口の中で広がる肉汁! マツコも唸った「焼活(シュウカツ)」とは何か?

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口の中で広がる肉汁! マツコも唸った「焼活(シュウカツ)」とは何か?

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シュウマイ潤

シュウマイ研究家

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「シュウマイといえば横浜」と思う人も多いのではないでしょうか。実は東京こそ、多彩なシュウマイが楽しめる場所なのです。知られざる東京のシュウマイ事情について、シュウマイ研究家のシュウマイ潤さんが考察します。

シュウマイ難民からシュウマイ研究家へ

「シュウマイ難民」――。今から約20年前、東京に暮らし始めてしばらくしてから、自分がそんな状態であることに気づきました。

溜池山王の中華の名店「頤和園(いわえん)」。実はシュウマイも看板商品。肉、エビシュウマイ合計8個が味わえるランチがおすすめ(画像:シュウマイ潤)



 私(シュウマイ潤/シュウマイ研究家)は神奈川県の海辺の町で生まれ、大学までを過ごしました。

 大学卒業後、しばらくして東京に暮らしはじめ、何気なく「シュウマイ」を食べようと思ったとき、まず、日本のシュウマイの代名詞であり、神奈川のソウルフードとも言える「崎陽軒」の店舗が少ないことに気づきました。

 ならば、中華料理店に行けば餃子ととともにあるはず……と思いきや、メニューにすら載っていない。東京でシュウマイを食べるのが、これほど難しいのか。

 このことがひとつのきっかけとなり、東京以外でもどうか?と各地のシュウマイを探し求めはじめ、その後全国各地の約400種類(2019年6月現在)のシュウマイを食べ歩くことになりました。

 まさかシュウマイの専門家としてTBS系「マツコの知らない世界」(2018年5月15日放送分)に出るまでになるとは、当時の私は想像もしなかったわけですが。

シュウマイ愛が強い横浜

……と、「シュウマイ=神奈川」と当たり前のように進めてしまいましたが、実際、私に限らず神奈川出身者の大半は、先の「崎陽軒」の影響からか、シュウマイを日常食として親しんでいます。

 みなさんのそばの神奈川出身者に聞いてみれば、その「シュウマイ愛」の強さに驚き、あ然とするはずです。

 また、数字でも神奈川、特に横浜の「シュウマイ愛」が強いことは明らかで、総務省の家計調査(2016年~2018年)によると、「シュウマイ消費」の年間平均支出額が全国は約1000円であるのに対し、横浜市は約2500円。他の地域に比べて圧倒的な消費量を誇ります。

「崎陽軒」の1日あたりのシウマイ(崎陽軒での表記は「ュ」が入りません)販売数も、約80万個にものぼるといわれ、他のシュウマイ企業(というものがそもそも少ないですが)を圧倒しています。

 さらに、神奈川のシュウマイブランドは「崎陽軒」にとどまらず、「横浜中華街」にも名品と称されるシュウマイが存在し、「海員閣(かいいんかく)」「清風楼(せいふうろう)」「安記(あんき)」などがその代表例です。

横浜中華街のシュウマイ名店のひとつ、「清風楼」のシュウマイ。中華街シュウマイの象徴のような、がっちり系シュウマイ(画像:シュウマイ潤)



 ただし、あくまでシュウマイ潤による調査ですが、崎陽軒と中華街の存在が大きすぎるのか、それ以外の神奈川のシュウマイは、名店はあるものの、その「シュウマイ愛」と数字が出すほどの存在感はありません。

 チームスポーツに例えるなら、崎陽軒、中華街という2大エースの存在が大きすぎるからか、他の選手が育たない、ということでしょうか。良くも悪くも、ダイバーシティ(多様性)が少ない。日々新しいシュウマイを探し歩いている人間としては、寂しさは否めません。

 くどいようですが、いい店はあります。でも、日本を代表するシュウマイ消費地としては、出会う機会が少なすぎる。神奈川県民だからこそ、強く思います。

技と個性が光る東京シュウマイ

 その点、東京は「シュウマイ難民」と感じていたのは過去の話。全国、全世界の美味が集うともいわれる「食のダイバーシティの街」である東京において、シュウマイも例外ではありませんでした。東京で本格的にシュウマイを探してみると、崎陽軒、中華街に引けを取らない名店に巡り合うことになりました。

東京のシュウマイを代表する名店のひとつ「小洞天」の肉シュウマイ。甘めでボリューム感満点(画像:シュウマイ潤)



 日本橋発祥の「小洞天(しょうどうてん)」や、新橋発祥の「新橋亭(しんきょうてい)」などの老舗中華のシュウマイや、実は東京のシュウマイの聖地といわれる築地の四天王「やじ満」「ふぢの」(※現在は豊洲に移転)「菅商店」「幸軒」など、東京のシュウマイのエースと呼べる存在は多数。

 他にも実にいい仕事をするシュウマイの店が、各街、各駅にあると言っても大げさではなく、「シュウマイ途中下車の旅」ができるほど多様なシュウマイたちがひしめく場所、それが東京なのです。

 また、出す店の業態も多様で、中華だけでなく、居酒屋、定食屋、総菜屋、スーパー、和食割烹、洋食屋、ビストロ……シュウマイが何料理なのかがわからなくなってくるほど。

 でもみなさん、それぞれの得意な技術をふるい、実に個性的でいいシュウマイを作るんです。そしてそれが、東京でシュウマイをめぐる楽しみのひとつでもあります。

シュウマイあるところに名店あり

「シュウマイあるところに名店あり」。

 約400種類のシュウマイを食べてきた男が導き出した法則のひとつです。裏を返せば、東京に限らず、飲食店全体において、それだけシュウマイがある店が少ない、ともいえます。

 中華料理店を中心に、餃子はあるのに、シュウマイがない。その苦い経験を、私はそれこそ食べてきたシュウマイの何倍も経験してきました。ただその分、探し当てたときの達成感は大きく、同時に、そういう店の他の料理も、ほぼ例外なく美味しい。そしてその醍醐味をもっとも体感できる場所のひとつが、東京だと私は感じます。

 私は勝手にシュウマイを食べ歩くことを「焼活(シュウカツ)」と呼んでいますが、新たに東京の美味しいものに出会うためにも、「東京焼活」をぜひおすすめしたい。

 私もシュウマイのおかげで、東京の意外な名店に巡り合ってきました。その店はどこか? もちろん先に紹介した名店も含まれますが、ぜひご自身の“シュウマイアンテナ”を磨いて、「東京焼活」に励んでみてください。

 まあ、楽しむ前に、あなたも「シュウマイ難民」を経験することになるのですが……何事も痛みなくして得るものなし、ということでしょうか。シュウマイには人生哲学が凝縮しているのかもしれません。

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