あの「すかいらーく」はどこ行った? ひっそりと歴史に幕を下ろしたファミレス、背景にコロナも?

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あの「すかいらーく」はどこ行った? ひっそりと歴史に幕を下ろしたファミレス、背景にコロナも?

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 すかいらーく、ファミール、馬車道…そういえば、最近見かけないという思い出のファミレスは実はひっそり、歴史に幕を下ろしているのかもしれません。あなたの「懐かしい!」お店は?

「すかいらーく全店閉店」の衝撃

 ファミレスの草分け的存在である「すかいらーく」が2009年、初出店から39年の歴史にひっそりと幕を下ろしていたことをご存じでしょうか。

家族連れに根強い人気のファミリーレストラン(画像:AC)



 ガストやジョナサン、バーミヤンなど多くのブランドを抱えるすかいらーくグループ。外食チェーン店の最大手と言えるすかいらーくには、かつて、その名も「すかいらーく」というファミリーレストランがあったことを覚えているでしょうか。

 すかいらーくは1970年、日本初のファミレスとして、東京都府中市内に第1号店をオープン(現:ガスト国立店。JR谷保駅より徒歩7分)。その後、わずか5年後の1975年には100店舗を達成し、外食業界をけん引。郊外中心に店舗を展開し、700店舗を超えるまでに拡大しました。

 しかし、1970年代前半と言えば、マクドナルドやケンタッキー・フライド・チキンといったファストフード店が台頭し始めた頃。「ファミレスで家族団らん」というライフスタイルが大きく変わろうとしていた時代でもあります。すかいらーくはバブル崩壊後の1990年代には時代の波に合わせて、低価格路線へとかじを切り、徐々に「ガスト」へと姿を変えていきます。そして、ついに2009年10月29日、埼玉県川口の店舗(現:ガスト川口新郷店)を最後に、レストランとしてのすかいらーくは営業を終了。グループ名が残るだけとなったのでした。

家族思い出の原風景、イトーヨーカドーの「ファミール」

 コロナ禍直前の2019年9月に全店閉店したのが「ファミール」です。ファミールはイトーヨーカドーグループ(現セブン&アイホールディングス)のレストラン部門として、1972年にオープン(千葉県松戸市)。その後、200店舗近くを数えるまでに拡大した「スーパーの中のファミレス」です。

 家族で訪れる大型商業施設内の店舗というだけのことはあり、メニューはハンバーグやスパゲッティーなどの洋食に加え、天ぷらやそばといった和食も充実。施設内を飛び出し、道路沿いなどに単独店舗を構えるほどに愛されていました。

ファミリー層が愛したファミールも次々閉店(画像:PIXTA)

 しかし、そんなファミールも、イトーヨーカドーが業界最大手のイオンに押されて閉店が相次ぐとともに段々と姿を消し始め、2019年3月には都内最後の店舗だった新武蔵境店(JR武蔵境駅より徒歩3分)が閉店。9月には日本全国的に閉店となったのです。ちなみに、ファミール新武蔵境店の現在の姿は奇しくも、すかいらーくグループの一つ、ガストになっています。

 家族そろっての買い物、その後、みんなで食事という懐かしの風景を支えたファミールはデニーズやサイゼリヤなど別の店へと姿を変え、ついに思い出の中だけのものになってしまいました。

Sガストも、CASAも……2020年、押し寄せるコロナの波

 2020年、世界中の外食産業に大きな陰りが見え始めます。新型コロナウイルス感染症の拡大です。

 感染の「急所」が外食にあるとにらんだ日本政府は度重なる営業自粛や時短、国民への外出自粛要請を行い、そのたびに外食産業は壊滅的な打撃を受けることに。「家族団らん」から「個の時代」へと移り変わろうとしている今、ただでさえ安泰とは言い難かったファミリーレストランにとって、コロナの波はあらがうのが難しいほどの大津波となったのです。

いつしか、ファミリーレストランから客は消え…?(画像:AC)



 日本でも本格的にコロナ禍に突入した2020年7年、すかいらーくグループの定食・カレー・丼専門の“クイックレストラン”「Sガスト」が日吉店(神奈川県横浜市)を最後に、全店閉店。2021年10月には、大手ファミレスチェーンとして知られた「CASA」が全店閉店し、話題を呼びました。

 ファミレスでありながら、シックで落ち着いた雰囲気が魅力の「レストラン馬車道」は都内から姿を消して、千葉や埼玉の店舗を残すのみとなり、テキサスのカウボーイ一家をイメージしたステーキやハンバーグの店「カウボーイ家族」は都内では石神井店(西武鉄道上井草駅より徒歩8分)が唯一の店舗に。

 山手線エリアを中心に展開された洋食レストラン「キッチンジロー」はいまや、日本に2店舗、東京では九段下店(東京メトロ九段下駅より徒歩1分)でのみ味わえる“絶滅危惧種”となっています。時代が変われば、店の変化も必至とはいえ、「懐かしのあの味」はいつまでも忘れないでいたいものです。

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