東大やIT企業とも連携。渋谷から世界に羽ばたく子どもが生まれるかも

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東大やIT企業とも連携。渋谷から世界に羽ばたく子どもが生まれるかも

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日野京子

エデュケーショナルライター

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「渋谷」というと思い浮かぶのは、ハチ公やスクランブル交差点。流行の最先端をいく渋谷区で、公教育でも最先端をいく取り組みが始まりました。エデュケーショナルライターの日野京子さんが解説します。

渋谷はいつも最先端を行く街(画像:photoAC)



 渋谷といえば若者の街の代名詞。渋谷区は流行の発信地でもあり、「原宿」や港区の北青山と南青山界隈を含めた「表参道」のような個性あふれるエリアも存在しています。
時代の最先端を行くイメージの強い渋谷ですが、実は公教育でも他の自治体に先駆けた取り組みを行っています。
 日本では珍しい「秀でた才能を持つ子どもの能力を引き出すプログラム」が自治体主導で実施されているのです。

渋谷区が東大の研究センターと連携

 日本の公教育は良し悪しは別にして「一斉授業」が常識です。近年は、算数といった苦手な子がいる教科では習熟度別に分けることも珍しくありません。しかし、基本的に一人の先生が35人前後の生徒を教えるスタイルです。

子どもにあった学びかたを(イメージ画像:photoAC)

 欧米の小中学校のように何かの分野に突出した才能を持つ子ども、通称「ギフテッド」と呼ばれる子どもが飛び級をしたり、才能を伸ばす教育システムはありません。

 渋谷区ではこうした飛び級システムは導入していませんが、「全般的または特定の分野で高い能力を発揮する子ども」に対し、東京大学先端科学技術研究センターと連携した特別なプログラムを2017年9月からスタートしています。

 その教育の舞台となる「渋谷区ラーニング・リソースセンター」は東京大学先端科学技術研究センター・人間支援工学分野が渋谷区から委託を受け、子どもたちにあった学びの方法や環境を提案する場所です。

 対象となるのは渋谷区の公立小学校4年生から公立中学校3年生の児童生徒です。普通学級または特別学級、特別学校も関係なくこの条件に当てはまっていればセンターに登録ができます。

 現在は、

・ABLプログラム
・ICTプログラム
・親子セミナーと講演会

という3種類のプログラムで編成されています。
 個性的な才能を持つ子ども達の能力を伸ばすだけではありません。読み書きが不得意な子がICT機器を使った学習スタイルを学ぶといった、学校では体験できないプログラムも開講されています。

※ICT:人とのコミュニケーションにおいて活躍する情報通信技術。

一斉スタイルからの転換期

ICTで学ぶ(イメージ画像:photoAC)

 日本の公教育、義務教育では同学年の子が同じ学習を理解度に関係なく机に座って机に向かい勉強する形式が脈々と受け継がれてきました。
少数ではあるものの、飛びぬけた才能を持つ子ども達にとっては学校の授業は退屈で、才能を埋没させてしまうという問題点を指摘する声は少なからずありました。

 「同じ学年」というだけでくくられると、せっかくの才能を伸ばす機会を失いかねません。とはいえ、同調圧力が強い国民性の日本で欧米のような飛び級を公教育で取り入れることは難しいものがあります。

 子どもは一人一人個性があることは誰もが知るところですが、公教育で「個性を伸ばす教育」を実施することは不可能に近いです。

 コロナ禍を契機に「一人一台ずつICT機器」というGIGAスクール構想がほぼ達成し、児童生徒一人一人に合った学び方ができる環境が整いつつあります。
とはいえ、これまでずっと一斉授業しかやってこなかった教育現場で「パソコンを活用して各自で必要な学びを行う」がスムーズに浸透することは難しいと予想されます。

 そうした中、渋谷区の取り組みは今後の教育の在り方を見直す先進的な取り組みと言えるでしょう。「渋谷区実施計画2020」では、教育方針の一つとして「新たな教育課題への対応の充実」として渋谷区ラーニング・リソースセンターでの「特別な才能に着目した新たな教育システムの構築」を記しています。

将来を担う子ども達に機会を与える

将来を担う子どもたち(イメージ画像:photoAC)

 渋谷区の取り組みは外部機関での実施ですが、ラーニング・リソースセンターでのプログラムで培った指導は学校現場での指導にも役立ちます。サポート例として「特別支援教室利用の子どもへの学習支援方法の提案」「授業でABLを導入する方法のレクチャー」「校内研修の実施」がホームページで紹介されています。

 閉鎖的とも揶揄(やゆ)される公教育で外部との連携が進み、児童生徒にとってプラスになることを積極的に導入することは画期的なことです。

 また、渋谷区は東京を代表する繁華街のある自治体である一方で、IT企業が集まるビジネス街の顔も持っています。

こうした街の特色を活かし、渋谷区は「東急」「サイバーエージェント」「DeNA」「GMOインターネット」「ミクシィ」の5社とプログラミング教育を協定し2019年度から「Kids VALLEY 未来の学びプロジェクト」をスタート。地の利を活かし、官民連携で児童生徒にプログラミング教育を提供しITに対する啓蒙活動や人材育成を目指しています。

渋谷駅東口を出たビル街(画像:photoAC)

 渋谷と言えば「スクランブル交差点」「ハチ公」が思い浮かび、区内でも様々な個性的なエリアがある日本でも指折りの最先端の流行をいく街です。渋谷区の公教育の方針は、そうした街のイメージと同じように他の自治体の先を行くものになっています。

 これまでの公教育をいきなり変えていくのは難しいものがありますが、渋谷区の取り組みは今後他の自治体にも広がるのか注目したいです。

参照
渋谷区ラーニング・リソースセンター 

渋谷区「渋谷区実施計画2020」(37P/174P)

しぶやの教育

PRTIMES「渋谷区立小中学校における官民連携プログラミング教育支援プロジェクト「Kids VALLEY 未来の学びプロジェクト」が初の通年実施を経て授業支援3年目に突入!」

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