岩でもトップクラス。途中に小さな水天宮があるのも街ブラ好きとしては見逃せません。

昭和通りには味噌の量り売りなど昭和レトロが現役で生き残っている(画像:荒井禎雄)

 ただ、お店の密集度が高いのは駅寄りの一角で、南側は住宅やシャッター店が目立つようになってしまいますが、それでも「終わりそうで終わらない商店街」が千葉街道付近まで続き、商店街のはずれには、鉄道ジオラマと猫が名物の「友の湯」という名銭湯が。

 現在は南小岩7丁目の一部が再開発区域となっており、駅を中心にグルっと円形に繋がる周回道路(リングロード)を建設中。完成すると環状線のように駅周辺の商店街が繋がるようです。まだまだ街の利便性や明るさ、そして安全性が高まりそうなエリアだと言えるでしょう。

3.サンロード
ここではフラワーロードと昭和通り以外の、駅から東に延びる商店街(商業地区)をまとめてサンロードと呼称します。

 フラワーロードや昭和通りと比べると、サンロードの特徴は一目瞭然。飲食店の比率が高く、商店街というより飲食店街という印象を強く受けます。中でも総武線の高架付近には雰囲気のある酒場通りがあり、飲兵衛にとってテンションの上がる街並みになっています。

男性の単身者に強くオススメ

 買い物環境としては、サンロード沿いにダイソーや業務スーパーがあり、そこから程近い中央通り沿いにはドンキホーテの小型店ピカソも。こうしたラインナップから考えると、男性の単身者に強くオススメしたい街だと言えます。

サンロードから1本路地に入ると、このようなたまらない雰囲気の酒場通りが(画像:荒井禎雄)



 なぜ男性向けかと言うと、この一帯はいわゆる歓楽街になっており、多くの酒場に加えて外国人女性の呼び込みがいるマッサージ屋など「ちょっとアレなお店」も潜んでいます。そういった場所ですので、お世辞にも女性向けの街とは言い難いのです。

 ただし、中央通りとの交差点を越えたさらに東側、柴又街道の辺りになると静かな住宅街となり、一気に安全性が増します。多少の不便さは出て来ますが、駅との距離によってガラっと印象の変わる通りです。

池袋駅北口をギュっとコンパクトにした感じ

4.北口商店街
 小岩駅北側の商店街は細かく分けると数か所の商店会に分かれますが、ここではこれらを総じて北口商店街と呼称します。南口よりも個々の商店街の長さは短くなりますが、こちらも駅から北側の蔵前橋通りまで伸びる道のほとんどが商店街化されており、碁盤の目のようになっています。

北口商店街はパチンコ店の比率が極めて高いが、これでも昔よりホール数は減っている(画像:荒井禎雄)

 北口を出ると目の前にイトーヨーカドーが鎮座し、その裏にはワイズマーケットというスーパーマーケットが。それ以外にも古そうなお茶屋さんやお香屋さんなど面白そうな個人店はあるのですが、全体的な印象はチェーン系の飲食店とパチンコ店がとても目立ちます。

 他にもエスニック系の飲食店も多く目に付きました。そのため生活に向いた街かどうかと言われると疑問符が付くのですが、単身者向けの飲食店街に特化した街として見てみると高く評価できます。

 また、総武線の高架付近にはカプセルホテル・ラブホテル・サウナが点在しており、やはりこうした面からも需要と供給がハッキリしている印象を受けます。筆者の独断と偏見ですが、池袋の北口辺りがギュっとコンパクトになったイメージです。

5.京成小岩駅周辺(柴又街道/千代田通り含む)
 JR小岩駅の北口商店街を抜け、柴又街道に入り、北に10分ほど進むと、京成小岩駅に辿り着きます。ここは江戸川区と葛飾区の境目にあたるエリアで、京成小岩商栄会、京成小岩南口商店会に加え、葛飾区の千代田通り商店街と3つの商店街が集まっています。

 街の賑やかさではJR小岩駅周辺には及びませんが、その代わりどこに住んでも静かな郊外型の住環境が得られます。

北口商店街は、近隣住民のコミュニティスペース化

 生鮮品などの買い物場所としては、駅北口のグルメシティ、駅南口のアタック、柴又街道のアコレと、スーパーマーケットが揃っています。駅から少し西に進めばサミット、その南にはライフもあり、自転車を使ってこれらスーパーを回るという買い物コースが最も現実的でしょう。

ローカルな空気の漂う京成小岩駅前の商店街(画像:荒井禎雄)



 正直に言うと、このエリアの通りはシャッター店が多かったり、住宅街化していたりと、商店街としては苦戦している印象を受けますが、それでも無視できない魅力的な雰囲気を備えています。

 例えば柴又街道にはレトロなテーラーが現役で営業中で、その隣にはいまどき珍しい立派な金物屋が。また一部に熱狂的なファンのいるホワイト餃子や、今や希少種となった人形町系大勝軒があったり、マニア層の心に強く訴えかける物件が点在しているのです。

 そしてぜひ一度現地を訪れて頂きたいのが葛飾区の千代田通り商店街。ここは道がキレイに舗装されていて、建物にはどこか統一感があり、直感的に「キレイ」と感じる通りです。見ようによっては映画のセットのように感じるかもしれません。

 以前と比べて生鮮品の店は減ってしまいましたが、DOGカフェやギャラリーカフェなどを中心に、近隣住民のコミュニティスペースとして生まれ変わろうとしているような印象を受けました。

気になる家賃は……

●家賃相場
 小岩駅周辺は、どこに住んでも何かしら買い物環境は整っている事が分かりました。では次におおよその家賃相場を見てみましょう(筆者調べ)。

・徒歩1~5分圏内
1R~1DK:約7万円
2K~2DK:8~9万円
3K以上:9万円~

・徒歩5~10分圏内
1R~1DK:約6.7万円
2K~2DK:7.5~8.8万円
3K以上:8.8万円~

 ちなみに、同条件でお隣の市川駅(千葉県)周辺の物件を調べてみると次のようになります。

・徒歩1~5分圏内
1R~1DK:6.7~6.9万円
2K~2DK:8~9.5万円
3K以上:10万円~

・徒歩5~10分圏内
1R~1DK:6.4~6.7万円
2K~2DK:7.6~9万円
3K以上:10万円~

 このように、実は千葉県に住むのも小岩に住むのも大して変わらず、むしろ条件によっては小岩の方が安いことすらあるのです。

 参考までに、東京23区東側~千葉県内の総武線沿線の家賃の平均値を見てみると以下のようになります。

秋葉原:約11万円
浅草橋:約11万円
両国:約9万円
錦糸町:約9万円
亀戸:約9万円
平井:7.6万円
新小岩:7.1万円
小岩:6.6万円
市川:7.9万円
本八幡:7.4万円

 条件で分けず平均値を出すと、なんと小岩駅周辺だけが千葉県の駅と比べても圧倒的な安さ。この数字を見ると、小岩という街がいかに物価の低い、暮らしやすい街なのかが分かります。

悪質な犯罪は発生数が少ない

●犯罪発生件数
 いきなりキナ臭い話になりますが、小岩というと治安が悪いというイメージを持つ人がいると思います。そこで、警視庁が公開している「犯罪情報マップ」というサイトを参考に、小岩駅周辺の2018年の犯罪発生件数を調べてみました。

・自転車盗難
西小岩1丁目:40~84件
南小岩6~8丁目:24~49件

・粗暴犯
南小岩7丁目:14~39件
西小岩1丁目:5~13件

・全刑法犯
西小岩1丁目・南小岩7丁目:68~155件
南小岩6丁目・8丁目:26~67件

 これによると、小岩駅周辺で犯罪発生件数が最も多かったのは西小岩1丁目と南小岩7丁目で、内訳は自転車の盗難が特に多く、次いで粗暴犯も目立ちました。何故この2か所の犯罪発生率が多いのかというと、JR小岩駅の北口が西小岩1丁目、南口が南小岩7丁目になるからという理由でしょう。

 ここから分かるのは、駅チカの飲食店が密集するエリアだけに酔っ払いによる軽犯罪がどうしても増えてしまうのではないかという事情です。自転車盗難については、駅の周辺地域には付き物のようなもので、こればかりはどの土地も大体同じような状況です。逆に侵入窃盗・車上ねらい・引ったくりといったより悪質な犯罪は全体的に発生数が少なく、あっても年に2~3件というごく低い数字になっています。

 試しに他の総武線沿線の近くの街と比較してみると、小岩より明らかに犯罪発生件数が多いのは錦糸町や新小岩で、この両駅には2018年の犯罪発生件数が156~413件という少々気になる地区があります。錦糸町の場合は巨大な場外馬券売り場がありパチンコ店や飲み屋が固まっている江東橋3丁目、新小岩の場合はルミエール商店街を有する新小岩1丁目がそれにあたります。

 こうしたデータから考えてみると、小岩駅周辺は駅近くと飲み屋街さえ避ければかなり安全で、イメージほど治安が悪い訳ではないという事実が浮かび上がって来ます。

物価が安い一方、買い回り品の充実度は低い

●メリット・デメリット
 小岩駅周辺に住むメリットは、家賃の相場からも分かるように物価が極めて安いということ。筆者が実際に見て回ったところ、特に京成小岩駅周辺のスーパーの特売品の叩き売りっぷりに目を惹かれました。JR駅から離れるほど家賃は安くなる傾向にあるので、家賃や生活費になるべくお金をかけたくないのならば、京成小岩駅周辺などJR小岩駅から見て蔵前橋通りより北側が利便性とのバランスが良くてオススメです。

総武線のホームから見たフラワーロードと再開発ビル。小岩はまだまだ変化を続けている(画像:荒井禎雄)



 また通勤・通学の面では総武線を使えば新宿まで30分、秋葉原までなら十数分とかなり優秀。注意点としては混雑度が非常に高い事で、それさえ我慢できるならばベッドタウンとして完璧な条件だと言えます。

 視点を変えて小岩を歓楽街として使う場合、飲兵衛界隈では知る人ぞ知る名店があちこちにあり、物価の安い街だけにお財布を気にせず何軒もハシゴ酒を楽しめてとても魅力的。独身男性向けのラーメン店なども人気のお店が集まっていて、飲み歩き・食べ歩き目的で訪れるのにも向いています。

 デメリットとしては、生活者目線でも飲食目的でも優秀な街なのですが、買い回り品(価格や品質などを比較してから購入する商品)に関しては他の繁華街と比べると寂しさを感じます。家電や家具といった高価な買い回り品や、「小岩のあの店でなければ買えない」といった商品はあまり思い浮かばず、そこが唯一の弱点のように感じました。

 小岩駅周辺は決して治安が悪い訳ではありませんし、歓楽街から少し離れれば閑静な住宅街に変貌しますし、使い方さえ間違えなければ単身者でもファミリーでも、万人が呑気に暮らせる街だと評価できます。

 ただし、街があまりにも広大なため、住むならば自転車だけは用意することをお勧めします。


【画像】小岩駅周辺まるごと写真館!(18枚)

画像ギャラリー

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