行政書士の試験合格後はどうする?登録の要不要など詳しく解説

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行政書士の試験合格後はどうする?登録の要不要など詳しく解説

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行政書士の試験に合格した人の「行政書士の資格を今後どう活用しようか?」「行政書士の登録は必要なのか?」「行政書士の登録手順を知りたい!」といった疑問を解消します。本記事では、行政書士の試験合格後の進路や登録手順やポイントについて解説しました。

 頑張って行政書士の試験に合格したものの「行政書士の資格を今後どう活用しようか?」「行政書士の登録は必要なのか?」と考えている人も少なくないでしょう。

 本記事では、行政書士の試験合格後に登録が必須であるか、登録の手順や期間、料金などについて、解説します。

 また、最後に行政書士と合わせて取得したい、おすすめの資格も紹介しているので、ぜひ参考にしてください。

行政書士試験の合格後は登録が必須?

 行政書士の試験に合格しただけでは、行政書士とは名乗れません。試験合格後に行政書士会へ登録することで、行政書士と名乗り業務を行うことが可能となります。

 一方で、行政書士業務をまだ行わない場合は、行政書士会への登録は不要です。合格者の全員に対して、行政書士会への登録の義務付けはありません。

 実態としても、行政書士の試験に合格した人のうち、半数以上が行政書士会に登録していない状況です。

 少し前のデータにはなりますが、平成29年の合格者数6,360人に対して、平成30年度の新規登録者数1,977人となっています。

 約3割しか登録していないことが分かります。

 合格後に行政書士会への登録する人が少ない理由として、登録料や入会金が高かったり、登録手続きが手間だったりすることが挙げられます。

 また、合格してから登録までの有効期限がないことも理由のひとつです。

 行政書士業務を開始しようとしたときに、登録する人も多いでしょう。これらの登録に関する詳細について詳しく解説していきます。

行政書士試験の合格から登録までに有効期限はある?

 行政士試験の合格から登録までに有効期限はなく、一度合格すればいつでも申請・登録が可能です。

 行政書士の試験に合格した人は生涯にわたって資格を保有でき、他の資格のように更新する必要はありません。

 また、行政書士会に登録をすると、登録完了した時点から、継続的に行政書士会や政治連盟会への月会費が発生します。

 そのため、独立や開業を考えていて、少し期間がある人については、準備が整ったタイミングで行政書士会へ登録する方が良いでしょう。

行政書士会への入会・登録の手順

 それでは、実際に行政書士会に入会・登録する手順について、解説していきます。

 具体的な手順と注意点については、以下の通りです。

  • 行政書士登録申請書の入手
  • 行政書士会に申請書を提出
  • 申請から登録までの日数
  • 登録が拒否される場合もある

 それぞれの手順と注意点について、詳細に見ていきましょう。

行政書士登録申請書を入手

 まずは、行政書士の登録に必要な「行政書士登録申請書」を入手します。

 「行政書士登録申請書」の入手方法には、以下2つの方法があります。

  • 日本行政書士会連合会または各都道府県行政書士会のサイトから様式をダウンロードする
  • 開業予定の事務所が在る都道府県の行政書士会の窓口でもらう

 どちらの方法で入手しても問題ありませんが、営業時間を考慮したり、移動する手間を考えたりすると、サイトからのダウンロードが簡単です。

 最近では、Web上に記載内容の見本や書き方を解説しているサイトもあるので、比較的簡単に記載できます。

 しかし、自分で調べるのが苦手で直接聞きたい場合は、窓口で入手した際に質問すると良いでしょう。

 開業予定の都道府県行政書士会に直接訪問することで、この機会にあいさつをして顔を覚えてもらえるメリットもあります。

行政書士会に申請書を提出

 次に、行政書士登録申請書とその他の必要書類を準備して、開業予定の事務所が在る都道府県の行政書士会に提出します。このとき書類の提出と同時に、登録費用の支払いも行います。

 提出する書類はかなりの種類があり、なかには聞いたこともないような書類もあります。

 例えば、登記されていないことの証明書とは、成年被後見人ではないことを証明する書類で法務局の本局で入手が必要です。

 書類の不足や誤りが見つかると、審査が長引くため、事前にしっかりと確認するようにしましょう。

 主な申請書類を、参考として一覧にまとめました。

 各都道府県の行政書士会に応じて、種類や枚数も異なるため、事前に開業予定の行政書士会で確認してください。

No提出書類
1行政書士試験合格証原本
2戸籍謄本
3住民票
4行政書士登録申請書
5履歴書
6誓約書
7都道府県行政書士会への入会届
8登記されていないことの証明書
9身分証明書
10事務所の使用権限を証する書面(賃貸借契約書など)
11事務所の写真・位置図
12本人の証明写真

申請から登録までの日数

 すべての申請書類を提出してから登録完了するまでには、審査を受ける必要があります。この審査には、おおむね1〜2カ月かかります

 また、書類の提出は予約制のため、1日に数名しか受け付けていません。

 そのため、自分のタイミングで提出しに行こうと思っても、予約が埋まっていて、思うように提出できない可能性もあります。

 このように、予約と審査に時間が掛かることを見越して、開業予定日が決まっている場合は早めの申請を心掛けましょう。

登録が拒否される場合も

 通常、審査の中では事務所の現地調査が行われます。

 これは「事務所として実態があるか」「申請書類と相違はないか」「職務を問題なく遂行できる状態か」など、欠格事由がないかを調査されます。

 調査員は、申請書類と相違や虚偽申告がないかを、申請書類と現地を見比べながら確認していきます。

 このとき、誤りや不十分な事項があると、審査にさらに時間を要する可能性があります。

 最悪の場合、登録拒否される可能性もあるため、現地調査の際には申請書類と現地で相違が無いように、事前にしっかりと準備しておきましょう。

行政書士会への登録料と月会費

 次に、行政書士になるにあたって、行政書士会への登録に必要な金額について、解説していきます。

 登録に必要な費用は、以下2点です。

  • 行政書士会の登録料
  • 行政書士会の月会費

 それぞれの費用について、詳しく見ていきましょう。

行政書士会の登録料

 行政書士会への登録にあたっては、登録料が必要となります。登録料とは、入会金と登録手数料の合計のことで、各都道府県の行政書士会への費用です。

 この登録料は、都道府県によって金額が異なるため、正確には事務所所在地の行政書士会のホームページで確認するようにしてください。

 今回は東京都を例として、解説を進めていきます。

 東京都の登録料(入会金と登録手数料)は、22万5千円です。

 これは登録申請前に、一括で指定口座に振り込む必要があります。

費用名金額
入会金20万円
登録手数料2万5,000円

 上記の登録料とは別で、行政書士会へ入会するためには、登録免許税やバッジなどの、その他費用もかかります。その他費用の合計としては、約7万円です。

費用名金額
登録免許税3万円
月会費前払い分(3カ月分)2万円
バッジ3,000円
名刺4,000円
帳票類(領収書、事件簿など)数百円
職印(行政書士の印鑑)5,000円

 このように行政書士会へ登録する際には、登録料とその他費用を合わせて、合計30万円程度が必要です。

行政書士会の月会費

 行政書士会に登録すると、月会費がかかります。

 月会費とは、行政書士会の会費と政治連盟の会費の合計額で、登録料と同じく、各都道府県ごとの行政書士会により、金額が異なります。

 月会費についても、東京都を例に解説していきます。

 東京都の月会費は月7,000円で、3カ月分まとめて振込みか引き落として支払います

 月会費の支払いは必須のため、支払いができない場合は廃業や資格停止の措置が取られます。

会費名金額
行政書士会費6,000円
政治連盟費1,000円

 また、月会費とは別に支部会費の支払いも必要です。支部会とは、各都道府県よりさらに細かな、区や市の単位の行政書士会です。

 この支部会についても、自分で選んだり、拒否したりはできず、強制的に所属することになります。

 支部会の会費としては、支部によって異なりますが、およそ年間1万円です。

 支部によって6,000円程度のところもあるので、支部によっては倍近くの差になる可能性もあります。

登録する気がなくても試験を受けていい?

 ここまでの説明を聞いてみて、登録のハードルは意外と高いと感じた方もいるでしょう。

 一方で、登録はハードルが高いからしたくないけど、行政書士の資格試験は受けたいという方もいると思います。

 そのように今すぐ登録する気がない方でも、試験を受けることは無駄ではありません

 仕事はもちろん日常生活においても、法律知識は必要となるため、法律に関する勉強をすることで自分の役に立つでしょう。

 また、行政書士は難易度が高い資格ではありますが、誰でも受験可能なため、合格することで自分の自信にもつながります。

 行政書士に合格しておくことで、転職や就職で有利になったり、独立や開業を考えたときにすぐに開業できたりするメリットもあります。

 このように、登録を考えていなくても、行政書士の資格取得をする意義は十分にあるといえるでしょう。

将来性を考えてダブルライセンスの取得も視野に

 行政書士は、行政への申請書類作成など独占業務もあるので、独立を狙うことは可能です。

 しかし、毎年5,000人近くの人が合格するなど、合格者も増え続けています。

 そのため、将来的に周囲との差別化を図るために、ダブルライセンスの取得を視野に入れることは大切です。

 とくに、行政書士は業務の幅も広く、他との業務との親和性が高いため、ダブルライセンスに向いています。

 ここからは、行政書士と相性の良い、おすすめの資格を六つ紹介します。

  • 司法書士
  • 中小企業診断士
  • FP
  • 宅建士
  • 税理士
  • 社労士

 それでは、それぞれの資格について詳しく解説していきます。

司法書士

 司法書士は、行政書士と公的機関への申請書類の作成及び申請代行などの「書類作成のプロ」という共通点があります。

 2つの士業の違いとしては、行政書士が市役所などの官公署に向けた書類を提出するのに対して、司法書士では、検察庁や法務局、裁判所へ提出する書類を作成します。

 行政書士は、主に許認可申請や権利義務などの書類作成など幅広い業務を行いますが、司法書士は登記や供託、相続などにおいて、独占業務として後見人や訴訟業務の一部まで担当できます。

 司法書士の方がより専門性の高い業務といえます。

 しかし、相続や会社設立など活躍する分野は重なることも多いため、どちらも取得することで「書類作成のプロ」としてワンストップで提供可能となります。

 超難関資格といわれる司法書士を取得できれば、他との差別化を図れるでしょう。

▼司法書士についてはこちらの記事で詳しく解説しています

中小企業診断士

 中小企業診断士は、企業の経営や財務の状況を分析し、適切なアドバイスやフォローアップする経営コンサルティング業務を担う国家資格です。

 中小企業診断士では、中小企業を中心に経営やマネジメント、事業戦略策定などを行うため、経営者を顧客に持つ行政書士とも親和性が高いといえます。

 中小企業診断士の取得によって、会社設立や許認可申請を行う顧客に対して、戦略サポートや経営コンサルティング業務によって、業務の幅も一気に広がるでしょう。

 このように、行政書士の業務で獲得した顧客からビジネスチャンスを広げ、本格的な経営コンサルタントを目指すことも可能です。

FP

 FP(ファイナンシャルプランナー)は、税金や相続、年金などの幅広い金融知識で、個人の家計や事業主の税金対策などの資産運用をサポートする、お金の専門家です。

 行政書士においても、事業継承や債務整理など顧客のお金に関わる業務は広く請け負います。

 そのため、税金対策や家計管理などに強みを持つFPとの相性は、非常に良いです。

 FPとのダブルライセンスが生きるのは、遺言や相続に関わる業務において、書類作成だけでなく相談・手続きを一貫して請け負い、業務領域を広げられる点です。

 また、お金に関するデリケートな問題へのケアを行えるアドバンテージもあります。

▼FP(ファイナンシャルプランナー)についてはこちらの記事で詳しく解説しています

宅建士

 宅建士(宅地建物取引士)は、不動産契約の重要事項説明や記名を担う、不動産に関するスペシャリストです。

 行政書士の中でも、不動産や相続の手続きに特化して取り扱う場合に、宅建士とのダブルライセンスが生かせるでしょう。

 特に、遺言書作成や遺産相続の相談のなかでは、土地の売却などが絡むことも多いです。

 そのとき、宅建士が持つ不動産や権利に関する法的知識と資格保有をアピールすることで、安心感も与えられます。

 また、宅建士の資格そのものが不動産業界に強いので、不動産業界への転職の際には、大きな武器となります。

▼行政書士と宅建士のダブルライセンスについてはこちらの記事で詳しく解説しています

税理士

 税理士は、税務書類の作成および相談、代理などを独占業務とする、税務に関するエキスパートです。

 税理士は、税務書類に関する作成、代行だけでなく、税務の豊富な知識を生かして経営コンサルティング業務を行う人も少なくありません。

 一方で、行政書士は独占業務として開業やスタートアップ事業の許認可申請代行があります。

 税理士とのダブルライセンスによって、開業前の許認可サポートから開業後の税務、経営コンサルティングまで、スタートアップのサポートをすることが可能です。

▼行政書士と税理士のダブルライセンスについてはこちらの記事で詳しく解説しています

社労士

 社労士(社会保険労務士)は、人事及び労働や社会保険の豊富な知識で企業をサポートする、労働問題・社会保険の専門家です。

 雇用保険や健康保険、年金などの法的事務や相談、手続き代行などは、社労士の独占業務。

 行政書士とは業務範囲として重なるところも少なく、ダブルライセンスによって活躍できるフィールドが一気に広がる可能性があります。

 具体的には、会社設立における許認可申請を行った顧客に対して、設立後の雇用保険や賃金・報酬制度に関わり、サポートを行うことも可能です。

 このように、会社設立から設立後までワンストップサービスとして、継続的にサポートを行える強みがあります。

▼行政書士と社労士のダブルライセンスについてはこちらの記事で詳しく解説しています

まとめ

 行政書士の業務を行うためには、行政書士会への登録が必須です。

 一方で、行政書士の業務をすぐに行わない場合、登録は不要です。

 実際に、半数以上の試験合格者が「登録の手続きが手間」「登録料が高い」などの理由から、登録をしていません。

 行政書士会の登録のポイントは以下のとおりです。

  • 行政書士資格の有効期限の設定はない
  • 書類の準備や審査に1~2カ月かかるので、早めの準備が必要
  • 登録に必要な費用は約30万円、月会費は7,000円程度

 また、将来性を見据えるなら、行政書士の合格者の中には差別化を図るため、ダブルライセンスをやはり取得しようと試みる人も増えています。

 ダブルライセンスの取得により、コンサルやワンストップサービスといった業務領域を広げることが可能です。

 これから自分の目指す領域を定めて、ダブルライセンスも視野に入れて、ぜひ今後の進路について検討してみてください。

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