アニメ主題歌を採用する鉄道の駅
身近な交通手段である鉄道、そして乗り降りに使う駅は、毎日の通勤・通学を支えてくれるなくてはならない存在です。
駅のホームではいろいろな音やアナウンスが聞こえますが、今回は発車メロディー、いわゆる「駅メロ」に着目していきます。
駅メロには多種多様なものがあり、その土地にゆかりのある曲が採用されることもしばしば。なかにはアニメ主題歌が採用されることも。
今回は、そんなアニメ主題歌を発車メロディーにしている駅を4駅紹介します。
高田馬場駅と『鉄腕アトム』
新宿まで電車で5分の場所にあり、早稲田大学(新宿区戸塚町)や専門学校などが近いことから、通勤・通学の要所となっているのが高田馬場駅です。山手線のほかに西武新宿線と東京メトロ東西線が乗り入れていることもあり、たくさんの人が行き交っています。
この高田馬場駅のホームでは2003(平成15)年から、日本初の連続テレビアニメとして有名な『鉄腕アトム』の主題歌が流れています。筆者が初めてこれを知ったのは、駅メロが鳴るキーチェーンのおもちゃからでした。
高田馬場駅の駅メロに『鉄腕アトム』が採用されたのは、次の2点に由来します。
・アトムが高田馬場にある科学省で2003年に誕生したという設定であること
・アニメの制作会社である手塚プロダクションが高田馬場にあること
ちなみに『鉄腕アトム』の主題歌は、JR武蔵野線新座駅(埼玉県新座市)でも使用されています。高田馬場駅とは少し異なるアレンジが施されているので、聴き比べるのも面白いかもしれません。
上井草駅と『機動戦士ガンダム』
杉並区に位置し、武蔵野の面影を残す町・上井草で、首都圏への交通網としての役割を担っているのが上井草駅です。この上井草駅の発車メロディーとして、人気ロボットアニメ『機動戦士ガンダム』の主題歌『翔べ!ガンダム』が採用されています。
杉並区の特徴は、アニメ制作会社が何十社もあること。特に上井草駅から徒歩2分のところには、『機動戦士ガンダム』を手がけたサンライズ(杉並区上井草)があります。
こうした環境を強みとした上井草商店街は、ガンダムで町を盛り上げる企画に携わります。その一環として2008(平成20)年、駅前にブロンズ製のガンダム像が設置されることになりました。そして駅の発車メロディーには、『機動戦士ガンダム』の主題歌を使うようになります。
大泉学園駅と『銀河鉄道999』
練馬区に位置し、付近には住宅街が広がる大泉学園駅。駅北口側の歩道は「大泉アニメゲート」として公開されており、そこでは有名アニメキャラクターのブロンズ像が出迎えてくれます。
そんな大泉学園駅で採用されているのは、松本零士さんの漫画作品を原作としたアニメ『銀河鉄道999』の主題歌。流れるのはシリーズ屈指の人気を誇る劇場版主題歌で、ロックバンド・ゴダイゴさんの『銀河鉄道999』です。
練馬区には『白蛇伝』など、名だたる作品を世に出したアニメ制作会社があることから、地元では「アニメ発祥の地」としてのPRが推進されました。
そのなかで『銀河鉄道999』の主題歌が発車メロディーに採用されたのは、
・アニメを制作した東映アニメーションが大泉にあったこと
・『銀河鉄道999』の原作者・松本零士さんが大泉在住であること
に由来します。
ちなみに上記の「大泉アニメゲート」、『銀河鉄道999』からは星野鉄郎とメーテルの像が立っているので、機会があったらぜひ見てみてください。
椎名町駅と『怪物くん』
椎名町駅は豊島区に位置し、池袋からわずか1駅で行ける場所です。駅を降りると椎名町サンロード、千早フラワー公園(豊島区千早)、金剛院(豊島区長崎)などを巡ることができます。
椎名町駅が採用しているのは、藤子不二雄Aさんの漫画が原作のアニメ『怪物くん』の主題歌『おれは怪物くんだ』。
採用の背景として挙げられるのは、藤子不二雄Aさんをはじめ、手塚治虫さん、赤塚不二夫さんといった有名漫画家が暮らしていたアパート・トキワ荘が近くにあったことです。
そこで地域活性化のために関連作品を発車メロディーに使えないかという話が持ち上がりました。そして2013年から『怪物くん』の主題歌が使われています。
このように制作会社や原作者との関わりを背景として、アニメ主題歌は駅メロとして使われるようになりました。それぞれの地域の特色として、これからも大切にしていきたいものです。