おしゃれに興味がなくなった? 東京から「茶髪」の若者が消えた理由

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おしゃれに興味がなくなった? 東京から「茶髪」の若者が消えた理由

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アーバンライフ東京編集部

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東京にはかつて、茶髪や金髪といったヘアカラーの若者があふれていました。しかし昨今、そうした髪色の若者を見掛けなくなったと感じませんか? その時代的背景について、都内の若い女性たちを取材しました。

都内10~20代女性に聞いた今どきトレンド

 東京のトレンドを探るため都内在住・在学・在勤の若者を取材すると、10年前、20年前と比較して彼女たちの趣味趣向が大きく変化していることが分かります。

 過去のトレンドを簡単に振り返ると、90年代には歌手・安室奈美恵さんのファッションをまねる「アムラー現象」に象徴される茶髪ブームが、2000年代には同じく歌手の浜崎あゆみさんをアイコンとした金髪・ショートカットブームがありました。

東京で、茶髪の若者を見る機会が少なくなった。その理由とは?(画像:写真AC)



 さらに当時はファッションのジャンルも、いわゆる“ギャル”たちを指す「渋谷系」と、サブカルチャーを好む「原宿系・裏原系」などに分かれていました。

 そもそもファッションのお手本となる女性誌自体が、異性からのモテを強く意識した前者は「赤文字系」(『CanCam』『JJ』など)、自分自身の個性を追求する後者は「青文字系」(『Zipper』『CUTiE』など)と称され、ジャンルを明確に体現することが一般的でした。

 つまりかつてのトレンドは、あらかじめ大別された「系統」に沿って、その枠組みのどれかに自分の嗜好を当てはめていく、というものだったと言えます。

現代の若者を知るキーワード「多様性」

 ひるがえって現在10代後半~20代半ばの若者たちに話を聞くと、そうした「与えられる系統」にほとんど縛られていないマインドを垣間見ることができます。

 前述の例に出した髪色ひとつをとっても、彼女たちによると、全員が茶髪、全員が金髪といったグループに出会うことはまずないとのこと。さらに聞けば、大人世代は「最近の若者(女性)は黒髪ばかり」と思いがちですが、「実は全然そんなことはない」とも口をそろえます。

 東京やその近郊に限って言えば、自毛の色を生かしながら派手過ぎないピンクやブルー、ラベンダー(淡い紫色)を基調としたカラーリングを施している若者が多くいるというのが実際だと言います。

 今の若者たちのトレンド基準はどこにあるのか、また彼ら彼女たちの嗜好から見えてくる現代的な価値観とは、果たしてどのようなものなのでしょうか?

ジェンダーに見るオープンな価値観

「多様性」が尊ばれる現代。たとえば「誰ひとり取り残さない」という理念を掲げるSDGs(持続可能な開発目標)にも、個々人を尊重する考え方を読み取ることができます。

 今の若い世代はこうした思考ととても親和性が高く、たとえばLGBTなど性的少数者に対する意識も極めてオープンと言えます。

 話を聞いた都内の女子大生のひとりは、「(性的少数者を)尊重するとかしないとかではなく、友達の中にも当事者がいて、当たり前のこととして接している」と語ります。

 電通(港区東新橋)が2021年4月に発表した調査では、20代から50代の計6万人のうち「学校教育でLGBTQ+をはじめとする『性の多様性』について教わったことがある」と答えた割合は、世代別で20代が最高。

 かつてテレビのバラエティー番組は、性的少数者と思われるタレントを「お姉キャラ」などと呼び“キワモノ”扱いするきらいがありましたが、そうした傾向も今はほとんど見かけなくなりました。代わりに、既存のジェンダーに捉われない魅力を発揮する新顔が次々に現れています。

 タレントのりゅうちぇる さんやMattさんは美容雑誌にも登場し、また有名ブランドのシャンプーのテレビCMにはモデルのイシヅカユウさんが起用されました。

「性別ないです」と語る若手モデルの井手上漠(いでがみ ばく)さんは、インスタグラムで41.3万フォロワーを誇る人気インフルエンサー。男女を問わず多くの若者からの支持を集めています。

既存の枠組みを超えるSNSの対人交流

 このように若い世代が、性別をはじめとする既存の枠組みに捉われない感覚を身につけた背景には何があるのか。

 そのきっかけのひとつとして若い世代が挙げるのが、今や日常の一部として利用されている「SNS」です。

デジタルネーティブ世代と呼ばれる若者は、SNSを通して属性に捉われない対人交流を経験している(画像:写真AC)



 日本国内で特に利用者の多いツイッターを例に挙げると、ユーザー自身が設定するアカウント名やアイコン画像は、必ずしも実際の性別や年齢に依らないケースが極めて多いということに気づかされます。

 自身の一人称を「私」とするも「俺」とするも自由。書き込む文章の“口調”もフラットだったり、あえて女性言葉や男性言葉を使い分けたりしています。

 都内に勤める20代の女性会社員は、美容系の情報を集めるためのアカウントと、日々の何気ない出来事を書き込むアカウントを持っていて、内容に合うキャラクターをそれぞれ使い分けていると教えてくれました。

 そして、親しくやり取りをするフォロワーたちも、投稿者の属性をあえて追及することなくあくまで一ユーザー、一個人として交流を深めているのだと言います。

 デジタルネーティブとされる若い世代は、ネット利用の初期からこうした対人環境を体験することによって、相手の属性に固執しない、あるいは既存の枠組みに依存しない価値観を内在化させてきたものと考えられます。

「パーソナルカラー診断」とは何か?

 それでは、現代の若者が「自分らしさ」を追求する際、どのような尺度を手掛かりとしているのでしょうか。

 とりわけ外見に関わるファッション・コスメの分野に焦点を当てて取材を進めると、女性を中心に「パーソナルカラー診断」に言及する若者が多く見られました。

 ここ数年注目を集めているパーソナルカラー診断とは、イエローベースの肌、ブルーベースの肌、さらに色の濃淡などを基に「イエベ春」「ブルベ夏」「イエベ秋」「ブルベ冬」と大きく四つに分類するもの。肌の色だけでなく髪や瞳の色などから、最も似合う「色」の方向性を導き出すスケール(ものさし)です。

今、多くの若者が「自分らしさ」を探る手掛かりとして活用しているパーソナルカラー診断(画像:写真AC)



四つのカラー群の中から自分に似合うカテゴリーを見つけて、洋服やコスメ選びの参考にするという若者は今、非常に増えています。SNSアカウントのプロフィル欄に、誕生日や在住地などと併せて自身のパーソナルカラーを明記しているユーザーも少なくありません。

 友人同士でショッピングに行く際には、それぞれパーソナルカラーに合わせて同じ商品の色違いを“おそろい”で購入するというエピソードを語ってくれた女性もいました。

 ネット上には、いくつかの質問の答えることで自分のパーソナルカラーを診断できるページが数多くあり、女性だけでなく男性向けの診断ページも開設されています。

自己プロデュースの材料として

 ここで注目したいのは、90~00年代の流行が「あらかじめ大別された系統」に個々人が沿わせていくものだったのに対して、パーソナルカラー診断は、もともと個々人が持っている要素をより生かすために用いられる尺度であるという点です。

 今回話を聞いた別の20代の女性会社員は、「私は『ブルベ夏』なので、ラベンダーや青みがかったピンク系のアイシャドウを使っています。今まで試したことのない色を試す機会にもなりました」と話していました。

 お手本としてではなく参考として、自己プロデュースのための“補助台”として、若者たちはパーソナルカラー診断を取り入れているのです。

東京から「茶髪」の若者が消えたワケ

 さて、ここであらためて「今どきの若者に茶髪・金髪の子が少なくなったワケ」について考えてみたいと思います。

 前述した4分類のパーソナルカラー診断のうち、日本の女性で最も多いとされているのは「ブルベ夏」です。今回話を聞いた中でも、自分のパーソナルカラーの診断結果が「ブルベ夏」だったと答える女性が、ほかの3分類を上回りました。

 肌色がベージュよりもピンクに近く、身につけるアイテムなら寒色系が似合う「ブルベ夏」にとって、黄色みの強い「茶髪」は、実は肌を沈んだ色に見せてしまう相性の悪いカラーなのです。

 別の都内の女子大生に聞いた最近人気のヘアカラーは「アッシュ系」。ややグレーがかった、くすみ系の色合いは、ブルベ夏に代表される肌色にも特に似合うとされているカラーリングです。

 実際、彼女だけでなく渋谷や新宿などの街なかをウオッチしていると、くすみ系と呼ばれるヘアカラーやファッションを身にまとった若者を数多く目にすることに気づくはずです。

 かつて茶髪といえば、ブリーチ剤で脱色した黄色みの強いカラーが主流で、選択肢は限られていました。そして茶髪にしている若者はトレンド感度が高く、ファッションに関心の高い層、今で言う“陽キャ”だと捉えられてきました。

現代の若者は、かつてのような画一的な「茶髪」ではなく、繊細に細分化されたヘアカラーを楽しんでいる(画像:写真AC)



 そのため、自毛の色や肌色との調和を生かすことの多い現代の若者は「ファッションに気を使わなくなった」「おしゃれに対する関心が低くなった」と捉えられがちですが、彼女たちにしてみれば「おしゃれに興味がないなんてことは全くない」のだそう。

「若者がメイクやファッションに興味がないのなら、インスタであんなにたくさんのインフルエンサーが生まれるはずがない」と断言する女子大生もいました。

 分かりやすい茶髪でなくても、つまりごくさりげないカラーリングであっても、同じ世代同士であればすぐに目にとまり、そこに込めた彼ら彼女たちなりの“自分らしさ”を読み取ることができる――。それが彼女たちの指摘する今どきのおしゃれです。

 現代の若者のおしゃれは、かつてないほど繊細にかつ多様になっていると捉えることができるようです。

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