「本当に効果あるの?」 SDGsをつい疑ってしまう人が知るべき過去と創造すべき未来

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「本当に効果あるの?」 SDGsをつい疑ってしまう人が知るべき過去と創造すべき未来

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中村圭

文殊リサーチワークス・リサーチャー&プランナー

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2015年9月に国連総会で採択されたSDGsは近年、大きな広がりを見せています。しかしその裏にはさまざまな思いがあることも事実です。文殊リサーチワークス・リサーチャー&プランナーの中村圭さんが解説します。

「またか」の声に応えるために

 最近、テレビや雑誌でSDGs(持続可能な開発目標)という言葉や、17の目標を掲げたカラフルなアイコンをよく見掛けます。

SDGsポスター(画像:国際連合広報センター)



 世界では気候変動や生物多様性の喪失(生き物の絶滅)など、人類が存在し続けるための基盤となる地球の限界(プラネタリー・バウンダリー)に達しつつあり、それに対処するため、SDGsは2015年9月に国連総会で採択されました。

 目標の期限は2030年。現在、先進国の企業や団体が脱炭素、脱プラスチック、脱フードロスといったSDGsの取り組みを推進し、さらに消費者も

・エコバッグを使ってレジ袋を貰わない
・野菜や食品をできるだけ食べ切る
・プラスチック製のストローや使い捨て容器を使わない(使っていない商品や店舗を選ぶ)

といった、身近でできるSDGsの取り組みを実行するようになっています。

 環境保護や社会貢献と聞くと

「またか」
「本当に効果があるのか」

と考える人も少なくないでしょう。「またか」と考えるのは、過去にはこのような取り組みがキャッチフレーズを変えて繰り返されてきたからです。

 企業が環境保護などの社会貢献の取り組みを行うCSR(CSRの言葉自体は2000年代から頻繁に使用)は、バブル期から推奨されてきました。企業が山に木を植えだしたのもこの頃です。

 1990年代からは地球に優しいという意味で「エコロジー」が言われるようになり、環境に配慮した商品の開発が活発化しました。さまざまなエコ商品が流通し、消費者の消費行動も変化するようになります。

 1990年の「ザ・ボディショップ」の日本上陸はエシカル消費という概念を日本に持ち込みました。フェアトレードや自然環境の保護をうたう同社の企業理念は、同社の商品の価値にも付加されました。

「本当に効果があるのか」の声にある疑念

 2000年代には「LOHAS(ロハス)」という言葉が日本に伝わります。LOHASとは

・Lifestyles
・Of
・Health
・And
・Sustainability(持続可能性)

の頭文字をとった略語で、健康で持続可能なライフスタイルのこと。

 元々、アメリカで環境問題や社会問題などに高い関心を持つ意識の高い層へのマーケティングコンセプトとして生まれたものです。日本でも環境に配慮したり、心身を穏やかに整えたりする商品や施設のコンセプトとして用いられました。

 日本に上陸した海外の自然派化粧品メーカーなどでは、フェアトレードや先住民族の文化の保護などの理念をうたう企業が見られ、それはまさに現在のSDGsに近い理念と言えるでしょう。しかし、企業もイメージ戦略として捉え、消費者もどこかファッション的に捉えていたところがありました。そして現在のSDGsです。

異常気象のイメージ(画像:写真AC)



 そして「本当に効果があるのか」という疑問は非常にもっともなことです。実際、CO2排出量が世界でもっとも多い国である中国やアメリカの取り組みが進展しないと意味がありません。

 また、SDGsよりもっと劇的な取り組みを実行しなくては、もはや気候変動を回避できないと唱える学者や環境活動家もいます。そもそも、資本主義社会は大量消費が前提であり、資本主義の社会構造自体を変革しなくては、根本的な解決に至らないとも言われています。その一方で、実現可能な範囲での、資本主義に代わる社会スキームは誰も提示できていません。私たちもいきなり環境のために消費をするなと言われても無理でしょう。

 今までのムーヴメントと今回のSDGsには異なる点もあります。エコロジーが言われていた頃、

・地球温暖化によってどこかの海岸線がなくなる
・島が水没する
・南極の氷が溶けてシロクマが絶滅しかねない

など、気候変動の深刻な状況がニュースでわが国にも伝えられましたが、日本ではどこか遠い世界の話のように感じられました。

 しかしこの5年ほどの間で状況は劇的に変化しています。日本でも気候変動が起こり、毎年のように豪雨、猛暑、豪雪が繰り返され、もはや異常気象が常態化しつつあります。この異常気象と地球温暖化との関係性は研究者でもなければうまく説明できませんが、一般人でも地球に何か異変が起きているのではないかという感覚はあり、危機感はつのってきています。

 また、SDGsは今までのCSRとは異なる面があり、その取り組みによって企業が持続的に成長することを目指すものになっています。SDGsの17のゴールは地球環境や人類の社会を今後も維持するためには達成が不可欠な目標であり、これから世界の価値観は17のゴールに沿ったものに変化していくと考えられます。現在は世界中で意識の共有が急速に進展しており、この変化は最近の日本の状況を見ても感じられるところでしょう。

 マスメディアでもこぞってSDGsを取り上げています。国内初の「ゼロ・ウェイスト宣言」をした徳島県上勝町の「上勝町ゼロ・ウェイストセンター」に若い人が集まるといった、SDGsによる集客現象も起きています。ゴールに沿った新しい商品開発は新たな市場を生み出し、企業や地域を活性化する可能性が拡大していると言えるでしょう。

コンセプトストアが支えるSDGs活動

 現在、世界中でSDGsに賛同するアーティストやクリエイターが増えており、さまざまな情報発信や商品開発が活発になりつつあります。

 何も知らず、ただよいデザインと思って手に取った商品がSDGsに対応したもの(企業理念にSDGsをうたい、取り組みを推進している企業や団体の商品)だったということがあります。食品でも、よい素材を使って体によくておいしそうと感じるものがSDGsに対応したものだったりします。

 もっとも、そのような商品には割高なものが多いのですが、感度の高いクリエイターがSDGsに参加することにより魅力的な商品が生まれ、消費者がそれを消費することによって、さらにSDGsの活動が大きくなっていくという循環が生まれるかもしれません。

有楽町マルイにある「SustainableThink.」(画像:ペーパーパレード)



 例えば、コンセプトストア「SustainableThink.」はサスティナブルな商品を通じて、SDGsや地球環境について考え学ぶことのできるコンセプトストアです。2021年3月、有楽町マルイ(千代田区有楽町)に、4月には名古屋パルコにもオープンしました。

 タイヤチューブから作られたトートバッグ、消防服をリサイクルしたバッグ、マヨネーズ工場から出る卵の殻をコースターやバスマットにアップサイクルしたものなど、デザイン性が高く興味を引かれる商品が並んでいます。

 サスティナブルな素材を開発する工場・メーカーなどが、コンセプト作成や商品開発からローンチ、店舗販売までを一括で行えるラボショップとなっている点も興味深いところです。

 このような店舗が増えていくと、自然とSDGsの取り組みに参加できるようになっていくのかもしれません。ご興味のある人はこのようなショップをのぞいてみてはいかがでしょうか。

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