オリパラまでにワンルートでのエレベーター整備率99%に
加速する超高齢化社会、2020年のオリパラ(東京オリンピック・パラリンピック)、障がい者の暮らしやすい社会。これらのために、公共交通機関におけるバリアフリー化が急がれるなか、ホームと地上間の往来や、乗り換えに階段を使うことの多い地下鉄のバリアフリー化はどこまで進んでいるのでしょうか。東京メトロに話を聞きました。
まず、地下にあるホームと地上間移動のためのエレベーターの設置。東京メトロは、これをプライオリティーの最も高いものとして、各駅で少なくともワンルートはエレベーターのみで移動できるよう整備を進行中とのことです。その整備率は2018年末時点で88%、オリパラまでに99%になる見込みとしています。「用地確保の問題などで全駅での設置完了には届かないものの、一日も早い全駅へのエレベーターワンルートの整備を目指して進めています」と東京メトロ担当者は話します。
また、すでにエレベーターのみでホームと地上間を移動できる駅においても、病院の最寄りの出入り口や利便性を考慮し、2ルート目としてエレベーターの設置か所を増やす取り組みも進めているそうです。
さらに、他路線への乗り換えの際、構内移動に段差があったりするため、そういった駅にもエレベーターやスロープで移動できるよう整備中です。「行きたい方向に段差があるのにエレベーターやスロープがない。そういったことがないよう、ルート設定の改善に努め、利用しやすい駅にするのが目標です」と前出の担当者。
各駅のエレベーター利用の可否はベビーカーユーザーも知りたい情報といえます。東京メトロでは、ベビーカーユーザーのために、ホームと地上間や、乗り換えにエレベーターのみの移動が可能かどうかを簡単に検索できる「ベビーメトロ」というアプリを開発しました。
こちらについては、当サイトの別記事「東京メトロ一般利用者にも役立つ、ベビーカーユーザー必見のアプリ『ベビーメトロ』とは?」で紹介しています。
障がい者団体から設置要望の高いホームドア、その設置状況は?
バリアフリー化として、ホームドアの全線での設置も予定されています。
ホームには微妙な傾斜があり、ホームドアは線路への転落防止として車椅子利用者や目の不自由な人たちから設置要望が非常に高いそうです。ホームの傾斜に気づかないベビーカーユーザーの事故、酩酊者や子供の不用意な転落を防ぐものでもあります。東京メトロによると、ホームドアを設置した駅では、不測の転落事故の発生件数はほぼゼロとのことです。
ホームドアの設置状況は、副都心線、南北線、有楽町線、丸ノ内線はすでに全駅で完了。銀座線は大規模改修工事中の渋谷駅を除いて完了しており、同駅については2021年度中に設置予定としています。
千代田線、半蔵門線、東西線は設置工事中で、千代田線は2019年度中に完了予定です。東西線と半蔵門線では、身体の不自由な人の利用状況やホームの状況等を考慮した駅を選定し、優先して工事に着手しているといいます。
日比谷線は、東京メトロと東武鉄道の車両が混在(3ドア、5ドア)していたことから、ドア数を4ドアに統一した新型車両に置き換えを進めています。これら全ての車両が新型車両に置き換わった後、2020年~2022年度にかけてホームドアを整備する予定だそうです。
ホームと車両の段差も改善、全ての人がシームレスに移動できる駅に
超高齢社会において車椅子利用者が今後ますます増えることをふまえ、ホームと車両の段差を小さくする取り組みも進行中です。床面の低い車両を導入したり、ホームをかさ上げしたりしています。
通常、車椅子利用者は電車の乗り降りの際に渡し板を使用しています。「しかし、なかには電車とホームに大きな段差や隙間があることで、乗降に恐怖感や不安を持つ方や、可能な場所ではひとりで乗り降りすることを望む車椅子利用のお客様の障壁となっています。それを少しでも取り除くために改修を進めています」と話します。
また、前述の地下鉄構内には数段の短い階段のある場所も少なくなく、これらも歩行困難者やベビーカーユーザーにとって曲者。こういった場所も、スロープが付けられる広さのあるところでは改修に着手していますが、スロープの設置は傾斜スペースをとるなどの課題があるようです。
東京メトロはバリアフリー化ついて、「ひとりで外出する障がい者や高齢者の方が増えているので、公共交通機関がその障壁にならないよう、一つ一つ対応していくことが大切になっていると考えています。そのためのプライオリティーは、まず全駅へのエレベーター整備です。そして段差や隙間といった移動の障壁を解消して、さらにシームレスに移動ができることを目指していきます」と展望を語ります。
ちなみに、都営地下鉄におけるホームと地上間のワンルートでのエレベーター整備率は、100%(2018年4月末時点)とのことです。
障がい者や高齢者に優しい駅は、全ての人々にとって使いやすい駅といえるのではないでしょうか。訪日外国人も右肩上がりのなか、世界の人々にも誇れるバリアフリー化が進むことに期待が寄せられます。