スタンプラリーが「御朱印ブーム」に到底勝てない根本理由
数年前から続く御朱印ブーム。それを支えている本質的な魅力は何でしょうか。文殊リサーチワークス・リサーチャー&プランナーの中村圭さんが解説します。地域活性化ツールとしての「御朱印」 数年前から、御朱印ブームが続いています。御朱印とは本来、写経したお経を神社やお寺に納経することでもらえましたが(所説あり)、現在では神社やお寺で参拝した証しとして機能しています。 御朱印のイメージ(画像:写真AC) 御朱印には、デザインが凝ったものやお正月などの特別な日にしかもらえないものもあります。そのため御朱印帳を買って集める人が増えており、その結果、フリマサイトやオークションサイトで扱われて、問題視されています。御朱印とは神仏と縁を結ぶもの。特別な事情がない限り、自力で集めることが大切です。 一方、ファンが御朱印をきっかけに寺社仏閣へ興味を持ったり、周辺観光に目を向けたりすることもあるため、地域活性化ツールとしての期待も大きくなっています。 寺社仏閣以外からも続々誕生 寺社仏閣でもらえる御朱印以外にも、近年、さまざまなものが生まれています。早速いくつか紹介していきましょう。 「御書印(ごしょいん)」は全国の書店でもらえる御朱印で、人と書店をつなぐ試みのプロジェクトとしてスタートしました。 実際に書店に行って御書印を買うと、書店オリジナル印など、三つの印を押印して日付を記入してくれます。メッセージや書店員のお勧め本のタイトル、本の一節などを記入してくれる書店もあります。新しい本との出会いも予感させてくれる試みでしょう。 プロジェクトは2020年3月にスタートしましたが、参加書店は続々と増えており、11月8日現在、300店以上が参加しています。都内では ・三省堂書店神保町本店(千代田区神保町) ・ジュンク堂書店池袋本店(豊島区南池袋) ・かもめブックス(新宿区神楽坂) などで実施しています。 豊島区南池袋にあるジュンク堂書店池袋本店(画像:(C)Google)「御酒印(お酒ラベル)」は、酒蔵巡りの御朱印です。 公認酒蔵を巡り、各酒蔵指定のお酒を買うか、酒蔵を見学するかするともらえる御酒印を御酒印帳に貼り付けていきます。 一般的な御朱印帳とは少々趣が異なり、見開き1ページを左側には御酒印、右側には蔵元の特徴やお酒の感想、来訪の思い出などが自由に書き込めるようになっています。ワインのエチケット(ラベル)の収集と近いものがあります。 御酒印がもらえる酒蔵は全国に200か所以上あり、都内では ・豊島酒造(東村山市久米川町) ・田村酒造場(福生市福生) ・石川酒造(福生市熊川) の3か所です。 宿場も、城も、鉄道も「印」がある宿場も、城も、鉄道も「印」がある「日光街道 日光西街道御宿場印めぐり」は、宿場町に来た証しにもらえる観光振興型の御朱印です。 東京・日本橋から栃木・日光まで約140㎞ある日光街道と、松尾芭蕉がたどった日光西街道の宿場町30か所で買えます。日光なら日光東照宮の御宿場印など、地域にちなんだデザインになっているので、その地域を知るきっかけにもなります。 足立成和信用金庫(足立区千住)を中心とした、複数の地域信用金庫の共催プロジェクトで、さまざまな地域に観光客を誘導する効果を期待したものと言えるでしょう。 都内では ・日本橋観光案内所(中央区日本橋) ・お休み処 千住街の駅(足立区千住) があります。 中央区日本橋にある日本橋観光案内所(画像:(C)Google)「御城印(ごじょういん)」はお城に行った際の記念スタンプに代わる登城証明で、加盟するお城の売店で販売されています。 城主の家紋などが記載されたり、台紙の色もさまざまだったりで、季節やイベントごとにデザインを変えているケースもあるため、コレクションアイテムとして魅力があります。 御城印の対象は数百か所で、現存しない城の御城印もあることも魅力のひとつ。近隣の施設でもらえ、地域の歴史の勉強にもなりそうです。 都内でも ・渋沢 × 北区 飛鳥山おみやげ館(北区西ケ原。飛鳥山城) ・パティスリーカシュカシュ(練馬区石神井町。石神井城) などがあります。江戸城関係のイベントでは、江戸城の御城印が出ることもあるようです。 また、ニュースにも取り上げられて話題になったのが「鉄印(てついん)」です。 第三セクター鉄道等協議会(墨田区太平)に加盟する鉄道会社と関係会社が連携し、地方鉄道の振興を目的として「鉄印帳」と併せて販売しています。 各鉄道会社の指定窓口で乗車券の提示し、記録料を支払うともらえる仕組み。さらに鉄印を集めるとさまざまな特典を受けられる「鉄印帳マイスターカード」をもらえます。 都内では鉄印を扱っている鉄道会社はありませんが、首都圏ではいすみ鉄道デンタルサポート大多喜駅(千葉県大多喜町)で購入できます。 明確なスタンプラリーとの違い明確なスタンプラリーとの違い 皆さんお気づきでしょうが、要はスタンプラリーが御朱印化しているのです。ダムでもらえる、近年人気の「ダムカード」や下水関連の「マンホールカード」に近いものがあるかもしれません。 特筆すべきは、御朱印の存在によって 「観光スポットではない場所が観光地化する」 ということです。 街の書店や駅といった何の変哲もない場所でも、御朱印があれば足を運ぶ意味が生まれ、また他の場所を巡るモチベーションにもつながります。実際、これらの御朱印帳はすぐに売り切れるほどの人気です。 御朱印のイメージ(画像:写真AC) 大型観光地や大型レジャー施設など、既定路線で余暇を楽しむだけでなく、日常的な場所をレジャー感覚で楽しむ人が増えています。御朱印はその来訪の「お土産」と言えるのです。 現在、スタンプラリーを実施しているレジャー施設や観光地は多く存在し、エリア内回遊の定番イベントとして機能しています。 スタンプラリーは「なんとなく参加する人」が多く、コンプリートした際のプレゼント目当てだったり、スタンプや台紙をすぐ捨てたりと参加意欲の高いイベントは言えません。 御朱印がこのようなスタンプラリーと異なるのは、 ・独特のデザイン性 ・個々の場所が放つ個性 ・スタンプではなく、手書きや一点もの という、コレクションアイテムとして特別感があることです。 また、決められたエリア内の回遊ではなく、全国展開している場所で実施されていることが多いため、普段は行かないような場所に行くきっかけとして、ちょうど良いとも考えられます。 興味のある人は、御朱印を集める小旅行にでも出てみてはいかがでしょうか。
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