なんと10代女性の半数が使用 増え続ける「韓国コスメ」ユーザー、データで見る巧みな拡大戦略とは
韓国人気ブランドが渋谷に1号店 2020年10月8日(木)、韓国発の人気セレクトショップ「ALAND(エーランド)」の日本1号店「ALAND TOKYO」(渋谷区宇田川町)が渋谷・井の頭通りにオープンしました。 1階はユニセックスのアクセサリーや雑貨、コスメのフロア。2階はレディースとメンズのファッションアイテムを取りそろえています。 同店の日本初進出を手掛けたのは、グローバルワークやニコアンド、ローリーズファームなどの有名アパレルブランドを擁する企業、アダストリア(同区渋谷)。 「日本の10代、20代から圧倒的支持を得ている韓国ファッション、コスメ、カルチャー。しかしながら、日本国内においては韓国のトレンドファッションやライフスタイルを体験し購入できるリアルな場が少ないのが現状」 として、渋谷を訪れる若い世代を中心にファンを獲得したい考えです。 いかにして支持を拡大したのか?「第3次韓流ブーム」の真っただ中にあるとされる2020年現在の日本。とりわけここ数年、10~20代の女性を中心に絶大な人気を集めるようになったジャンルのひとつが「韓国コスメ」です。 日本の若い女性の間で人気が高まり続ける「韓国コスメ」。一体なぜなのか?(画像:AMUSE、シーズマーケットコリア) 韓国コスメは日本の若い世代からどの程度の支持を得ているのか? また、いかにして日本でのユーザーを拡大していったのか――? 若年層のトレンド調査を行い情報発信している「TesTeeLab」(運営・テスティー、中央区日本橋兜町)のアンケート結果を読み解くと、韓国コスメ流行の“必然性”とも言える特徴が見えてきました。 若年層ほどユーザーが多い理由は若年層ほどユーザーが多い理由は「韓国コスメに関する調査」は2020年8月、10~30代の女性6451人を対象に実施しました(10代女性1590人、20代女性1858人、30代女性3003人)。 まず「日常的にメイクをする」と回答した10~30代女性を対象に、韓国コスメの使用経験を尋ねました。 「現在使用している」と回答した人は、10代で48.3%、20代は33.5%、30代は21.1%。 10代では実に約ふたりにひとり、20代では約3人にひとりが、ごく日常的に韓国コスメを愛用していることが明らかになりました。 「韓国コスメの使用経験率」。一度でも使用したことのある人の割合は、10・20代で過半数を超える(画像:TesTee) 若い世代ほど韓国コスメのユーザーが多い傾向があらためて浮き彫りとなりましたが、果たしてなぜなのか? 続く「コスメの購入理由」を尋ねる問いの回答に、理由の一端が垣間見えます。 購入理由、「価格の安さ」が最多 コスメ全般を購入する際の動機(複数回答)について聞いたところ、10代は「価格の安さ」(75.9%)、20・30代は「品質の高さ」(それぞれ67.1%、64.6%)が1位。一方、これを「韓国コスメ」に限定すると、10~30代の全調査対象世代で「価格の安さ」が最も多いという結果に。 例えば、原宿・竹下通りなど東京都内だけで10店舗を構えるブランド「エチュード」。人気アイテム「ディアダーリンウォータージェルティント」が500円(税抜き)など、10代の学生でも手に取りやすい価格に設定されているのが特徴です。 デパートの売り場に並ぶハイブランドのコスメ(デパコス)に対するあこがれはもちろん今も健在ですが、安くて使用感も良いものがあるならそちらを選びたい、と考えるのは、限られたお小遣いでおしゃれを楽しみたい若者にとっては自然な流れなのかもしれません。 ちなみに実際使用しているアイテムは、10代で最も多かったのは上記のジェルティントも該当する「リップ」(54.5%)。20・30代は「ベースメイク」(それぞれ43.9%、46.1%)でした。 カワイイとSNS映えの無限ループカワイイとSNS映えの無限ループ 韓国コスメが若い世代に人気の理由は、価格の安さだけではありません。 前述の購入動機を尋ねる質問で、10代で僅差の2位に付けたのは「デザイン性の良さ」(51.3%)。20代でも40.2%で3位に入っています。 見た目がカワイイから買う、いわゆる「パケ買い」を、若い世代ほど経験していることが分かります。 これと関連して特筆すべきは、韓国コスメ利用者のうち「コスメの写真をSNSに投稿したことがあるか」という問いに対して10・20代とも約3人にひとり(それぞれ32.9%、32.4%)が「ある」と答えている点です。 SNSとも極めて相性の良い「カワイイ」コスメは、特に若い世代にとって今や欠かせない重要要素となっているのです。 思わずSNSにアップしたくなる――。韓国コスメのカワイさは若い女性を中心に大人気(画像:DPC、シーズマーケットコリア) さらにもう1点。 コスメの中でも人気カテゴリーである「リップ」に特化したアンケート調査では、リップに関する情報入手源は10~30代の全世代で「SNS」が1位。購入意欲が促されるタイミングについても、「SNSで情報が流れてきたとき」が、10・20代でトップになっています(30代は2位)。 つまり、 1.見た目がカワイイ(し安い)から購入する 2.カワイイからSNSに投稿する 3.投稿を見た別のユーザーが購入を検討する という“無限ループ”とも言える好循環が、若い世代を中心に生み出されているのです。 “唯一の弱点”も解消しつつある 実際、Instagramを見てみると、「#コスメ」というハッシュタグが付けられた投稿は約518万件、「#韓国コスメ」は約211万件、「#Kbeauty」約399万件と、非常に活発なトピックであることがうかがえます。 投稿の内容は、メイクの仕方から新作コスメの情報、パッケージや発色の紹介までさまざま。 韓国コスメをまだ使ったことがないユーザーや、ちょうど購入を検討しているユーザーにとって有益な情報が多く、情報源としてのSNSは、すでに10~30代の全世代で「口コミサイト」を上回る存在感を得ています。 ※ ※ ※ さて、ここまで韓国コスメの人気拡大の理由について、価格の安さ・見た目のカワイさ・SNSとの相性の良さ――という観点から分析してきました。 最後にもう1点、“ダメ押し”ともいえる特徴に触れたいと思います。 続々「日本上陸」を果たすコスメ続々「日本上陸」を果たすコスメ 上記アンケート調査を行っているTesTeeLabでは、韓国コスメに関する経年変化をたどるために定点調査を続けています。 およそ2年前、2018年12月の調査では、「以前は韓国コスメを使っていた(現在は使っていない)」と答えた人を対象に「使用をやめた理由」を尋ねています。 最も多かった回答は「購入場所が少ない」で35.9%。韓国コスメを購入する場所も、コリアンタウン(10代1位、20代2位)や、韓国現地(20代3位、30代1位)などと限られているのが当時の実情でした。 しかしこの2年のうちに、「日本初上陸」をうたった韓国コスメブランドは劇的に増加しています。 2020年10月8日、日本1号店を渋谷にオープンした韓国の人気セレクトショップ「ALAND」(画像:アダストリア) 冒頭に紹介したセレクトショップ「ALAND」だけでなく、「CILY」「SECRET MUSE」「BEYOND ANGEL AQUA」など、枚挙にいとまがありません。 実店舗のほか、ロフトなどのバラエティーショップにも並ぶようになり、日本語版通販サイトも次々にオープンしていっています。 今後さらなるユーザー拡大も視野 わずか2年ほど前まで「購入場所が少ない」という理由で使用をやめる女性が少なからずいた韓国コスメ。“弱点”だったともいえる入手ルートが近年一気に増えたことにより、ますます根強いファンを獲得していくことが予想されます。 韓国コスメの価格の安さとパケ買いを生むデザインは、すでに多くの若年層女性に浸透しています。日本におけるコスメトレンドは、韓国コスメブランドが牽引(けんいん)する――という日が、もしかしたらやってくるのかもしれません。
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