昭和の小学校に必ずあった「OHP」「わら半紙」が知らぬ間に姿を消したワケ
情報通信技術は日々進化し、昭和時代の学校にあった備品も次々となくなっています。今回は懐かしいあの備品について振り返ります。エデュケーショナルライターの日野京子さんが解説します。大変貌を遂げている小学校ICT教育 ICT(情報通信技術)設備が充実している学校といえば、多くの人は私立学校をイメージするでしょう。しかし、現在は公立学校でも着実に増えています。 文部科学省は「学校におけるICT環境の整備について」のなかで「教育のICT化に向けた環境整備5か年計画(2018~2022年度)」を公表しています。 この動きは、新型コロナウイルスの感染拡大を契機に一気に加速。保護者からの要望に応えるべく、生徒ひとりにつき端末1台を実現しようとしています。 文部科学省の「令和2年度学校における教育の情報化の実態等に関する調査結果」を見ると、東京都の公立学校(小学校・中学校・義務教育学校・高等学校・中等教育学校及び特別支援学校)の教育用コンピューター1台当たりの児童生徒数は1.5人、インターネット接続率(30Mbps以上)は99.5%となっています。 2009(平成21)年度の同じ調査では、コンピューター1台辺りの児童生徒数は8.2人、インターネット接続率は70.1%だったことを考えると、この10年間でいかに整備が進んだかがわかります。 なお、総務省も5Gを活用した学校教育の在り方を提案した「教育情報化の推進」を掲げており、国をあげてICT教育を進めていく姿勢にあります。 一定の世代以上なら知っている機械一定の世代以上なら知っている機械 教育現場に最新技術を導入したい国の方針や、時代の流れもあり、学校ではそのような技術を取り入れた教育が着実に行われています。 デジタル教科書の導入も取り沙汰されており、それに伴い、電子黒板やプロジェクターの整備も急務となっています。東京都の公立学校では順調に進んでおり、2020年度までに、普通教室の大型提示装置(電子黒板やプロジェクター等)の整備率は78.8%と全国平均を8.8%上回っています。 これまでは「学校の授業 = 板書」でしたが、このように大きな転換期を迎えているのです。 さて皆さんは、昭和時代にも電子黒板のような機器が教室の片隅に置いてあったことを覚えているでしょうか。使用も年に数回程度と少なかったものの、なぜか存在感があったあの機器です。 OHP(画像:イラストAC) その名は「OHP(オーバーヘッドプロジェクター)」。透明のシートに書いた文字やイラストを天井からつるされたスクリーンに映し出すものです。現在学校で使われている書画カメラと同じ役割を担っていました。 昭和の小学校では班ごとに調べたことをOHPで発表していましたが、現在はICT技術が進化したこともあり姿を消しました。 消しゴムを使うと破れる「わら半紙」消しゴムを使うと破れる「わら半紙」 消えた備品はほかにもあります。 小テストやお便りで使用されていた「わら半紙」もそのひとつ。漢字の小テストで書き間違えを消しゴムで消そうとすると破れたり、時間がたったりすると変色したりする、お世辞にも良質な紙とはいえませんでした。 わら半紙(画像:写真AC) 平成時代に生まれた人にとって、 「書き間違えを消すにも神経をとがらせなければならない」 という経験はないかと思います。そんなわら半紙はテストから家庭へのお便りまで幅広いシーンで使われており、学校生活を送る上では欠かせない備品でした。 しかし、現在の小学校ではコピー用紙が使われています。 1980年代に入ると、今でも学校でおなじみのデジタル印刷機「リソグラフ」が普及。印機器の性能が飛躍的に向上しました。 21世紀に入る頃にはコンビニエンスストアにコピー機が置かれ、家庭用のプリンターも手の届く値段になり、コピー用紙の需要が拡大。わら半紙はコピー用紙より薄いため紙詰まりしやすく、徐々に活躍の場が失われていきました。 ちなみに、わら半紙は安価というイメージがありますが、現在ネットショップではコピー用紙と同程度の価格、もしくはそれより高い値がついています。 あまり変わらないようで変わっている小学校 備品をひとつひとつ見ると、昭和時代にあったものがいつの間にか姿を消し、時代の最新技術が取り入れられていることに気がつきます。 小学校のイメージ(画像:写真AC) あまり変わらないようで変わっている小学校。令和の小学生が大人になったとき 「そういえばあの機械はもう学校にはないのか」 と驚くような未来が待ち受けているのかもしれません。
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