90年代~令和の「アイス」人気フレーバーTOP5! 知らぬ間に消えた“2つの味” あなたは思い出せますか?
夏になると余計に食べたくなるものナンバー1、アイスクリーム。不動の1位を守り抜くフレーバーがある一方で、いつの間にかベスト5から消えていた味も。その変遷や時代背景について、ライターの鳴海汐さんが解説します。東京、気温とアイス消費量の相関関係 2021年夏前半、東京は猛暑に見舞われました。8月に入ってお盆時期に気温が下がり、寒いほどの日もありましたが、再び真夏日が戻ってきました。 夏になると絶対食べたくなるアイス。あなたの一番好きな味は?(画像:写真AC) ここ数年、8月の東京の「日最高気温」月平均値は、30.4度(2017年)、32.5度(2018年)、32.8度(2019年)、34.1度(2020年)と年々上がっています(気象庁ホームページ)。 これだけ暑いと、アイスクリームやシャーベット、かき氷といった氷菓(引用以外は以下アイスと表記)に対しそこまで熱心でなかった人も食べるようになります。2020年から筆者の家の冷凍庫にさまざまなタイプのアイスが並ぶようになりました。 在宅も影響? 2020年は過去最高売上 アイスの売上は気温上昇に比例していると言われています。 東京都区部に暮らすふたり以上の世帯が「アイスクリーム・シャーベット」に年間で使っている金額は、平均で9676円(2017年)、1万406円(2018年)、1万331円(2019年)、1万1257円(2020年)と年々増えています(総務省統計局家計調査)。 2017~2020年の、東京の「日最高気温」月平均と、東京区部ふたり以上世帯のアイスクリーム・シャーベットに使う年間金額(画像:気象庁および総務省のデータを基に、鳴海汐・ULM編集部で作成) 日本全体における「アイスクリーム類及び氷菓販売金額の推移(一般社団法人日本アイスクリーム協会)」を見ても、2006(平成18)年度から2020年度にかけてほぼ右肩上がりで、2020年度は5197億円と過去最高の売上を記録しています。 新型コロナ禍の巣ごもり消費効果もその一因と考えられています。2021年も東京オリンピック・パラリンピックをテレビ観戦しながらアイスを食べる人々により、売上が伸びているかもしれません。 2021年、人気1位は王道の「バニラ」2021年、人気1位は王道の「バニラ」 その日本アイスクリーム協会ですが、1997(平成9)年から断続的に人気のアイスクリームのフレーバーをアンケート調査しています。 2021年の人気ベスト5は、1位「バニラ」、2位「チョコ」、3位「クッキー&クリーム」、4位「抹茶」、5位「ストロベリー」でした。 2016年からのベスト5を見ると、3位から5位の間で順位の入れ替わりはあるものの、この5種類に占められています(アイスクリームBIZ消費者調査『アイスクリーム白書』)。 調査方法としては、2021年は好きなフレーバーベスト5を人数を限らず消費者に投票してもらった結果で、それ以外の年は、自分でアイスを買うことのある全国10代~60代の1200人(各年代男女100人ずつ、2016年は50人ずつ)に「ベスト3」を尋ねるもの。 2016年から2021年まで、順位に変動はあるもののベスト5の顔ぶれは同じでした。 バニラ、チョコ、クッキー&クリーム、抹茶、ストロベリーが、2016~2021年のベスト5(画像:写真AC) バニラが1997年からずっと1位と圧倒的なのは、飽きのこないプレーンな味わいが好きな日本人らしい選択で誰もが納得かと思います。 また2021年6月4日(金)放送の『チコちゃんに叱られる!』(NHK)では、チコちゃんが「その香りが哺乳類を引き寄せる魔性の香りだったから」と解説していました。 チョコは、1997年からほぼ2位をキープ。アイスに限らずお菓子業界全体で人気ですし、ソフトクリームのミックス「バニラ&チョコ」が昔から定番でなじみがあります。 個人的には抹茶が予想以上の人気だったのですが、「抹茶スイーツは日本人にとってなじみのあるお茶 = 苦味に、甘味が加わった味。親しみやすい“ちょっと新しい”おいしさ」であり、「甘すぎず、かつ深い味わい」という、味博士・鈴木隆一氏の説明がその通りだと思います(2017年5月25日付、『LIVINGくらしナビ』)。 いちごは、かき氷の一番人気“いちご味”がルーツなのではないでしょうか。またクリスマスのケーキにはいちごがありますし、春には必ずお菓子業界でいちごフェアがあります。 酸味と甘みのグッドバランスだけでなく、日本人にとって特別感があることが理由のようです。 クッキー&クリーム、人気復活のワケとはクッキー&クリーム、人気復活のワケとは クッキー&クリームは2016年からはベスト5に必ず入っているのですが、2008(平成20)年にランクイン後の再ブレークでした。 これについては「濃厚トレンド」のせいかもしれないと考えました。「景気が悪くなると、確かな手応えや食べ応えを得るために、濃い味が売れるという分析」があるそうです(2018年1月23日付、『博報堂WEBマガジン センタードット、ヒット習慣予報』)。 2015年に日本は景気後退の認定があり、2016年はチョコレート製品ですが明治メルティーキッスの「フルーティー濃いちご」「薫る濃抹茶」が登場。そのあたりからCMでもグルメ番組でも、「濃厚」というフレーズがすごく評価されるようになった印象があります。 クッキー&クリームの場合、濃厚な味わいに加え、クッキーの箇所が食べ応えをアップさせています。 いつのまにかベスト5から去った2つの味 クッキー&クリームがベスト5に入る前に人気だったのが、「ミルク」と「あずき」です。 たしかに一時期「ジャージー牛乳」などミルク味が話題になることが多い時期がありました。2006年から2015年にかけてランクインしています。「『ミルク』と『バニラ』は違ったんだ。バニラは香料だったのだ」と気づいた人もいたことでしょう。 ちょっとレトロな懐かしさを覚える、あずき味のアイスクリーム(画像:写真AC) その前にベスト5常連だったのが「あずき」。かき氷やアイスクリーム、モナカもありますが、一番有名なのは「井村屋のあずきバー」に間違いありません。 地味な印象ながら癖になるおいしさのあずきバーは、マルチパックは60~70代、1本売りは40~50代がメインの客層だそうです(2021年7月1日付、『マネー現代』)。 人気下落というより、もはや国民食に?人気下落というより、もはや国民食に? あずきバーは「固い」ことで知られていますが、個人的には「フルーツなどのアイスキャンディーほど冷たくない」印象があります。 知覚過敏持ちでも、かむのが怖くない。1997(平成9)年から2004年にランクインしていましたが、その後はランク外へ。日本の気温上昇と関係があるのかもしれません。 ただ、井村屋のあずきバーは、シリーズ合計で2018年度の2億7500万本が過去最高だったものの、2019年度は、2億5400万本にいったん落ち、2020年度は過去最高の2億9200万本を記録したというので、売り上げ自体は上がっているとのこと(2021年5月20日付、『FNNプライムオンライン』)。 好きなフレーバーに挙げなくても、もはや国民食となっていて、家族が買ってくるアイスの定番になっているのかもしれません。 国ごとに違うアイスの人気フレーバー 日本での人気フレーバーを見てきましたが、海外ではどんなものが人気なのでしょうか。 2020年に筆者が通ったロンドンの語学学校では、「イギリス人がアイスと言えば思い浮かぶフレーバーベスト5」をチーム対抗で当てる授業がありました。 答えは、「バニラ」、「チョコ」、「ストロベリー」のほか、「ピスタチオ」と「チョコミント」でした。 ピスタチオは、同じチームのモロッコ人が自信を持って回答していました。 チョコミントは店舗のアイスコーナーに必ずあるらしく、イギリスでは人が集まるディナーのあとに薄い箱入りのミントチョコを食べる習慣があることの影響かと考えました。 国や地域によって違う人気フレーバー。チョコミントやピスタチオが定番という国も(画像:写真AC) このクイズでイタリア人チームは、レモンがランクインしていないことに衝撃を受けていました。イタリアンレストランには絶対あり、デザートに食べる人が多いからです。 そのほかの国はどうでしょうか。日本ではサーティーワンで知られるアメリカの「バスキン・ロビンス」では、バニラとクッキー&クリームが二大人気(2020年7月22日付、『baskin robbinsブログ』)だそうです。 日本での人気の行方に今後も注目!日本での人気の行方に今後も注目! 興味深いところでは、中国も日本と同じで「バニラ」が一番人気で、東南アジアのマレーシアとタイでは「チョコミント」、中東のアラブ首長国連邦とサウジアラビアで「プラリネ&クリーム」。地域性が大いにありそうです。 ちなみに「プラリネ」とは、ローストしたナッツに加熱した砂糖を加えて挽き、ペースト状にしたもの。日本では2009年にハーゲンダッツから「アーモンドプラリネクリーム」が発売されたときにちょっと人気が出た印象がありますが、その濃厚な味わいは海外では定番人気のようです。 今後日本のアイスの人気フレーバーがどのように変わっていくのか注目していきたいと思います。
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