加速する「レジ袋有料の義務化」 大手コンビニ各社、環境配慮No.1はどこ?

現在、世界的な課題となっているのが、プラスチック廃棄物の削減です。私たち一般消費者や投資家は、関連企業の環境への取り組みをどのように評価すべきなのでしょうか。ESGに特化した金融サービス会社「アラベスクS-Ray」の日本支店代表・雨宮寛さんが解説します。


世界的な問題となっている「プラスチック廃棄」

 プラスチックの廃棄が世界的に問題になり、プラスチックの利用を減らす動きが食品スーパーやファストフード店で始まっています。

日本国内で加速する、プラスチック廃棄物への取り組み(画像:写真AC)



 少し角度を変えてこの問題をESG的に捉えてみたいと思います。

 ESGとは

・Environmental(環境)
・Social(社会)
・Governance(企業統治)

の3つの頭文字「E」「S」「G」をつなげたものです。Eは環境への配慮・地球環境の問題に対する取り組みを指し、Sは社会的な課題の解決に向けた取り組み、Gは顧客・株主・従業員といった利害関係者に対するCSR(企業の社会的責任)のあり方を指しています。

 これら3つの分野への適切な対応が会社の長期的成長の原動力となると同時に、持続可能な社会の形成に役立つと考えられています。「EGS」に着目して企業を分析し、優れた経営をしている企業に投資するのが、近年投資家の間で注目を集めている「ESG投資」です。

レジ袋の有償義務化へ

 プラスチック廃棄の件に話を戻しましょう。山の雪解け水が川を下って海に流れ出るまでをイメージしてください。

 プラスチック製品の原料となる石油を「山の雪解け水」とします。雪解け水の石油が「川上」から流れ、プラスチック製品に形を変えます(川中)。そして、食品スーパーやコンビニエンスストア、ファストフード店でストローやカップ、レジ袋として使用され、消費者に渡ります(川下)。その後、川下にいる消費者は使用後のプラスチックごみを指定されたごみ収集日に指定の場所に出し、自治体が回収します(海)。

 自治体の回収後、これまではプラスチックを含めた廃棄物の多くは中国や東南アジアなどの海外に輸出され、処理されてきました。しかし、これらの国々も環境汚染の悪化から、受け入れを拒否するようになりました。海に到達したプラスチックごみが行き場を失ってしまったのが現状です。どうすれば、海に到達する前にプラスチックごみを減らすことができるのでしょうか?

 ひとつの方法は冒頭に書いたような「川下」での対応です。プラスチック製品を出来るだけ使用しないようにすることを、前述の食品スーパーやコンビニエンスストア、ファストフード店などで徹底することが重要です。日本では、2020年夏をめどにレジ袋の有償化が義務化するため、「川下」での対応はかなり進むと思われます。

スーパー・コンビニ大手の環境への取り組みは?

 ご参考までに全世界78か国約7000社のESGをスコアリングしている「アラベスクS-Ray(R)」のESGスコアで、日本の食品スーパー・コンビニ大手5社のスコア(2019年6月3日現在)を比較してみたいと思います。

・セブン&アイHD:62.96(E:64.48、S: 64.63、G: 61.36)
・ファミリーマート・ユニーHD:59.97(E:66.19、S:61.28、G:56.41)
・ローソン:59.64(E:71.89、S:63.87、G:51.72)
・イオン:48.46(E:60.05、S:55.02、G:42.24)
・バローHD:34.61(E:37.99、S:35.13、G:32.90)

日本の食品スーパー・コンビニ大手5社のESGスコア(画像:アラベスクS-Ray日本支店のデータを基にULM編集部で作成)



 この結果を見ると、ESGの総合スコアは、セブン&アイHDが62.96と、トップです。しかし、ESGをE(環境)、S(社会)、G(企業統治)の3要素に分解すると、Eスコアは71.89のローソンが最も高くなっています。

 競合のセブン&アイもファミリーマートもEスコアは60を上回っているので、コンビニ大手3社の環境への取り組みは優れており、今後のレジ袋有償化もコンビニ大手3社についてはしっかりとした対応がなされるものと期待されます。

 スーパーやコンビニ各社の対応に対して、環境意識の高い消費者や、ESGを重視する投資家の関心は、今後一層高まっていくといえるでしょう。

プラスチック製品メーカーは非上場企業が多い

 次に、その上部にあたる「川中」(プラスチック製品の製造元)はどうでしょうか。

 製造技術などに関する情報を集めたデータベースを運用する「イプロス」(港区浜松町)によると、日本における樹脂・プラスチック製品のメーカー大手5社は

・マサル工業(豊島区東池袋1)
・タキロンシーアイグループ(大阪府大阪市)
・府中プラ(広島県府中市)
・第一セラモ(滋賀県東近江市)
・出雲(大阪府門真市)

です。

 プラスチック製品を生産しているメーカーは、非上場の会社が多い傾向にあります。大手5社のうち上場しているのは、タキロンシーアイグループのみです。また、マサル工業のみ関東エリアの会社です。プラスチック製造企業は、非上場で地方企業が多いという傾向は日本に限らず、世界的な傾向でもあります。

 このようなことから、「川中」の企業に消費者や投資家が直接プレッシャーをかけることは難しいと考えられます。プラスチック製品を利用するコンビニやスーパーが、レジ袋を始めとしたプラスチック製品の使用を減らしていくことで、間接的ではありますが、「川中」の企業の行動も変わっていくでしょう。

原材料を製造する世界企業の動きとは?

 最後に「川上」です。「川上」企業にはプラスチックの原料となる石油を掘削し、その石油をさまざまな用途に向けて精製・加工するメーカーがいます。そして、プラスチックの原材料となる合成樹脂を生産する会社があります。

 少し古いデータになりますが、石油化学工業協会(中央区新川)が刊行する「石油化学工業の現状 2015年」によると、プラスチック製品に使用される石油は、石油全体の約3%ということです。そのため、石油そのものを扱う企業に対しては、すでに世界的なゼロ炭素社会の流れで、化石燃料を扱う企業に投資をしない動きが出ています。

 ここでは、プラスチックの原材料である合成樹脂を生産する世界の5大企業(Polymer Properties Databaseより)の、「アラベスクS-Ray(R)」のESGスコアをみていきたいと思います。

・ダウデュポン(米):67.17(E:74.41、S:66.88、G:62.79)
・ライオンデル・バゼル(蘭):63.00(E:69.43、S:77.18、G:53.63)
・エクソン・モービル(米):43.28(E:64.82、S:50.00、G:33.85)
・サウジ基礎産業公社(沙):68.08(E:79.18、S:68.85、G:60.91)
・BASF(独):54.38(E:72.91、S:60.36、G:44.14)

合成樹脂を生産する世界の5大企業のESGスコア(画像:アラベスクS-Ray日本支店のデータを基にULM編集部で作成)



 エクソン・モービル以外は化学製品メーカーです。石油生産も手掛けているエクソン・モービルを除くと、大手4社の総合ESGスコアは高いことが分かります。

 とくに、サウジ基礎公社やダウデュポン、BASFはE(環境)スコアで70を上回っており、環境意識の非常に高い企業と考えられます。世界的な脱プラの流れが広がっていることから、合成樹脂を製造する企業の方向性も変わっていくことが期待されます。

 またエクソン・モービルも含め、これら5社は世界的に見ても非常に大きな企業で、技術革新に対する投資も積極的であると思われます。これらの企業が将来的にプラスチック製品の元の原料である、油や環境負荷の低い物質まで分解できるイノベーションを起こせれば、プラスチックの廃棄の問題は緩和することができるのではないでしょうか。

プラスチック製品製造元への働きかけが課題

 このように、プラスチックの世界を雪解け水が山から「川上」「川中」「川下」。そして「海」へ流れることをイメージして示しました。

 現在、「川下」や「海」では、レジ袋有償化や脱プラなどにみられるアクションが世界的に起こっています。そして「川上」のプラスチック製品の原材料となる合成樹脂を製造する化学製品メーカーは環境意識の高い企業が多いことから、ESG投資家の働きかけで行動が変わっていく可能性があります。

 おそらく現時点の懸念は、実際にプラスチックの製品や容器を作っている「川中」の企業です。繰り返しになりますが、非上場で地方の企業が多いため、消費者や投資家の声が直接届きにくいのではないかと思われます。

「川中」の企業に対して、「川上」または「川下」から間接的に働きかけることが必要になってくるでしょう。これにより、プラスチックを取り巻く状況は地球環境に良い方向に変わっていくのではないでしょうか。


【写真】エコなのにとってもおしゃれ! ニュージーランドのプラスチック不使用のコテージはこちら(11枚)

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