「韓国ドラマ」にどっぷりハマった35歳女性 お見合い中さえ、話の続きが気になり……【連載】上京女子物語(3)
東京で暮らす人の、約半数は地方の出身。皆、どのような夢を描いて上京し、どんな毎日を過ごしているのでしょうか。あなたの隣にいるかもしれない「上京女子」たちの物語をたどります。スカイツリーのすぐそばの街で 在住する人のうち、約半数が地方の出身者だという街、東京。住み慣れた土地を離れて東京へ。そのとき、どんな思いが胸に去来し、そして東京にどのようにして居場所を作っていくのでしょうか。 上京してきた独身女性に東京での物語についてお聞きします。 ※ ※ ※ 今回お話を聞いたのは押上に暮らすハルカさん(仮名)35歳。25歳のときに上京してきて、東京での生活も10年になります。上京当時は立川市、その後、仕事の関係もあって現代の墨田区押上に引っ越してきました。 地方から上京し、東京で暮らす女性は、どんなことを感じながら日々を過ごしているのか(画像:写真AC)「今の家はとても気に入っています。半蔵門線、都営浅草線、東武スカイツリーラインが使えてアクセスがいいし。渋谷だったら半蔵門線で、東京駅なら都営浅草線で1本。羽田にも1本で行ける。国内外の人が観光しやすい場所なんだな、ってあらためて思いますね」 高校卒業をしてからは出身の群馬で土木関係の企業に就職して事務の仕事をしていました。ただ、そのときに体を壊して入院してしまいます。 「朝の8時から夕方5時の勤務、土日の休み。恵まれてる、と思う人もいるかもしれませんが、決められた仕事をいつものメンバーでただ淡々とこなすというのがストレスだったんです。顔面神経症になって入院したんですよ。本当にこの働き方が合わないんだな、って思いました。それがきっかけでシフト制の仕事に就くようになりました」 病院で調理を行う仕事に転職、調理師免許を取ることができました。その後は飲食の仕事をいくつか経験し、現在はパン屋さんに勤めています。そんなハルカさんが上京したきっかけは、あることにハマッたことがきっかけでした。 好きなバンドを追っかけて東京へ好きなバンドを追っかけて東京へ「病院で調理の仕事を始めた頃から、あるバンドにハマッてしまって。ライブを見るためにずっと群馬から東京に通っていました。でも、上京すればたくさん行けるな、と思って。最初、母は反対したんですけど、当時25歳でもう大人と言える年齢だし、すでに全国を飛び回っているような娘だったので、結局は許してくれましたね」 ただ、上京したタイミングで別のジャンルに「推し」を見つけ、ライブを見るために上京したはずが行かなくなってしまったと言います。しかし、そのときにできた友達とは今も仲が良く、一緒に遊ぶこともしばしば。 ライブに足を運ぶために上京したハルカさん、しかしその後……(画像:写真AC) 25年暮らした地元を離れて、初めてのひとり暮らし。寂しくはなかったのでしょうか。 「私も最初は寂しいかな、と思っていたんですけど、もともと友達が東京にいたし、気が合う子ばかりだったので上京してきてからは楽しい思い出しかないですね」 「地元は保育園から高校までどれも廃校などでなくなってしまったので、同窓会とかもないし……。卒業して以降も会おうと思えるほど気が合う友達もできなかった、というのもあるかもしれません」 東京での生活を満喫しているハルカさん。ひとりでの生活が合っているのか、「もう誰かと一緒に暮らすのは無理かもしれない」と思っていると言います。 母親が心配しているときもあった母親が心配しているときもあった 上京してきてからいくつかの恋愛も経験しましたが、今はあまり興味がないと言います。 「上京してからできた男友達とは年に何回か食事には行きます。その人はバツイチで、これから恋愛に発展するかもしれないっていう気配がないからストレスを感じなくて楽しいですね」 「でも一度、母親に『結婚しないのか』と熱心に言われたことがあって……。母の友人の息子さんがまだ独身だから会ってみないかと言われて、何度か食事や映画を見に行ったりしたんですけど、新しく関係を始めるのが辛くって。プレッシャーがあって、その人とは会わなくなってしまいましたね」 子どもの頃から、いつも娘を気に掛けてくれた母親(画像:写真AC) 新しい関係を築いていくのにはパワーが必要になります。年齢を重ねれば重ねるほど、それが重荷に感じるときもあります。 「母親としては、娘がいまだにひとりで暮らしていることが気になったんでしょうね。お母さんたちもいつかいなくなるんだよ、ひとりになっちゃうんだよ、って。孤独が辛いんじゃないかと心配してくれていたんだと思います」 「でも最近はだんだん分かってきてくれたみたいです。寂しくないって」 東京は「生きやすい」場所東京は「生きやすい」場所 ハルカさんは今のところはこれからも東京で暮らしていくだろうと思う、と言います。 「ひとり暮らしもすごく合ってるし、今も変わらず東京を楽しめています」 「コロナ禍でも職場のパン屋は普通に営業していました。緊急事態宣言中も、ウソでしょ? というぐらい忙しかったです。で、家に帰ってからは韓国ドラマをずっと見ていましたね。ハマりすぎて寝不足になるぐらい(笑)。それがきっかけで、今も趣味のひとつになっています。すっかり詳しくなっちゃいました」 韓国ドラマにハマってしまい、デート中も続きが気になってしまうように(画像:写真AC)「母に紹介された人と会っているときも、早く帰ってドラマの続きを見たいな、と思ってるときがあったぐらい。でもそうやって過ごせているのは東京という街だからかもしれません。ひとりでいることを見逃してもらえているというか……。そういう意味で、東京は独身にとって優しい街だと思います」 30歳を過ぎて、今は人生のエピローグを過ごしているような気分だというハルカさん。そして、また違う物語を紡ぐかは自分次第だとも。 ハルカさんがまた物語を紡ぐのだとしたら、今度は一体どのようなストーリーになるのか、気になるところです。
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