ヤクルトの本拠地「神宮球場」はどうなる? 100年の歴史を超えて大型リニューアルへ

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ヤクルトの本拠地「神宮球場」はどうなる? 100年の歴史を超えて大型リニューアルへ

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シカマアキ

旅行ジャーナリスト、フォトグラファー

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ヤクルト・スワローズの本拠地として有名な明治神宮球場。2026年に創建100周年を迎え、大々的に明治神宮外苑エリア全体をリニューアルする計画が進んでいます。工事期間中、プロ野球などの試合を中断させることなく新球場を建設、周りは緑をできるだけ残した憩いの場になるもよう。神宮球場の歴史とこの先どうなるのかをシカマアキさんが解説します。

2026年に100年、これを機に外苑エリア全体リニューアル計画

明治神宮野球場の外観(画像:photoAC)



東京都新宿区の明治神宮外苑にある明治神宮野球場、通称「神宮球場」が、2026年に創建100周年を迎えます。アマチュア野球の聖地であり、プロ野球の東京ヤクルト・スワローズの本拠地としておなじみの場所です。

築90年を超える歴史ある神宮球場ですが、2020東京オリンピック・パラリンピックの開催後、新球場を建設し、明治神宮外苑エリア全体をリニューアルする計画が進められてきました。

新球場の完成は2031年、利用開始は2032年の予定。工事期間中、プロ野球などの試合の中断はありません。

これまで歩んできた100年近くの歴史と現在、そして今後どう生まれ変わるのかなどを紹介します。

戦前から学生野球の聖地、米軍接収後にヤクルト球団が本拠地に

「明治神宮野球場」の球場史によると、1924(大正13)年10月25日に明治神宮外苑に旧・国立競技場が完成。その後、野球場は1925(大正14)年12月に工事開始、翌1926(大正15)年10月22日に竣工(しゅんこう)しました。

明治神宮野球場での試合風景イメージ(画像:photoAC)

その2日後の10月24日、東京六大学野球リーグ戦で神宮球場が初めて使用されたのをはじめ、全国都市対抗野球大会、東都大学野球リーグ戦なども開催。1934(昭和9)年11月4日には、ベーブ・ルースを主将とするアメリカ大リーグの選抜チームが来日し、神宮球場で試合が行われました。

太平洋戦争時、神宮球場は東京都の貯蔵倉庫として薪炭や建築資材などが格納されていました。1945(昭和20)年5月25日の空襲を受けて球場全体が燃え、鉄骨の残骸がわずかに残るのみという惨状に。終戦後は明治神宮外苑が米進駐軍に接収されました。

1952(昭和27)年の接収解除後、プロ野球の試合も行われるようになり、1964(昭和39)年から国鉄スワローズ、現在の東京ヤクルト・スワローズが本拠地を置いています。2016(平成28)年11月5日には、東京六大学選抜と東京ヤクルト・スワローズが対戦した「明治神宮外苑創建90年記念奉納試合」が行われました。

名物「イチョウ並木」はそのまま、さらに緑豊かな空間に

もうすぐ100年を迎える神宮外苑エリア。東京都による「東京2020大会後の神宮外苑地区のまちづくり指針」をもとに、三井不動産、明治神宮、日本スポーツ振興センター、伊藤忠商事の4社による「神宮外苑地区まちづくり」プロジェクトが、2022年5月19日に発足しました。

東側から計画地を望むイメージパース(画像:三井不動産HPより)

このプロジェクトでは、次の100年に向けたさまざまな「緑化」を計画。球場関連では、築60年で神宮球場に隣接する「神宮第二球場」をまず解体し、ドーム型のラグビー場を新たに建設。その後、築74年の「秩父宮ラグビー場」を解体してその場所に新球場を建設します。そして、今の神宮球場は解体され、ここに広場ができる予定です。着工時期は2024年、エリア全体の竣工時期は2036年の予定となっています。

神宮外苑のシンボルである、絵画館に向かって伸びる4列の「イチョウ並木」は、すべて保全される計画です。しかし、秩父宮ラグビー場に続く横道にある18本のイチョウは伐採もしくは植え替えの可能性も。野球場とラグビー場の間に1.5ヘクタールの中央広場が整備され、聖徳記念絵画館前の西洋庭園も再生されるなど、緑豊かな空間が生まれます。

多くが樹齢100年超の今ある約1900本もの樹木はできる限り保全され、新たに1000本近くを植樹。やむを得ず伐採される樹木に関しては、外苑内のベンチやたい肥・ウッドチップなどに活用されるとのこと。広場などは東京都立明治公園と合わせ、大規模災害時の防災拠点としても活用されます。

神宮外苑のイチョウ並木(画像:photoAC)

都心の一大緑化スポットとして生まれ変わる

神宮球場に野球を観に行くたび、昔と変わらないある意味「昭和」な雰囲気は、個人的にもとても気に入っています。一方で、全国にある他の新しく立派な球場と比べると、設備もろもろ「古いな」という感じが、やはり否めません。ネットの接続環境もすこぶる悪いです。耐震対策や新たなシートなどその都度でリニューアル工事が実施されてきたものの、ただの改良だけでは限界なのでしょう。

新たな外苑エリアには、今ある緑の空間がさらに増えるとのこと。野球場もラグビー場も、まったく新しい建物となります。野球場のバックネット裏には地上14階建てのホテル棟の建設も。ただ、「イチョウ並木が新球場に近すぎる」「今ある樹木は伐採すべきでない」などの声も根強くあります。現在の計画がまた若干変更される可能性もあり、今後の推移に注目したいところです。

東京上空から見た現在の国立競技場や明治神宮外苑エリアなど(画像:photoAC)

■明治神宮野球場
所在地:東京都新宿区霞ケ丘町3-1
アクセス:東京メトロ銀座線 外苑前駅より徒歩約5分
JR 信濃町駅より徒歩12分/JR 千駄ヶ谷駅より徒歩15分
都営大江戸線 国立競技場駅より 12分

参考
・明治神宮野球場公式サイト
・三井不動産 神宮外苑まちづくり準備室サイト
・東京2020大会後の神宮外苑地区のまちづくり検討会(東京都都市整備局)

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