ジャニーズショップ原宿移転で「ジャニオタ」の流れが変わる? 新たな聖地が生まれる理由とは

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ジャニーズショップ原宿移転で「ジャニオタ」の流れが変わる? 新たな聖地が生まれる理由とは

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佐倉静香

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6月15日に報じられたジャニーズショップ原宿移転のニュース。そもそも同ショップはどのようなお店だったのでしょうか。コラムニストの佐倉静香さんが歴史をたどって解説します。

衝撃だった移転のニュース

 6月15日(火)、ジャニーズファンの間に衝撃が走りました。

 長年親しまれてきたジャニーズショップ原宿(渋谷区神宮前)移転のニュースが飛び込んできたからです。

渋谷区神宮前にあるジャニーズショップ原宿(画像:(C)Google)



 これをきっかけに、ジャニーズファンの「動線」は大きく変わることが予想されます。

 今後はいったいどうなるのか……。ジャニーズファン歴30年超の筆者がシミュレーションしてみました。

ジャニショは光GENJIとともに

 ニュースによると、事務所公式グッズを取り扱うジャニーズショップ原宿は2021年8月31日(火)に移転のため閉店し、西武渋谷店B館(同区宇田川町)の地下1階にジャニーズショップ渋谷としてオープンする予定といいます。

西武渋谷店B館(画像:そごう・西武)

 同じフロアにはジャニーズJr.の公式グッズ専門店・Jonny’s ISLAND STORE(ジャニーズアイランドストア)が現在出店中ですが、こちらも7月17日(土)をもって一時休業して改装。ジャニーズショップ渋谷とともに9月にリニューアルオープンします。

 ジャニーズショップ(以下、ジャニショ)は原宿のほか、

・ジャニーズショップ名古屋
・ジャニーズショップ大阪
・ジャニーズショップ福岡

があり、新型コロナウイルスの感染拡大以降は予約営業を開始したほか、オンラインショップも充実させています。

 公式グッズをオンラインで買えるのは便利ですが、やはりショップの雰囲気を味わいたいファンが多いためか、予約はすぐに埋まります。キラキラしたアイドルの写真が密度濃く並べられた店内の雰囲気を味わいたいと、ジャニーズファンは皆思っているのでしょう。

 買い物をして、白いロゴ入り(以前は黄色)のショッパーバッグを手にしたときの高揚感は、やはり何物にも代えがたいのです。

サンシャインシティにあったことも

 原宿のジャニショはちょうど竹下通りを始めとしたかいわいにタレントショップが乱立していた1988(昭和63)年12月にオープンしました。

 このころのジャニーズアイドルといえば、1985年デビューした少年隊もいましたが、なんといっても同年8月にデビューした光GENJI。一世を風靡(ふうび)した彼らの活躍とともにジャニーズショップはオープンしたのです。

 しかしその場所は原宿とはいっても裏路地を入ったところ。とてもアイドルショップがあるとは思えないような場所にファンは集い、ブロマイドではない生写真(最近では「フォト」と呼ぶようになりました)やグッズを少ないお小遣いで買っていました。

豊島区東池袋にあるサンシャインシティ(画像:写真AC)



 なお、あまり知られていませんが、サンシャインシティ(豊島区東池袋)にも1989年から2年ほどジャニショがありました。

「光GENJI特例」を覚えていますか

 昔話になりますが、当時の光GENJIの圧倒的人気は今ではたとえられないほどで、バブルの勢いもありとてつもない熱狂の渦でした。

「中学生コンビ」と呼ばれたふたりのメンバーが年齢制限で20時以降の生放送に出られないことから設けられた「光GENJI特例」(1988年に厚生労働省が出した「光GENJI通達」)は今でも聞かれる言葉です。

港区赤坂にあるジャニーズ事務所の外観(画像:(C)Google)

 放送間もないミュージックステーションで、あまりの人気に光GENJIが毎週出演することに。今でもジャニーズのアイドルが毎週キャスティングされているのは、おそらくこの名残でしょう。

 ミュージックステーションではアーティストの出演回数ランキングが時折発表されますが、毎週出演していた光GENJIは234回と圧倒的で、これからもおそらく抜かれることはないでしょう。

 また2020年末から、事務所にまだ在籍している内海光司さんと佐藤アツヒロさんがコンビでメディア等に出演するという、ファンには垂ぜんのできごとが何度かあったため、出演回数はもしかしたら増えるかもしれません。

プリントシール機目当てに2時間も行列

 光GENJIのバックについていたSMAPやTOKIO、V6(V6やTOKIOのメンバーは「平家派」というグループになったこともありました)、KinKi Kidsらのデビュー、光GENJIの解散を経て、1990年代後半にはワンフロアだったジャニショが地下フロアまで拡大。当時人気だったプリントシール機を設置します。

 そのころのジャニショはまだ並ばずともすんなり入店できましたが、プリントシール機には長い行列ができました。

 とはいえ、付近のお店に迷惑をかけてはならないと、お店から離れた明治神宮(渋谷区代々木神園町)方面の広場(ドトールの前あたり)に行列を作り、スタッフに誘導されて移動する方式でした。

ドトールコーヒーショップ原宿店(画像:(C)Google)

 2時間ほど待っても、好きなアイドルのフレームで2ショット風のプリントシールを撮れるのです。筆者も自分より強火(熱が入ったオタクのこと)の妹とともに並んだことを覚えています。

 しかし、当時は写真シールのフレームが用意されたデビュー組に担当(推しのことをジャニーズでは担当と呼びます)がおらず、いざ撮影するときに悩んでしまったのでした。

ジュニア黄金期再び?

 プリントシール機が設置された当時は、「ジュニア黄金期」と呼ばれる時代でした。1998(平成10)年4月からの1年半、水曜日20時というゴールデンタイムでヒロミさん司会の「8時だJ」(テレビ朝日系列)が放送されて話題に。

 まだデビューしていない先輩のバックにつくのが主な仕事だったジャニーズJr.だけの番組が登場し、滝沢秀明さんをはじめ、嵐のメンバーや生田斗真さん、2020年に退所した山下智久さんらが人気を博しました。

 また、関西ジャニーズJr.(通称・関ジュ)が登場したのもこのころ。一番人気は元関ジャニ∞のメンバー・渋谷すばるさんで、「東の滝沢・西のすばる」というライバル関係はファンの興奮をかきたてたものでした。

 こうしたJr.人気とともに登場したのが、季節ごとに発行される「Johnny’s Jr.名鑑」(1996~2004年まで計13冊発行)です。

 顔写真とともに身長や趣味、好きな食べ物、尊敬する先輩などの項目の回答が記されており、いわばプロ野球名鑑のジャニーズJr.バージョンでした。テレビ番組で見つけたお目当ての子を詳しく知ったり、反対に名鑑で見て気になった子をテレビで探そうと思ったりできる、楽しく便利な1冊でした。

 そのころ筆者はジャニーズから離れていましたが、地方の実家に住む妹におねだりされて、発売日にジャニショを訪れ、ここでしか買えない名鑑を購入するのが恒例となりました。

1日だけ復活した「8時だJ」

 2000年代に入り、嵐やKAT-TUN、NEWSなどのデビュー組の人気が増すとともに、ジャニショには行列ができるようになりました。

 ステージフォト(ステフォ、舞台写真)などはコンサート会場でも買えますが、ショップ限定のものなどもあり、整理券をもらった上で結局並ばなくてはなりません。並ぶのはいつものドトール前の木のところです。だんだんと、ジャニーズが巨大化しているのを肌で感じました。黄金期以来、Jr.の数も増え続けていました。

 2018年末、1日だけ復活した「8時だJ」で黄金期のそうそうたるメンバーが集結し、すでに退所していた今井翼さんも復活し、ファンを喚起させました。

 そしてその年の「ジャニーズカウントダウンライブ(カウコン)」を最後に滝沢秀明さんが表舞台から引退。滝沢さんは2019年1月15日に設立されたジャニーズアイランド (Johnnys’ Island)の社長に就任しました(9月にはジャニーズ事務所の副社長にも就きます)。

 ジャニーズアイランドはジャニーズ事務所の完全子会社で、主にジャニーズJr.のプロデュースを行う会社です。ジャニーズアイランドは渋谷駅前の2019年5月、ジャニーズJr.関連のグッズを取り扱うにショップとして、西武百貨店渋谷店のB1にジャニーズアイランドストアをオープンしました。その少しあと、「ジャニーズJr.MEIKAN 2019」も久しぶりに発行されています。

ファミクラという存在

 ジャニショ以外にジャニーズファンが集う場所があります。それがジャニーズファミリークラブ渋谷(ファミクラ)です。

 ジャニーズ後援会として各アーティストのファンクラブの拠点でもあるファミクラは、1980(昭和55)年まではジャニーズ後援会という名称でした。ファミクラに改称後、何度か移転したのち2006(平成18)年に現在地に移転。ファンに公開されることとなりました。

 場所は明治通りから少し入った美竹公園(渋谷区渋谷)近くで、2016年にいったん閉鎖されましたが、2018年にリニューアルオープン。アーティストの活動の様子を紹介するポスターなどの展示があったり、最新映像が放映されたりしている施設です。

渋谷区渋谷にある美竹公園(画像:(C)Google)



 東京に来た濃いジャニーズファンは、おそらくジャニショで買い物をしてからファミクラにファンレターを置きに行き、ポスターを眺めたりしたあと、アイランドストアで買い物をするでしょう。もしかしたら順序は反対かもしれませんが、原宿から渋谷という動線が出来上がっていることがわかります。

 しかし原宿のジャニショがなくなれば、ほぼ渋谷だけで用事が終わってしまいます。原宿の跡地が再利用される可能性もなくはありませんが、おそらくジャニーズファンが原宿を訪れる回数は減るのではないでしょうか。

渋谷がジャニオタの聖地に?

 TOKIOや嵐の活動休止、この秋に予定されているV6の解散をはじめ、ジャニーズ事務所のデビュー組タレントには大きな動きがこの数年で見られます。一方、第2黄金期といわれ東西200人を超えるともいわれるジャニーズJr.は、

・Travis Japan(トラビスジャパン)
・Hi Hi Jets(ハイハイジェッツ)
・美 少年
・7 MEN 侍(セブンメンさむらい)
・Impactors(インパクターズ)
・なにわ男子
・Lilかんさい(リトルかんさい)
・Aぇ!group(えぇグループ)

というJr.内ユニット(箱)を始め、そこに入らない無所属(ムショ)のメンバーも、Jr.卒業のゴールデンコースであるCDデビューに向けて露出を増やし、しのぎをけずっています。

 デビュー組とJr.のショップを隣り合わせることで、デビュー組の盛り返しを期待する意図があるのではないかと考えます。

 コンサートや各種メディアだけではなく、ジャニショやファミクラの空気を感じたいのがファンの性(さが)。ファミクラが開放されていない時代からのファンにとって、原宿こそがジャニーズの聖地といった時代がありました。

渋谷区神宮前にあるジャニーズショップ原宿(画像:(C)Google)

 しかし、今後は渋谷にリソースが集中され、イメージにも人流にも変化が起こるでしょう。新型コロナウイルスの感染拡大の影響による、ショップやファミクラの予約制化もなにかしらの影響を及ぼします。

 個人的な話になりますが、コロナ禍で憂鬱(ゆううつ)な気分が続いていたある日、なにげなく見たYouTubeのジャニーズJr.チャンネルが思いのほかおもしろく、久しぶりにジャニオタ生活が復活しました。今は7 MEN 侍を「箱推し」しています。

 バンドもダンスもできる自称「ジャニーズの異端児」の6人組。彼らを応援しつつ、今後ジャニショと原宿・渋谷の関係がどうなっていくのかを見守っていきます。

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