南青山の一角に「今治タオル」の店ばかりが集まっているワケ

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南青山の一角に「今治タオル」の店ばかりが集まっているワケ

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アーバンライフ東京編集部

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大通りの喧騒から離れた南青山の一角に、今治タオルの店が5軒あります。なぜ同じブランドの競合店が東京の同一エリアに集結しているのでしょうか。その理由を探りに、店舗を訪れました。

大物クリエイティブ・ディレクターの心も動かす

 地場産業のブランディング成功事例として、しばしば名前の上がる「今治タオル」。今や、その存在を知らない人は珍しいといえるほどの人気ブランドです。

 この今治タオルの店が南青山の一角、徒歩5分以内に5軒もあります。今治タオルの隠れ名所のごとく、同じブランドの競合店が東京の同一エリアに出店しているのはなぜなのでしょうか。その背景を知るべく、店舗を訪れました。

様々な品質基準を満たした「今治タオルブランド」のタオル(2019年7月24日、宮崎佳代子撮影)



 そもそも、OEM(相手先ブランドによる生産)製品含め数多のブランドがある日本のタオル市場において、地場産業の一ブランドがなぜここまで人気と知名度が上がったのでしょうか。

 今治タオルはおよそ120年の歴史をもつ、愛媛県今治市の産業です。それが1990年代、バブル崩壊や安価な海外製品への消費動向により衰退の一途を辿り、2000年代には企業数が半数近くに減りました。

 その起死回生を図るべく、四国タオル工業組合(現・今治タオル工業組合)はブランディング化を目指し、クリエイティブ・ディレクターの佐藤可士和さんに再生プロジェクトのプロデュースを依頼。今治タオルを実際に使ってみた佐藤さんがその品質に惚れ込み、引き受けたそうです。

 佐藤さんによる今治タオルの再生プロジェクトの成功には、「安心・安全・高品質」を徹底した「品質基準」の設定が挙げられます。とりわけ吸水性を重視した「5秒ルール(タオル片を水に浮かべて5秒以内に沈み始める)」が品質と評判を高め、認知度が飛躍的にアップ。12の独自基準をすべて満たしたタオルを「今治タオルブランド」に認定し、ロゴマークを品質保証マークとして機能させたことも知名度を上げました。

 そして2012(平成24)年、今治タオル工業組合は南青山5丁目に県外初のオフィシャルショップ「今治タオル 南青山店」をオープンしました。

南青山が今治タオルの販売に向いていたワケ

「今治タオル 南青山店」は、「今治タオルブランド」の基準を満たしたおよそ25社の製品を販売しています。組合はなぜ立地に「南青山」を選んだのでしょうか。

「南青山は品質を見極められる、おしゃれで感度の高い方たちが集まる街。情報発信の基地としての役割も果たせる場所であったことからと聞いています」

 そう語るのは店長の遠藤久美子さん。店内は、真っ白なタオルがびっしりと並んでいる様子が印象的でした。

南青山にある今治タオル工業組合のオフィシャルショップ「今治タオル 南青山店」(2019年7月24日、宮崎佳代子撮影)



「白いタオル」は、クリエイティブ・ディレクターの佐藤さんがキープロダクトに指定したものです。最初目にした時、真っ白ばかりならこんなに並べる必要はないのではないかと思いましたが、色や柄がないことで「肌触り」一点に注意が向くとわかりました。

 店の中央に大きな机が配置されていて、ここでタオルを広げて感触を確かめられます。広げて掴んでみると、なるほど、ボリューム感や質感がよくわかります。遠藤さんは今治商工会議所と組合が認定する「タオルソムリエ」の資格を取得していて、タオル全般についての知識が豊富。組合がこういった資格制度を設けたことも、今治タオルの良さを広める一因になっているようです。

 同店が開業した2年後、南青山6丁目に「IKEUCHI ORGANIC TOKYO STORE」がオープンしました。オーガニックコットン100%で作る今治のタオルブランドで、テキスタイル(織物、布地)の安全性に関する最も厳しい世界基準をクリアし、「赤ちゃんが口に含んでも安全」なタオルを作っています。店内に洗濯機と乾燥機が設置されているのが珍しく、100回以上洗濯したタオルの風合いや感触も体感できるようにしています。

 南青山への出店理由について、店舗を運営するIKEUCHI ORGANIC(今治市延喜甲)の営業部長の牟田口(むたぐち)武志さんは次のように話します。

「タオルを選ぶというのは、触って肌感触を確かめたりして、意外と時間がかかります。そのため、ある程度ゆったりとした空間がとれ、隠れ家的で落ち着いて選んでもらえる環境としてこの地が適すると思ったからです」

 近くに「今治タオル 南青山店」があることが気にならなかったのか尋ねたところ、「われわれはオーガニックに特化していて商品の特長が異なります。また、今治タオルのお店が増えればそれだけお客さまの選択肢が増えることになり、メリットの方が大きいです」とコメント。

 ここから徒歩1、2分のところに、2016年2月に開業した「crescendo(クレシェンド)青山店」がありました。こちらの商品は、今治市の女性たちが「こんなタオルがあったら」との想いを形にしたものだそうです。対象は子育て世代で、ベビーとキッズ用品がメイン。母親目線で考えたアイデア商品が揃います。

 同様に南青山での出店理由を聞くと、「南青山は感度が高いお客様が多く、アンテナ・ショップも多いことからです」とクレシェンド(同市美須賀町)代表の阿部貴子さん。

南青山への出店は「競合」でなく「共同」

 5軒のなかで一番新しく、2017年6月にオープンしたのが「コンテックス タオルガーデン 青山」です。「crescendo 青山店」から徒歩2分ほどのところに立地。4軒もある一角を選んだ理由について、同店を運営するコンテックス(同市宅間甲)の東京営業所の小堀孝之さんは「競合ではなく、共同で今治タオルを盛り上げていくことができる場所と思いました」と言います。

 同店は「今治タオルブランド」の商品が2割程度。それ以外は独自のコンテックスブランドタオルを製造しているため、タオル地の草履があるなど製品バラエティーが豊かでした。

コンテックス タオルガーデン 青山の店内。表裏両面にワッフル織が施されたタオルが人気(2019年7月24日、宮崎佳代子撮影)



 最後に訪れた「Towel Shop 441」は、2016年5月に5丁目に開業。基幹商品は、表側にガーゼ地を採用した今治タオル。裏側がパイル地になっていて、表はサラリ、裏は柔らかという肌触りが夏場にぴったりです。

 5軒のなかでも色彩豊かで、インテリアとしても使えるラインナップ。同店を運営する吉井タオル(同市町谷)の営業企画の小林さん曰く「個性豊かなそれぞれのメーカーの今治タオルを知って欲しいとの思いで、敢えて南青山に出店しました」とのことでした。

 各店舗に話を聞いて、南青山に5店集まった理由に、「南青山には品質やデザインを重視する、感度のいい人々が集まる」「商品ラインナップが異なるため競合しない」「団結して今治タオルを盛り上げていける」ことが挙げられるとわかりました。加えて、安心感もあったのではないでしょうか。

 店の外観だけからは今治タオルの店であるかわからないため、来店客の欲しい商品が自店にない場合、他店を紹介するなどして、南青山に今治タオルの店が集結していることを積極的にアピールしているそうです。

 今治タオルの関係者は、「今後、南青山での今治タオル巡りが観光資源になるようにしたい」と抱負を語っていました。今治タオルの団結と独自性と誇り。それが将来南青山を今治タオルの「隠れ名所」から「聖地」に昇華させる日も近いかもしれません。

●今治タオル 南青山店
・住所:東京都港区南青山5-3-10 FROM-1st 2F 203号
・営業時間:11:00~19:30
・定休日:毎月第2火曜、8月第2日曜、2月第3日曜
・アクセス:各線「表参道駅」A5出口から徒歩約5分(以下の4店も同様)

●IKEUCHI ORGANIC TOKYO STORE
・住所:東京都港区南青山6-2-13 2F
・営業時間:11:30~19:30
・定休日:なし

●crescendo 青山店
・住所:東京都港区南青山6丁目2-10 バックボーンハウス
・営業時間:11:00~18:30
・定休日:火曜

●コンテックスタオルガーデン 青山
・住所:東京都港区南青山5丁目16-3
・営業時間:11:00~19:00
・定休日:第2・4火曜

●Towel Shop 441
・住所:東京都港区南青山5-4-44 ラポール南青山54
・営業時間:11:00~19:00
・定休日:8月13日、14日

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