終わりなき破壊と再生 渋谷の駅前再開発を「オカルト目線」で考察してみた

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終わりなき破壊と再生 渋谷の駅前再開発を「オカルト目線」で考察してみた

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吉田悠軌(怪談・オカルト研究家)

とどまることを知らない、渋谷駅を中心とした周辺一帯の再開発ラッシュ。これらを「オカルト目線」で考察するとき、何が見えてくるのでしょう。怪談・オカルト研究科の吉田悠軌さんが解説します。

地下にも空中にも広がる立体交差

 コロナ禍による外出自粛も緩んできたここ最近。街にも多くの「人通り」が戻りつつあります。

 緊急事態宣言時、「人通り」の指標とされた基準点といえば、渋谷のスクランブル交差点でした。見たこともないほど閑散とした同交差点の映像が、テレビでもネットでもよく流れたものです。

 それはとりもなおさず、あの地点こそが日本を代表する繁華スポットと見なされているからでしょう。2020年現在、日本で最も再開発がめざましいのも、渋谷駅前でしょう。

日本有数の繁華街、渋谷。その再開発を「オカルト目線」で考察すると……?(画像:写真AC)



 よく東京駅や大阪の梅田駅、新宿駅の地下が「迷宮」に例えられますが、今日の渋谷駅の複雑さは、その比ではありません。

 なにしろ渋谷ヒカリエ(渋谷区渋谷)、渋谷フクラス(同区道玄坂)、渋谷ストリーム(同区渋谷)……と高層ビルが次々に建設されて、駅と接続。乗り入れ路線と改札の多さもあいまって、渋谷駅の動線は地下だけでなく空中でも立体的に交差。上から下から複雑な動線が絡み合います。

 こうした「空中ブリッジ」は、他エリアにはあまり見られない、渋谷ならではの特徴です。ではここで、バベルの塔さながらに増殖する渋谷駅前を、オカルト的に考察してみましょう。

なぜ渋谷は「空中」を目指すのか

 渋谷駅前が「空中」を目指すのはなぜでしょうか。それは、あの場所が逆に「谷底」の地だからだと考えられます。スクランブル交差点は、地下で渋谷川や宇田川が合流する最下流、すり鉢地形の一番底なのは有名ですよね。

東急の「渋谷再開発情報サイト」より(画像:東急)



 それは風水の考え方でいえば、気がとどまる「悪所」ではあります。ただし街における「悪所」とは単純な悪ではなく、そうした場所だからこそ人が集まり、非日常を楽しむ繁華街になるのだとも言えるでしょう。これは日本全国、いや世界中の都市に見られる法則です。

 ただし、渋谷の特長は「谷底」を逆手にとって「空中」を指向したダイナミズムにあります。それは渋谷開発のリーダーであり、くしくも2020年3月で閉店した東急東横店にこそうかがえるのです。

地上3階を行く地下鉄の懐かしき光景

 今はもう失われてしまいましたが、地下鉄のはずの銀座線が、明治通りとJRを飛び越えて地上3階の「空中」をゆく、あの不思議な風景を思い出してみてください。

2020年3月をもって85年間の歴史に幕を閉じた渋谷駅・東急東横店(画像:東急百貨店)

 東横百貨店・東館(旧本館、1934年オープン)に渋谷駅ホームが開通(1938年)する際、あまりに低い土地では地下鉄を敷くのが難しい。となれば、空の上を走らせればよい、となりました。これこそが「空中ブリッジ」の第1号です。

 そしてまた東急東館は、渋谷川の上に立てられたビル。今でも川が流れているから、地下階というものが存在しないのです(荷物運搬用の細い地下道はありますが)。

 水の流れを地下に隠し、人の動線を空中でつなぐという発想。これこそ、現在の渋谷にも引き継がれている開発思想ではないでしょうか。

「すり鉢」の底、失われゆく景色

 もちろん、それによって失われていく風景もあります。先述の銀座線の空中ブリッジもそうですが、桜丘口地区の大規模な再開発も話題になりました。

 一帯が封鎖される直前の2018年末、ゴーストタウンさながらとなった桜丘口地区を訪れてみたことがあります。この辺りもまた、急な坂道を下り切ったすり鉢の底。立体的な段差の中、複雑に入り組んだ細道と小規模な店が並ぶ、昔ながらの情緒あるエリアでした。

さながらゴーストタウンと化した渋谷の桜丘口地区(画像:吉田悠軌)



 今後この土地には、2023年完成をめどに、A・B・C街区と並ぶ高層ビルが建つ予定です。谷底ならではの下町風情が無くなり、巨大な空中都市が造られていく……。少し寂しい気もしますが、これこそが現在の渋谷が目指している方向なのでしょうか。

谷底・低地の持つ魅力と集う人々

 ただしこの逆パターン、川や水路にふたをして暗渠(あんきょ。地下水路)となった遊歩道など、谷底・低地の風情を渋谷に求める人々も多いはずです。駅前から宇田川をどんどん下っていった地区は、「奥渋谷(=オクシブ)」としてここ数年、人気のスポットとなっています。

 駅周辺の騒がしさとは違う、隠れ家的な空気が好まれているのでしょう。きらびやかな空中もいいですが、やはり人間というものは、低くじめじめとして少し薄暗い「悪所」も求めてしまうものなのです。

暗渠となった宇田川遊歩道(画像:吉田悠軌)

 宇田川遊歩道は、まだ水路の面影を残しているから分かりやすいですが、すぐ脇にある一帯も沼地だったことは、あまり知られていないでしょう。

高低差のダイナミズムこそ持ち味

 例えばNHK西門前は不自然なロータリーになっていますが、あそこは昔(おそらく大正時代ごろまで)沼でした。駐輪場のスペースを迂回(うかい)するように道路が走っているのは、かつての地形をなぞっているのです。

 そこから坂道を少し下りた地点は、どうやらもっと大きな沼があったようです。再開発の激しい渋谷でも、この辺りはまだゴチャゴチャと猥雑(わいざつ)な、いい意味での「悪所」的風景が残されていますよね。

かつては沼だったNHK西門前(画像:吉田悠軌)



 風水の観点からすれば、その地形に合った地脈というものがあり、それに沿った街づくりが推奨されます。

 川を埋め立てた地下道を歩き、坂を登らずにエスカレーターからコンコースを歩く。バリアフリーなど必要な点もあるでしょうが、その土地の形や昔ながらの道を変形し、人工的な新しい道路網を作っていくことが、今後どのような影響を及ぼすかは、注視した方がいいかもしれません。

 また、火災や地震などの災害時、空中コンコースや地下道が入り乱れた空間の安全性も心配されます。まあ、そこはしっかりした安全設計を考えるはず、と信頼するしかないですが。

 その街で人々が自然に動く「動線」ではなく、自治体や企業の利益のために人々を誘導する「導線」ばかりになるのも考えもの。天高くの空中ブリッジもいいですが、たまには谷底の悪所へと下りてみることも忘れてはなりません。

 繰り返しますが、そうした高低差のダイナミズムこそが、渋谷という土地の持ち味なのですから。

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