故人を悼むすべての人に「お別れの場」を デジタル追悼サービス「想送録」とは

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故人を悼むすべての人に「お別れの場」を デジタル追悼サービス「想送録」とは

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デジタル追悼サービス「想送録」がリリースされました。さまざまな事情から、お通夜や葬儀に参列できない人もいるなか、「通夜の日に、皆が集まって思い出話をしながら盃を傾ける、あの場を作りたい」と考えたといいます。どのようなサービスなのでしょうか。

容量は無制限。期間限定で開設される「お別れの場」

 大切な人を失う悲しみは、計り知れません。できるなら失いたくない。ですが、生きている以上、その現実に逆らえない――。だからこそ私たちは、故人への思いを、故人を知る誰かと共有したいと願うことがあるように思います。

 Cross&Crown合同会社(港区赤坂)は2019年5月1日(水)、デジタル追悼サービス「想送録(そうそうろく)」をリリースしました。同サービスは、オンライン上に開設する「お別れの場」です。

大切な人を失う悲しみは、計り知れない(画像:写真AC)



 故人との思い出に思いを馳せることができる機能に特化しており、親族以外でも、故人を偲ぶ人であれば開設が可能です。

 写真や動画のアップロードの容量は無制限。投稿された写真から、自動的にギャラリーが生成されます。追悼メッセージを投稿する機能や、グリーフケア(傷ついた心を癒やす効果があるといわれるものや行動)に役立つよう設置されたブログ機能(管理者のみが更新可能)も設置されています。

 サイトの運用期間は15日(無料)、30日(9800円)、50日(1万2000円)の3種類。サイトに集まった情報は、サイト閉鎖時にPDFデータとなり、開設者の元に届くほか、紙の本にして、残すこともできます。PDFデータは無料。紙の本は有料で、ページ数によって価格が異なります。

 例えば、遺族と故人が離れて暮らす場合など、遺族の知らない故人の姿が、友人知人の手元に残っていることも多いでしょう。同サービスは、そのような写真や動画を、遺族の元に届けることも可能にします。

「通夜の日に、思い出話をしながら盃を傾ける、あの場を作りたい」

「私自身も葬儀という儀式そのものをオンラインで行うことには抵抗があります。ただ、昨今の人間関係の生まれ方や育ち方、またつながり方を考えた結果、こうした告知やお別れの場をネット上に作ることには意味があると考えました」

 これは、「想送録」の公式ページに書かれた、同社の代表取締役 増子貴仁さんの言葉です。

 例えば、病気療養中であったり、遠方に住んでいたり、さまざまな事情でお通夜や葬儀に参列できない人もいます。家族葬や直葬といったスタイルが増えるなか、「葬儀には参加できないが、故人を知る人たちとともに、故人を悼む時間が欲しい」と願う人もいるでしょう。年賀状を出す機会も減り、連絡手段が多様化した今、親しい人の住所を知らない……という人も珍しくない時代です。

「そうした方々も、インターネットに接続できる環境があればお別れを言える、そこには故人のたくさんの写真や動画があって、故人とのこれまでのさまざまな思い出に思いを馳せることができる、そうした場所があれば、たとえどこにいても、みな最後のお別れができるのです。通夜の日に、皆が集まって思い出話をしながら盃を傾ける、あの場を作りたいと思いました」(「想送録」の公式ページより)

 増子さんに話を聞きました。

メッセージに返信する機能は「あえて作らなかった」

「想送録」を作るにあたり、仕組みを複雑にしないよう意識したと、増子さんは話します。

 例えばアクセス方法。招待した関係者のみがアクセス可能な、限定公開の仕組みをとっていますが、パスワードによる認証を設置するか否かは、選択が可能です。これは、PCやスマートフォンの操作に明るくない人でも、アクセスしやすくするためだといいます。

「想送録」のサンプルサイト。「想送録」公式サイト内にリンクが張られている(画像:Cross&Crown合同会社)



 また、不快感を覚える人が極力いないよう、強く意識したとのこと。ゆえに、お悔やみのメッセージに、返信する機能を設けなかったと話します。

「返信機能を付けるか否かは、悩みました。懐かしい人の名前を見て、久しぶりと思い、コンタクトを取り、盛り上がる人もいるかもしれません。ですが、弔いの場が賑やかになることを好まない人もいるでしょう。意見の分裂を生む可能性がある機能は、搭載を控えようと考えました」(増子さん)

 同サイトが、期間限定開設なことにも思いがありました。

「このサイトは、閉じることが前提のサイトです。ひとつの共通意識のもとに、一瞬だけ、そこに集う。永遠じゃないからこそ、『場』を大切にできたら、と考えています」(増子さん)

 昨今のインターネットは、極端に言ってしまえば、誰かを心無い言葉で叩く人がいたり、吊るし上げようとする人がいたりと、暗い側面も見えてきています。だからこそ、そうではない方向で、人と人がつながる場所を作れたら。「インターネットの使い方に対するチャレンジとも考えています」と増田さんは話します。

 インターネットは多様化しました。かつてフィルム式だったカメラも、いつしかデジタルが主流となり、思い出を写真や動画で気軽に残すことが可能になりました。

 その便利さをどう使うのか。判断は、私たち一人ひとりの手に委ねられています。だからこそ、インターネットが、かけがえのない思いを届けたり、共有しあえるツールにもなりうることを、心に留めて置く必要があるのかもしれません。

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