東京のスーパー銭湯はいつから増えたのか? 「大江戸温泉物語」9月閉館を機に考える

先日、「東京お台場 大江戸温泉物語」が閉館するニュースは大きな話題を呼びました。今回はそれを気にスーパー銭湯の歴史について、フリーライターの真砂町金助さんが解説します。

1980年代に東海地方で誕生

 東京の観光名所として長らく親しまれてきた「東京お台場 大江戸温泉物語」(江東区青海)が2021年9月5日(日)に営業を終了、閉館します。

江東区青海にある「東京お台場 大江戸温泉物語」(画像:(C)Google)



 同館は江戸情緒を楽しめる、単なる銭湯にとどまらない観光施設として、内外から数多くの人を集めてきました。また格安な宿としても知られており、上京の際に利用した人も少なくないでしょう。

 東京にはほかにも大規模なものから小規模なものまで、多くのスーパー銭湯が存在します。

 スーパー銭湯は公衆浴場の一種ですが、法律上は一般的な銭湯とは異なる「その他の公衆浴場」に分類されます。

 発祥ははっきりしていませんが、従来の銭湯と健康ランドの中間の存在として1980年代に東海地方で誕生し、数を増やしたとされています。

 前述のようにスーパー銭湯は公衆浴場に分類され、営業の制限される住宅地でも問題なく開業できます。そのため土地を所有している企業が新たなビジネスとして考案したと考えられます。

 その後、コンピューターによる自動制御の導入でコストが押さえられるため、新規参入が相次ぎましたが、そのルーツは今となってはわかりません。

 東海地方で急速に店舗数を増やしたスーパー銭湯ですが、1990年代に入ると関東に進出。この記事を書くにあたって調べたところ、関東初のスーパー銭湯は1992(平成4)年にオープンした「湯の森 所沢」です。その後、東京周辺の地域で店舗数が増え1998年に葛飾区に「クアーズ旭」がオープンしています。

 スーパー銭湯にはさまざまな業者が参入しており、1997年には埼玉県大宮市(当時)の新幹線高架下にJR東日本都市開発が運営する「極楽湯 大成店」がオープンしています。

スーパー銭湯ブームが遅かった都心

 スーパー銭湯がブームになった理由は、なによりも価格の安さです。

ジェットバス(画像:写真AC)



 スーパー銭湯は一般的な銭湯に比べて入浴料金は少し高いですが、風呂の種類が多かったり、飲食やエステティックを楽しめたりします。似たような施設として健康ランドがありましたが、こちらはよりレジャー色が強い施設で、料金は大人ひとりあたり2000円前後が相場でした。

 対して、この頃のスーパー銭湯は安さを売りにしており、入浴料金を4~600円程度に設定。飲食やエステティックなどの付加サービスで収益をあげることを目指していました。なお1997年時点で、東京の銭湯は大人ひとり385円でした。

 スーパー銭湯の飲食は自動販売機や軽食程度で、娯楽のための設備はカットされているかわりに、風呂の数が従来の健康ランド並みでした。そんなわけで「安、近、短」が求められた1990年代後半の風潮にマッチした営業スタイルともいえます。

 ただこの頃、東京都心はスーパー銭湯ブームから少し遠い位置にありました。

 というのも、当時のスーパー銭湯は広い駐車場を設けて、車で15分のエリアを商圏と考えて投資するのが基本でした。ようは家族や友達と連れだってくる客を基本としていたのです。そのため、駐車場の確保が困難な都心にはスーパー銭湯は少なかったのです。

施設増加の背景に温泉掘削技術の進歩あり

 そんな都心にスーパー銭湯が増え始めた契機は、温泉の開発でした。

 もともと東京は温泉の多い地域で、大田区のように温泉を使った銭湯も知られていました。ただ、温泉のある水脈は地下深くを走っているため、掘削には膨大な費用がかかりました。

 それが1990年代後半からの掘削技術の進歩で、1年がかりだった地下1000mまでの掘削が数か月でできるようになり、費用も安く抑えられるようになりました。このことで、都内でも温泉を使ったスーパー銭湯が都心で開業するようになります。

練馬区向山にある「豊島園 庭の湯」(画像:(C)Google)

 なかでも、2003(平成15)年に文京区の東京ドームシティにオープンした「スパ ラクーア」(文京区春日)、練馬区のとしまえんに誕生した「豊島園 庭の湯」(練馬区向山)、そして東京お台場大江戸温泉物語は注目を集めました。

多様化したスーパー銭湯

 こうした都心型の施設の登場以降、スーパー銭湯は広がりを持つようになります。

文京区春日にある「スパ ラクーア」(画像:(C)Google)



 前述のように、スーパー銭湯はそれまで銭湯より少し値段が高く、入浴施設は充実、かつ健康ランドほど娯楽や飲食設備がないというものでした。

 2003年に注目された三つの施設は、その概念から完全に外れていました。いわば風呂を中心としたアミューズメント施設だったのです。

 この頃から、スーパー銭湯も

・娯楽施設がなく風呂を中心とした低料金のもの
・入浴後の娯楽や休憩施設を重視したラグジュアリーなもの

に分かれていきます。また、従来の銭湯でも、充実した風呂や設備を設けるところも増えました。

 銭湯からスーパー銭湯まで、値段もさまざまな風呂が充実している東京。店舗数が多いため、夏場の仕事で移動途中に汗を流してすっきりしたいときなど、普段使いもできるので大変便利です。

健康ランドは今後復活なるか

 さて、スーパー銭湯のラグジュアリー化で存在感が失われたのが、従来の健康ランドです。

 健康ランドは風呂や飲食、娯楽施設に加えて広間で演歌歌手が歌謡ショーをやるなど、昭和な娯楽を楽しむことができました。この雰囲気を楽しめる都内でもレアな施設が都営新宿線船堀駅の近くにある「東京健康ランド まねきの湯」(江戸川区船堀)です。

江戸川区船堀にある「東京健康ランド まねきの湯」(画像:(C)Google)

 以前は「東京健康ランド」という名称で2012年に閉店が決まった際には、ついに健康ランドが消滅かと話題になりましたが、新会社がリニューアルオープンし現在も営業しています。

 なにかとオシャレ感のあるラグジュアリーなスーパー銭湯に対して、こちらは完全に健康ランドな雰囲気の施設。東京に住んでいるなら一度は利用してみたいものです。

【図表】スーパー銭湯、4人に1人は「月1回以上」利用、施設好きは若年男性と高齢女性だった!

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