閑静な住宅街に突如現れた、高級食パン屋「どんだけ自己中」 なぜその名前に?

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閑静な住宅街に突如現れた、高級食パン屋「どんだけ自己中」 なぜその名前に?

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飛ぶ鳥を落とす勢いの高級食パンブームのなか、新たな高級食パン専門店「どんだけ自己中」が荻窪に誕生しました。どんなお店なのでしょうか。取材に向かいました。

プレオープンの日は、開店前に「完売」

 清瀬市や横浜市菊名の「考えた人すごいわ」、中野区の「うん間違いないっ!」、北海道札幌市の「乃木坂な妻たち」。近年、パン屋らしからぬ衝撃的な名前を冠した高級食パン屋が増えています。

 これらのパン屋のプロデュースに携わるのは、ジャパンベーカリーマーケティング(横浜市)の代表取締役社長であり、ベーカリープロデューサーの岸本拓也さん。自らも、13年続くベーカリーのオーナーを務めながら、全国のさまざまなパン屋をプロデュースしています。

 そんな岸本さんプロデュースのもとで、新たなパン屋が荻窪に誕生しました。その名も「どんだけ自己中」。会話を切り取ったかのようですが、正真正銘、パン屋の名前です。しかも、高付加価値の高級食パン――。

4月5日にプレオープンし、4月6日に本オープンした「どんだけ自己中」(2019年4月5日、高橋亜矢子撮影)



 プレオープン日である2019年4月5日(金)、取材に向かったところ、その存在感の強さに圧倒されました。まず、店の姿が見えないうちから、周囲には芳醇なパンの香りが充満。さらに、白い看板に黒く大きく書かれた「どんだけ”じこちゅー”」の文字が、強烈なインパクトを醸しており、振り返る人や写真撮影する人も見受けられました。

 開店時刻(この日のみ12時)に訪れた時には既に、店頭に「本日分は完売しました」と書かれた看板が置かれ、そうとは知らず詰めかけるお客ひとりひとりに丁重に説明をする店の人の姿もありました。「もう売り切れちゃったのね」「また来ようかしら」とひとりふたり立ち去るとともに、新たなお客が「パン、もうないんですか?」と詰めかけ、てんやわんや。

 この日、用意されていた食パンは100個。ですが、8時半からでき始めた行列は、みるみるうちに150人へと拡大し、開店を前にして、整理券が終了したそうです。

居酒屋を展開してきた会社の挑戦 「食パンを売るのは初」

 同店で販売される食パンは、プレーンの「自己中な極み」(800円)と、サンマスカットレーズンを練りこんだ「自己中アンサンブル」(980円)の2種類で、テイクアウトのみ。どちらも、厳選した小麦粉をはじめ、国産バターや生クリーム、京都の老舗「金市(かねいち)商店」の蜂蜜を使用しているといいます。

執行役員 登神(とうしん)さん(2019年4月5日、高橋亜矢子撮影)



 そんな同店の運営元は、ジャパンベーカリーマーケティング(JBM)とは別会社のリディファインダイニング(渋谷区桜丘町)。JBMとの間で「パン屋をつくろう」と合意ののち、JBMからの提案を吟味、選択し、運営を行なっています。

 同社は飲食事業を手がけていますが、これまでに展開してきたのは、京風もつ鍋などを扱う「もつ吉」や、鶏肉料理の「とり吉」、魚料理の「うお吉」など、「居酒屋事業」ばかり。食パンは初といいます。なぜ、同社は「居酒屋」から「食パン」へと乗り出したのでしょうか。

「代表も私も、常に『新しいことをやりたい』という思いを抱いていました。テイクアウトの業態も今回が初めてです。居酒屋ですと、お客様の滞在時間は約2時間。一方テイクアウトは、ほんのわずかな時間です。その『一瞬』で、どれだけ出来るのかをやってみたいと考えました」

 そう話すのは、同社の執行役員 登神達朗(とうしん たつお)さん。実家は寿司屋。小学生のころから家業を手伝ったのち、鉄板焼きやイタリアン、銀座のホテル、さらに居酒屋で接客業に従事。一個人としても、パン屋は初めてという登神さんですが、パン自体は元々好きだったといいます。さらに家族も。

「妻がパン屋で働いていまして。姉も、姉の旦那さんもパン屋さんなんです。パンが好きだなぁというのはずっと言っていたのですが、改めて社内でプレゼンを行い、新しい事業として一任させてもらえることになりました」

 なお、「どんだけ自己中」のある場所は、元々は同社の居酒屋「うお吉」の実店舗だったといいます。「ここは、駅と住宅街との途中にあります。そのため、周辺住民にも視認されやすい。『うお吉』は、パン屋を開店させるために閉店し、近隣にある系列店『もつ吉』にメニューだけを『移転』させました」と話します。

衝撃的な名前の由来は?

 ところで、一度見ると忘れられそうにない、衝撃的な名前の由来は何なのでしょうか。発案はプロデューサー岸本さんですが、そのきっかけは会話の一端にあったのでは……と登神さんは予測します。

「弊社の居酒屋の厨房で働く職人さんたちは、本当にこだわりが強くて、ある意味『自己中』なんです。悪い意味ではありません。良い意味で自分を持っていて、妥協のない人たちばかりなんです。そんな状況に対し、代表と僕が口癖のように『どんだけ自己中やねん』と言っていたのですが、おそらく、その会話が岸本さんに引っかかったのでは……と考えています」(登神さん)

「どんだけ自己中」で販売される食パン(2019年4月5日、高橋亜矢子撮影)



 岸本さんから、店名のプレゼンを受けた当初は「僕らも、違和感があったんです。大丈夫だろうかと。ですが、プレゼンから1週間後に上がってきたデザイン(紙袋などのビジュアルイメージ)を見た時に、名前とイラストがぴったりとリンクして。シナジー(相乗効果)を起こしているように感じました」とのこと。

 肝心の食パンの味ですが、名前の通り、「自己中と思われても構わない! 誰が何を言おうと自身で納得した食材しか使用しないと決めて作った、口どけのよいキメ細かな食パン」だといいます。試作を重ねる際にこだわったのは、「甘み」や「耳まで食べられるやわらかさ」。

「味に『甘みが欲しい』とずっと言っていました。甘みが食べ終わるまで感じられて、また食べたくなるような。材料を1%、2%変えるだけで、微妙ながら、確実に味が変わるんです。『最後の抜け感がちがう』『味がちょっと薄い』とか言いながら、味のバランスをとっていきました」

 そんな食パン、「むしろ焼かないで食べてほしい」といいます。

「買ったその日に食べるのであれば、焼かないで食べることをおすすめします。熱々で食べるよりも、ちょっと冷めている状態で食べる方が美味しいんです。冷めている方が、食パンの風味をしっかり感じられるんですよ」

 常温で食パンを食べるとは意外です。でも、確かに、焼きも、温めもせず、そのまま食べると、口の中に旨みや甘みがこれでもかと溢れ、どことなくパンケーキのようでもありました。

 販売するパンの数は、オーブンの数に限度があるため、莫大に増やすことは難しいものの、徐々に増やしていくとのこと。また。食パン屋業態の今後については、「物件との相性があえば、考えていきたい」といいます。

※パンの予約はできません。混雑状況により、整理券が配られる可能性があるとのこと。
※掲載の内容は、2019年4月時点の情報です。

●どんだけ自己中
・住所:東京都杉並区荻窪4-20-15
・アクセス:JR「荻窪駅」南口、丸ノ内線「荻窪駅」南口から徒歩5分
・営業時間:10:00~19:00(商品なくなり次第終了)
・定休日:不定休
・電話番号:03-6383-5353

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