小池都政が2期目突入 残された「地下鉄8号線」延伸問題は今後どうなる?
東陽町駅・住吉駅まで結ぶ計画 2020年7月5日(日)に投開票された東京都知事選挙は、現職の小池百合子候補が当選を果たしました。引き続き、4年間にわたり都政を担います。 2期目の小池都政では、新たに取り組む政策も出てくることでしょう。もちろん1期目の4年間でやり残した課題も進めることになります。 インフラ整備は、短い歳月で完結しません。1期4年間の短い時間では計画を立てるのもままなりません。 着工までこぎ着けられなくても、2期目に道筋をつけることを期待されているのが地下鉄8号線の延伸です。 地下鉄8号線とは、いわゆる有楽町線のことです。現在、有楽町線の東端は新木場駅までしか線路が敷かれていません。 江東区が働きかけている地下鉄8号線の延伸計画は、途中の豊洲駅から分岐させて、東西線の東陽町駅・半蔵門線の住吉駅までを結ぶものです。 地下鉄8号線の延伸構想(画像:江東区) 住吉駅から先の北側は、総武線の錦糸町駅を経て京成電鉄や東武鉄道の押上駅、さらに常磐線の亀有駅、そこから埼玉県に入り、最終的には千葉県野田市まで延伸することも検討されています。 江東区は地下鉄8号線を悲願としており、小池都知事就任前から実現に向けて各所に働きかけてきました。 2000(平成12)年以降、都心回帰や再開発といった要因も相まって、豊洲駅一帯は著しく人口が増加しています。住宅地としても商業地としても発展し、オフィスの増加も目立ちます。 そうした街の変化もあり、政府は豊洲へのアクセスを向上させる地下鉄路線の整備に乗り気でした。 背景にある人口減少という課題背景にある人口減少という課題 一方、地下鉄の建設は多大な費用を必要とします。豊洲~住吉間の江東区内だけの整備なら、総事業費は1500億円と試算されています。 東京メトロは、2008(平成20)年に全通させた副都心線が自社で整備する最後の路線であると、これまで繰り返してきました。 そのため東京メトロは8号線の延伸に関して、慎重な立場を取っています。 理由は、日本の人口が減少傾向にあるためです。 このほど東京都の人口は1400万人を突破するなど、いまだ増加傾向にありますが、それも頭打ちが見えています。今後、鉄道利用者数の増加は見込めません。 豊洲駅(画像:写真AC) また新型コロナ禍により、多くの企業がリモートワークを導入しました。 こうした働き方改革が定着すれば、通勤需要は大幅に減少。鉄道の利用者が減ってしまえば、新線建設の必要性はないため、今後の採算面を考えると、東京メトロは地下鉄8号線の建設に慎重にならざるを得ません。ある意味、もっともな理由と言えるでしょう。 三者三様の言い分 そこで東京メトロに代わって東京都が当該区間を建設し、東京メトロは電車を走らせた分だけ使用料を払うという方式が検討されています。 これなら東京メトロの負担は軽く済みますが、そうした方式を採用すると、今度は東京都の負担が重くなってしまうのです。 一方、地元の江東区は異なります。 豊洲には中央区築地から新しい卸売市場が移転してきました。江東区は市場を受け入れる条件として、8号線の早期実現を東京都に約束させています。 2018年に開場した豊洲市場(画像:写真AC) つまり江東区は都との約束をきちんと果たしたのだから、東京都も江東区との約束をきちんと履行してもらいたいと要望しているわけです。 LRTも検討していた江東区LRTも検討していた江東区 江東区が8号線の実現を悲願にしているのは、長らく江東区には南北間の移動ができる鉄道網がなかったことが一因にあります。 2000年に都営大江戸線が開業し、南北の鉄道移動が実現しています。それでも、大江戸線は江東区の一部しか通っていません。 江東区の位置(画像:(C)Google) そうしたことから、江東区は区内の一体性を強化することや地域振興を理由にさらなる南北鉄道網の充実を目指し、8号線の早期実現を目指しているのです。 ほかにも江東区は南北の鉄道網を整備しようと、貨物専用線として使用されていた越中島支線を次世代型路面電車(LRT)に転換することも検討していました。 昨今、江東区は両方を同時に進めるのではなく、まずは需要の高い地下鉄8号線に道筋をつけることを優先するように方針転換を図っています。 今後の話し合いで解決 小池都知事の再選が決まったことで、江東区は以前よりも強く8号線の実現を求めることになるでしょう。 小池百合子・東京都知事(画像:東京都麺類協同組合) 東京都・東京メトロ・江東区、そして東京メトロの大株主でもある国(財務省)の4者の意見は異なるものの、それらは今後の話し合いで解決していくことになります。 8号線の実現は江東区のみならず、墨田区や葛飾区、埼玉県・千葉県にも関係があります。そうしたことからも、多くの自治体が今後の議論の成り行きに注目しているのです。
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